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ローカル新聞記者のぼくがかんがえたさいきょうの取材キット 「ミノルタ編」

ライターのための低予算+ワンオペ写真取材キット

「紙のメディアは衰退して、これからはウェブメディアの時代になる」なんて言われてしばらくたちますが、やっぱり新聞や雑誌のような紙媒体のメディアには独特の魅力があると日々感じます。記者やライターが何十ページ分もの記事を書いて、間違いがないように校正して、紙面のレイアウトをして、印刷して、配達する。それぞれ結構大変な作業です。でもそれだけ労力やコストがかかる分、血の通った人間同士の繋がりを感じられる事が多いのも紙媒体の良さでしょうか。いくら儲からなくても、いくら大変でも、発売日に出版された商品を見ると、「ああ、また次回も頑張ろう」なんて思うのです。

僕は海外の日本語新聞社で記者として働いています。予算には限りがあり、専任のカメラマンもいなければ自由に使える機材もありません。記者がインタビューと写真撮影両方を行うので、手持ちのiPhoneで撮影するか現場に居合わせた人に写真を提供してもらう事がほとんどです。「でもせっかく紙に印刷されるのだからきれいな写真を撮りたい」と思い、少しづつ自分なりに試行錯誤をしてきました。「ライターとして記事へ付加価値をつけたい」「でも高い機材を買っても元が取れるかわからない」なんて思った事があるライターやブロガーの方々へのヒントになればと思っています。

APS-Cミラーレス×標準ズーム+ミノルタ

僕が提案したいのが、APS-Cのミラーレスカメラにに、キットレンズとミノルタのオールドレンズを状況によって使い分ける運用方法です。ざっくりいうと、標準ズームで全体の雰囲気を捉え、ミノルタで人物やモノを撮る感じです。

このように会場の雰囲気、複数の人を写したい場合は標準ズームレンズで背景をぼかすことなく、情報量の多い写真を撮る事が多いです。これはキャノンEOS M 15-45 F3.5-5.6で撮影したのですが、全体的にバランスよく解像した癖のない写りです。

その反対に一人の人物や一つのモノに集中したい場合は、アダプタを用いてミノルタレンズを使います。本当に5000円以下で買えるレンズとは思えない写りですね。アダプタを含めても8000円を超えることはないでしょう。

ミラーレスといえばフルサイズのソニーα7シリーズをはじめとするフルサイズがかなり勢力を伸ばしてきていて、ニコンとキャノンもそのあとを追うようにフルサイズミラーレス市場に参入しました。ただフルサイズは本体価格だけでなくフルサイズに対応したレンズの値段も高く、サイズ感もミラーレスの中では大型の部類に入ります。要するにカメラマンがつかない取材を「ワンオペ」で頑張っているライターには少し手の届きづらい値段とサイズ感なのです。

EOS Kiss M+Minolta 50mm F1.7 (撮影: Takumi Hayashi)

比較的手頃な価格で買えるAPS-Cのミラーレスとして僕が愛用しているのが2018年に発売されたキャノン EOS Kiss Mです。「なんだ、わりとフツーのカメラじゃないか」なんていう声が聞こえてきそうですが、このカメラには色々とライターとして使いやすい機能が揃っていて、拡張性にも優れています。

現代のカメラでオールドレンズを使いこなす

「そもそもなんでミラーレスなのか」という話なのですが、キャノンの一眼レフの規格であるEFマウントだとフランジバックと呼ばれるレンズから写真を記録するセンサーまでの距離が長く、アダプターを介してもミノルタレンズを使うことはできません。 ミラーレス専用規格のEF-Mマウントはフランジバックが短いため、数千円で買えるアダプターをつけるだけでミノルタレンズを使う事ができます。ミラーレスではマニュアルレンズで心配なピント合わせの難易度も下がってきました。EOS Kiss Mではピント確認のしやすいEVFに加え、ピントが合っているところを色で表示するフォーカスピーキング機能や画面の一部を拡大できる機能が搭載されています。ミノルタの単焦点レンズは開放からシャープに解像してくれるので、慣れてくると絞りを開放近くに設定して背景をボケさせる事も簡単にできます。

内部フラッシュの他にもホットシュー、マイク端子などがついていてストロボなどのアクセサリーを簡単に取り付けられることも魅力の一つです。ストロボを用いた撮影や簡単な動画撮影などについてはまた今度の機会に書きたいと思います。

僕がインタビュー記事を書く際には、いかにその人の持つストーリーや人間らしさが伝えられるかを考えています。文章だけではなく写真でもそれができたら素晴らしいですよね。iPhoneでもきれいに撮れる時代だからこそ、ストーリーを伝えられる写真を撮る。ミノルタはそんなことを実現させてくれるレンズだと思います。(Rei Ikeda)

今後はレンズやカメラだけでなく、カメラバッグなどのアクセサリーやインタビューにおける録音機器なども紹介していきたいと思っています。


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