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食事場面で座位姿勢を評価・治療するヒントpart2 リハビリ専門職のための動作分析

こんにちは。ReHub林です。

「座位姿勢の見方を知りたい」という要望から始まった座位シリーズ、食事場面での座位姿勢の見方の第二弾です。食事に関わるセラピストとなると、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士全てのリハビリ専門職になりますね。

まだご覧になっていない方は、第一弾も是非どうぞ
食事場面で座位姿勢を評価・治療するヒント

さて、今回は視知覚から見た座位姿勢のコントロールについて解説します。

視知覚といっても、さらに2つの要素に分けてみると観察の視点を絞りやすくなるでしょう。

それは空間と食物の2つです。
空間の視点を知れば、環境設定に役立てることができるでしょう。
また、食物の視点を知れば、環境設定に加えて言語的なキューによる介入に役立てることができるでしょう。

ぜひ参考にしていただければと思います。

食事空間の広がりと座位

食事動作ReHub林

上下の食卓を見比べて、女性の有無以外で違う点は何でしょう?

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色々あるとは思いますが、ここで着目して頂きたいのは、「壁」です。

中枢神経系の障害がある患者は、視知覚に問題を抱えていることが多々あります。
座位姿勢のコントロール能が低下している患者に対し、視知覚の障害が座位にどれほどの影響を与えているかを評価する手段として、空間の拡がりを変えて座位活動の変化を捉える方法が有効的な手段の1つです。

ヒトが座位をコントロールするために必要な感覚入力を3つ挙げるとすれば
①前庭覚
②重心・坐圧変化の検出
③視知覚
などがあります。

視知覚に関する情報はJ. ギブソン氏をはじめとする生態心理学の書籍が非常に参考になると思います。

我々は、景色の移り変わりを肌理(キメ)の変化から捉えています。
僅かな凹凸や色・影の変化から自分や周りが動いていることを認識しているのです。
逆に、真っ暗な中では、空間内で目標にどれだけ近づいているかが分かりにく、バランスも取りにくいですよね。

壁面と肌理

座位における視知覚の影響を評価する場合、壁面を利用すると良いでしょう。側方だけでなく、ついたてを前方に置くというのも良いですね。
壁やついたての面はツルツルよりも凹凸が明確な素材が好ましいので、タオルなどを活用すると良いでしょう。

凹凸が明確な壁面に囲まれるということは、自己を定位するための手がかりが増えるということです。手がかりが増えるということは、周辺環境と自己身体との間の秩序を知ることができるということです。

程度は違えど、単純な片脚立位と比較して、ほんの少し指先が壁に触れるだけで片脚立位が物凄く安定することと同じ意味があるということです。

食物の見え方と座位

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上の2つの食物の性質は何が違いますか?

最も違う点は、スープの濁りですね。
中身が透けて見える場合と、見えない場合でどのような身体反応の違いがあるでしょう?

ここでは、日本の汁椀を基本として考えます。
汁椀から食す時、椀を手に取って食べますね?
その時の違いを簡単に解説します。

中身が透けて見える場合、椀を持つ手と中身を取る箸を操作する手とが協調して食物を掴むまたはすくう動きをします。

対して、中身が透けて見えない場合は少し面白いです。
箸先から伝わる食物の感触が主たるフィードバックとなるため、椀の中をより覗き込むようにし、箸を横や奥から探るように動かします。
この時、中身が透けて見える時よりも椀を固定し、箸先からのフィードバックに集中しようとします。適切にフィードバックを受けるためには、程よい緩みと緊張のバランスが必要であり、そのために中枢部を安定させ、上肢の自由度を確保するのです。

ヒトは、この箸による能動的探索のために座位をコントロールしようとします。下の写真は、ツルツルの煮卵を掴もうとしたときの連続写真を4枚重ねたものです。(2回卵を滑らせて落としてしまいましたw)

質感と座位4枚重ね

目に見える座位保持の反応としては、ごく僅かなものです。
しかし、この能動的探索に向かえるように骨盤や胸郭から姿勢制御を援助しつつ活動に参加してもらうことが、評価・治療上非常に重要なのです。

食事の中で座位に介入する意味

姿勢保持や基本動作に関しては、自己組織化によって体得していきます。食事動作はより高位の社会的要素も含む生活動作ですが、そのベースとなる座位姿勢のコントロールが不可欠ですね。

セラピストにありがちな失敗は、座位を座位として見ることです。それでは決まった動きの中での座位を見ていることが多いという点が問題です。
重要なことは、活動に向かう中で活動の要素・特性に応じた身体反応が生じているかどうかということです。

書籍「臨床動作分析」の中では、”良い自己組織化を意図・情動・動機が駆動するループ回路網内部の能動的な活動から誘導するような神経系システム全体への介入が肝要”と述べられています。

言葉で捉えると何をすればいいのか、実践導入が難しいと感じるかもしれませんが、今回紹介した食事動作と姿勢制御が一つのヒントになると思います。

お腹が減って食欲を満たすために、食物に手を伸ばす。水気の無いおかずの後に汁物が欲しくなって味噌汁に手を伸ばす。そうした能動的な活動の中で、環境設定や言語的キュー、徒手誘導によって狙った姿勢反応を引き出すのです。

最後に

いかがでしたか?

①空間の拡がりをコントロールして、視知覚の影響が患者の座位に与えている影響をみる
②食物の見え方による上肢活動の変化から座位を見る
③食事という活動に能動的に向かっていく中で座位姿勢の制御を捉え、治療することで、活動場面から自己組織化を促す

でした。

今回は、2回にわたって食事動作と座位の関係性についてお伝えしました。

実際の食事場面を動画で解説してありますので、動画もご覧下さい。
👉「コンビニご飯の食事動作をPT・OT・STみんなで見よう

この記事がハッピーな食卓のきっかけになることを心より願っています。

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