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アフリカ・マラウイの学校給食支援に 売上が 『100%寄付』されるコーヒー

TIPSが『SDGs・ダイバーシティ』をテーマに自ら取材し、発信するWEBメディアRECT。今回は、世界最貧国のひとつであるマラウイで学校給食支援に取り組み、購入者が支払ったコーヒーの売上の100%が同事業に寄付される『寄付型コーヒー』Warm Hearts Coffeeを展開するせいぼジャパンを取り上げます。せいぼジャパン(NPO法人聖母 理事長)の山田真人氏に、Warm Hearts Coffeeの取り組みやコーヒーと学校給食を通じた支援の形、今後の展望についてお話をうかがいました。

山田 真人(やまだ まこと)氏
日本にせいぼジャパン、マラウイにせいぼマラウイを置き、同国で学校給食支援に取り組むNPO法人 聖母 理事長。大学在学中に英文学と神学を学ぶなかで、聖母の支援企業Mobell社の「Doing Charity by Doing Business」というコンセプトに感銘を受け、2017年4月に同社に入社。同社のセールス担当として働きながら、聖母の理事長を務める。



■ 寄付型コーヒー Warm Hearts Coffee Club とは

アフリカ大陸南東部の内陸国 マラウイで学校給食の支援に取り組むせいぼジャパン(NPO法人聖母)が、コーヒー生豆の輸入卸売業のアタカ通商と連携して2018年にスタートした寄付型コーヒー販売 Warm Hearts Coffee。特徴は、何と言っても「売上の100%が学校給食支援に寄付される」こと。Warm Hearts Coffeeでコーヒー豆を申し込んで支払ったお金が、その分だけマラウイの子どもたちの給食になります。

WARM HEARTS COFFEEのパッケージ

マラウイの給食は1食あたり約15円。例えば、おためしサイズ100g(1,000円)に申し込むと、約65人の子どもたちが給食を食べることができます。

― Warm Hearts Coffee Clubの仕組み

Warm Hearts Coffee Clubが売上を100%学校給食支援に寄付できるのは、活動に賛同した複数の企業がコーヒー豆の提供を支援しているからです。

売上が100%寄付になる仕組み

― Warm Hearts Coffee Clubの支援企業

コーヒー豆が届くまでには、生豆の仕入れ・輸入、焙煎、梱包、配送といったプロセスが発生します。この各ステップを、賛同企業がそれぞれ支援することで、売上の100%をせいぼがマラウイで取り組む子どもたちの給食支援に使うことができるのです。


■ Warm Hearts Coffee Clubのコーヒー

― コーヒーの輸入を担うアタカ通商

Warm Hearts Coffee Clubで提供されるコーヒー豆の仕入れを担っている貿易会社 アタカ通商では、現地とコミュニケーションを重ね、現地への貢献とコーヒーの安定供給を実現しています。例えば、ある年に気象条件が悪く、コーヒーを生産する農園が打撃を受けたとき、仕入先を切り替えるのではなく、少量でも同じ農園からコーヒー豆を買い続けます。これは、コーヒー業界では簡単なことではありません。しかし、そうして信頼を築くことで、現地の生産者を支援することに繋がり、同時に、希少価値の高い豆でも仕入れることができるような関係になっていき、事業がより安定的で持続可能なものになります。

― 老舗が焙煎するスペシャルティコーヒー

Warm Hearts Coffee Clubのコーヒー豆は、給食支援が実施されているマラウイの北部 チティーパ地域の標高2,000mを超える場所にある農園で無農薬生産されたスペシャルティコーヒーです。

農園の間作(バナナ)の様子

マラウイのコーヒーは、ジャガイモやバナナなどと一緒に育てる間作という農法で、特に高いバナナの木の日陰を活かして湿気を保つShade Growingと呼ばれる栽培方法がとられ、収穫されたコーヒーチェリーは現地で脱穀・洗浄されています。アタカ通商によって日本に届けられたコーヒーは、昭和33年創業の老舗 LIVE COFFEEで毎週水曜日に焙煎され、翌日に発送。高品質なコーヒーが、焙煎したての美味しい状態で届きます。

― 現地でフェアトレード認証を取得、制度を通じて現地に還元

コーヒー農園が経営する病院に掲げられるフェアトレードマーク

Warm Hearts Coffee Clubのコーヒー豆は、2009年に現地でフェアトレード認証を取得しています。国際フェアトレード基準では、商品が公平に取引されることとともに、生産者に対して「フェアトレード・プレミアム」と呼ばれる奨励金を保証しており、現地でフェアトレード認証を取得したコーヒー豆をアタカ通商がビジネスとして継続的に仕入れることで、現地で使える資金としてプレミアムが発生します。この資金も、現地で活用されています。

― Warm Hearts Coffee のコーヒー豆を申し込む


■ 「学校給食」という支援の形

給食を食べる南部の幼稚園生

― せいぼの学校給食支援

せいぼが学校給食支援を行うマラウイは、アフリカ大陸南東部の内陸にある農業が活発な国です。コーヒーの輸出は、マラウイの経済を支える重要な外貨獲得手段でもあります。アフリカでは紛争がある地域も少なくありませんが、マラウイは治安が良い国で、「The Warm Heart of Africa(アフリカの温かな心)」という愛称が付けられているほどだそう。一方で、世界最貧国のひとつに数えられ、5歳未満の乳幼児の約39%(5人に2人)が栄養失調状態にあります。

せいぼは、イギリスの通信会社 Mobell社を母体とし、「おなかを減らしているすべての子どもに給食を!」を目標に掲げてマラウイで学校給食の支援に取り組んでいます。Mobell社 社長のAnthony J. Smith氏は、2007年に私財を投じて同国に職業訓練センター「ビーハイブ」を立ち上げ、9種類の仕事で約400名の従業員の雇用を創出しています。2015年にマラウイで発生した大洪水をきっかけに、せいぼとして現地の保育園・幼稚園への学校給食支援を開始し、2016年にNPO法人の認証を取得しました。

北部の小学校での給食配布の様子

せいぼが支援する学校給食は、小学校や保育園のほか、CBCC(Community-Based Childcare Centres)と呼ばれる各地域のコミュニティの人々が自ら運営する子どもセンターで提供されています。マラウイには約6,000のCBCCがあり、その多くが山間部の経済的に安定しない場所に建てられています。子供たちに食べ物を与える場所として、また保育所として機能する、貧しい子供たちを支えるためにとても重要な施設です。

南部の保育園で給食をつくるボランティア

せいぼの支援は、ただ資金や食料を供給するのではなく、マラウイ政府の栄養省が管理・運営体制(給食の保存・貯蔵や調理、設備の管理など)を備えているかを踏まえて許可を与え、パートナーシップを交した学校・施設で提供されています。様々な国や地域から学校給食支援の要望が届くそうですが、むやみに広げるのではなく、現地の人々の体制や状況、地域性、国民性などを踏まえて学校給食の提供を行えるかどうかを検討し、支援先を広げています。2023年4月時点で36の小学校、22の保育園、17のCBCCで支援が展開されています。

― 給食支援の価値

①   学校・施設に来るきっかけづくり
子どもは労働力になるという考え方もある中で、学校で食事が取れるようになることで、学校に来る(親が子供を学校に行かせる)きっかけになります。子どもが学校に行くことで、家庭での仕事や新たな雇用機会の獲得にもつながります。

②   勉強に集中できる身体づくり
教育の機会を得ても、おなかが空いていては集中できません。子どもたちを根本から支えるために、おなかを空かせないようにすることをミッションとしており、事業で得た売上を100%給食支援に充てています。学校給食支援という形ですが、日本のような昼食だけでなく、子どもたちのがおなかを空かせることがないよう、朝食や夕食も提供されています。

③   将来の国の産業を担う人づくり
マラウイの経済にとって重要な産業であるコーヒー生産。学校給食支援は、これをきっかけに教育機会を得た子どもたちが、こうした国の重要な産業を担う仕事に将来的に就いてくれることを見据えています。また、IT領域の発展が目覚ましいアフリカにおいて、農業だけでなく、ITをはじめとした人材の育成にもつながると考えています。


■ 今後の展望

― 人と人、組織と組織を繋ぎ、関わる人を増やしたい

従来、教育機関はビジネスと関わる活動をあまり好まない雰囲気がありましたが、最近ではそれが少しずつ変わってきていて、例えば講演や授業の一環、課外活動などとして、Warm Hearts Coffeeの活動に関わってくださる教育機関が増えています。また、CSRの一環として、企業との連携も増えています。我々としても取り組みを広げたいですし、一方で教育活動の題材を提供できたり、企業にとってブランド向上に繋がったりと、Win-Winの関係をつくって点と点を繋いでいくことが、NPOとして成果を上げることに繋がると考えています。

また、個人の高校生や大学生が、興味を持ったり、研究の題材にしたり、様々なきっかけで関わってくれるのも嬉しいです。例えば、活動のなかで先輩と繋がったり、活動を続けてもらうなかで得られた経験を題材にしたアウトプットを出したり、活動を通じてつながった企業に就職したり、そういった機会を提供する役割にもなっていくことができたらと思っています。

― 日本のチャリティーはもっと盛り上がる

イギリスなど、チャリティー法が定められている国があり、チャリティー団体に格付けがされています。それらは、チャリティー団体を客観的に分析できるプラットフォームとして機能しており、それがチャリティー団体の信頼度を大きく向上させていて、この格付けをもとに企業や個人は寄付先を選びます。チャリティーに関する法整備を行い、併せて情報を公開することで、税控除など税制面でメリットがある制度などを構築する。こういった仕掛けによって、チャリティーが社会に広く定着していきます。日本でも、そういった声が挙がっていくとよいと思います。

(Interviewer:髙橋由奈、東使未久、鈴木海祐 Writer:東使未久、三浦央稀)


■ ABOUT RECT

RECTは、2018年に設立し、東洋大学を拠点にSDGsとダイバーシティに取り組む学生団体TIPSが運営する、SDGs & Diversity WEB MAGAZINEです。


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