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子どもは喋り始める前から言葉を理解している?

子どもの発達は個人差が大きいものですが、意味のある言葉(単語)を発するのは1歳前後が多いとされます。

ところで、赤ちゃんが言葉を発するよりももっと以前から、言葉を理解したり、言語の獲得の準備をしているのはご存知でしょうか。

赤ちゃんは自分で言葉を発せない時期でも大人の話している内容を聞いていたり、意外と理解しているものです。

今回は子どもが言語を獲得するということ、喋り出すより以前にどのような言語獲得の準備を行っているのかについて考えてみたいと思います。

このnoteを読むと、
●喋り出す前に行われている言語獲得の準備を知ることができる
●音声言語獲得の前に、カテゴライズという認知機能が発達することが理解できる
●喋り出す前の子どもにたくさん話しかける必要性が理解できる


言語とは何なのか

子どもの言語獲得を考える前に、そもそも言語とは何なのかを簡単に考えておきましょう。

フェルディナン・ド・ソシュール(1857〜1913)は、「言語は記号である」としました。

ここで言う言語は音声言語のことです。

ヒトは他者に自身の考えていることを伝えるために、音声言語を使用します。

口から発された言語は自分の考えそのものではなく、自分と相手が共通認識可能な『記号』に過ぎません。

自分にしか理解できない『記号』であれば、相手にとっては何も理解できないですよね。

日本人がダニ語を聞いても「???」となるのは、その言葉が共通認識できないからです。

※ソシュールについてはこちらのnoteでもセラピスト向けに書いています。


子どもが獲得する言語

子どもの言語を考えたとき、生後3ヶ月くらいから発し始める『喃語』があります。

「あー」とか「うー」のような、意味を持たない発声・発話ですね。

一見するとこの時期の子どもは言葉を一切理解できず、話すこともできない、と思いがちです。

実は、この時期から既に言語獲得の準備は始まっており、表出される言葉以上に色々なことを理解していると考えられます。

大人と共通認識可能な言葉を発することができるよりずっと前から、カテゴライズという能力を獲得し、これが言語獲得の基礎となるのです。


言語獲得の基盤となるカテゴライズ

ヒトの用いる言語という『記号』は、自身の考えや感情、物体や道具など、様々なものを他者に伝えるために用いられます。

「りんご」という語は、「りんご」の他に「みかん」とか「ぶどう」とかがあるから「りんご」なのであって、そこに区別がなければ「木の実」とか「実」とか「食べ物」で良いわけです。

音声言語を獲得するためには、赤ちゃんが自分の中で概念化(カテゴライズ、その物と他の物との区別)したものに共通認識可能な記号(日本語など)を結びつける必要があります。

ということは、赤ちゃんが自分の中で概念を作り上げていく、色々な物を区別していく、という能力が基盤になければ、音声言語の獲得には結びつかないということです。

これはつまり、音声言語を獲得するよりずっと以前から、何かと何かを区別し、自分の中でカテゴリーを作っていっているということです。

「親」か「それ以外」か

「食べ物」か「それ以外」か

「快」か「不快」か

などなど。

ローランド氏の「俺」か「俺以外」かというのも、そういうカテゴリーで世界を見ているということですね。(笑)


赤ちゃんは想像以上に親を見ていて、話を聞いている

赤ちゃんは1歳前後で急に、「そろそろ言葉覚えるか」と言語の獲得に動き出すわけではありません。

出生直後から、上述のようなカテゴライズを始め、それが積み重なって1歳前後で自分の中のカテゴリーと言語という記号が結びつくだけです。

それまでの準備期間は、親の動きを一生懸命観察しています。

親の発する言葉も一生懸命聞いています。

「〇〇ちゃん」と呼ぶ声を他と区別し、この声が聞こえるときにお母さんは自分の方を見ている、ということに気付きます。

「ごはんだよ」という声が聞こえるとき、自分にスプーンを差し出すという行為を親がしている、ということに気付きます。

こんなデータを膨大に積み上げ、子どもは自分の中で音としての言葉と状況を結びつけていきます。

つまり、言葉を発するずっと前から、子どもの中での言語は獲得されていっているということです。


子どもに言葉を教えるために

実際のところ、子どもに言葉をあえて教えようとする必要はないと思います。

普通に関わっていれば、子どもはその柔軟な頭で勝手に学習していくものです。

なので、もし意識するのであれば、子どもとたくさん関わり、たくさん話しかけるということだと考えます。

ただ、注意したいのは、子どもが理解していないと思って、何でもかんでも言わないということではないでしょうか。

悪態をついたり、子どもを傷つけるような発言をしたり、汚い言葉遣いをしたり。

そういった言葉や態度を、子どもは聞いているし、見ています。

その点だけは注意しながら、子どもと真正面から向き合ってあげることが大切なのだと思います。


まとめ

子どもの言語獲得について考えてみました。

赤ちゃんは口から言葉を発する前に、様々な物や音をカテゴライズしていくというデータ収集を行っています。

この膨大なデータを収集した結果が、大人と共通認識可能な『記号』を口から発するという音声言語に結びつくということです。

そのためには、子どもとたくさん遊んであげて、たくさん話しかけてあげる、ということが必要だと思います。

特別なことはしなくて良いと思います。

ただ、向き合ってあげるというのが、子どもにとっては一番なのではないでしょうか。


書籍紹介

『認知言語学のための14章 第三版』
言語能力はカテゴライズすることだという立場をとる認知言語学という学問があります。
認知言語学について学ぼうと思うと、この一冊で良いように思います。
専門書ですが、非常に平易な言葉で非常に広い範囲の知見が網羅されています。


おわりに

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まじい@マジメな理学療法士・公認心理師
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