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夢絨夜

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自分なりの『夢十夜』を書いてみたいと思い至り、高校生の頃から夢日記を付けてみたら七十までやってきてしまいました。読み方はそのまま「ゆめじゅうや」です。千夜一夜までいけるかは、私の…
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#アナログ絵

『第二夜』

『第二夜』

 こんな夢をみた。

 私は橋を渡るところであった。一見、果てしない上り坂のようにしか見えないのだが、両脇には落下防止のための立派な欄干があり、ご丁寧にも一番太い柱の部分には「橋」と書かれている。両脇には雄大な海が広がっていた。うだるような暑さではあったが、橋の一番高いところから見える景色はさぞ美しいだろうと思い、私は坂を上り始めた。

 さて、橋を上っている間に、老婆とすれちがった。老婆はゆっく

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『第一夜』

『第一夜』

 こんな夢をみた。

 私はまだほんの幼い子供であった。かんかんと暖房がよくきいた部屋で目が覚め、寝ぼけ眼をこすりながらリビングへ出てみると、父が机に向かって静かに物書きをしていた。

「眠れないのかい」

 ペンを握ったまま、父がこちらを見るわけでもなく話しかけてくる。そう言われてみて初めて部屋の時計を探してみると、振り子のついた大時計が、深夜を告げていた。

「そうみたい」

 答えると、父は

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