re_eco

心の病とともに。

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心の病とともに。

最近の記事

愛について

とてもおそろしいと思うことがある。 私の言動によって人が他人のほうを自分より上等だと思い込んだり、その存在自体を肯定できなくなったり、吐き出さねばならぬはずの言葉をのみこんだり、心の伴わない言葉を吐き出すことになることが。 その人の本来の姿が、自分の言動によって損なわれた状態に陥るのが私は心底おそろしい。 あなたしかあなたでいられないことの奇跡に目を閉じてしまうことがおそろしい。 美しいも醜いも十全も欠陥も包摂したものがあることを知らないでいることがおそろしい。 も

    • むかしのこと

      私はむかし、自己否定の塊だった。 月並みな表現、自分には何のとりえもなく感じられたし、生きている意味なんて見つけられなかった。 でもなぜだか死ぬことはできないで、過食しては自分の中の穢れを吐き戻して、自分のキレイをぎりぎり保って生きていた。 そんなとき目の前に現れたのが、全国紙の新聞記者として3年目の男だった。 彼は、苦学生で、外に女を作って散在してきた父親の会社が倒産した後、新聞配達をしながら、学費を稼ぎ、有名私立大学に奨学金をもらって進学し、今の仕事に就いていた。 彼の記

      • 母親のこと

        うまく表現できるだろうか。母親のこと。 若いころの彼女は強くて、明るくて、太陽みたいな人だった。 正義感にあふれ、まっすぐだった。 そして、障害のある長男をもったからだろうか。特に、長女の私のことを彼女は自分の分身のように考えていたように思う。 子育ての中で、娘の私が自分とは違う性格の、全く違った人格の人間だという視点が欠けていたように思う。 だから、苦しいことも多かった。 それは私でないのに、と思うことすらできない時期もあった。 彼女は私にとって絶対的存在だっ

        • 心の病のカミングアウト2

          夫が20年以上付き合いのある友人にLineで心の病をカミングアウトしてから半年。 大切な人に拒絶されるかもしれない恐怖感が夫には確かにあった。 失ってしまうかもしれないこと、それに耐えきれるかわからなかったのだ。 だが、夫の友人は今も夫とサッカー観戦を続けてくれている。 大事な娘さんも一緒に。 夫の携帯番号の暗証番号は、私と出会う前から、その友人の娘さんの誕生日の日付だ。 怖かったよね。

        愛について

          小山田問題に関して

          開会式を楽しみにしている。 彼がいなくなって本当にすっとした。 虐待に関する彼のインタビュー記事は胸糞だった。 彼の通った和光学園が障がい児も健常児とともに教育を受けさせる「共同教育」を掲げていたらしい。 お笑い種である。 私にはダウン症の兄がいる。 だけれど、私たち兄妹をうちにあげて、一緒にゲームをし、お菓子をワイワイ食べながら、丸顔の兄としっかりものの妹の私をアンパンマンとバタコさんにたとえてくれて、一緒に笑っていた兄の健常者の友人たちとは、まったく異質の存在

          小山田問題に関して

          観葉植物を枯らす件について

          「観葉植物がイキイキしている職場は雰囲気がよく、業務も順調にすすんでいる証拠になる。」と上司が言った。 私は、職場の観葉植物を枯らしたことがある。 私が、植物担当だった。 枯れた部分を定期的に切り取り、土を変えてもだめだった。 最後は、その観葉植物の鉢を別の上司が見事に割って、あわれ枯れた観葉植物は、これを機会にと処分された。 それだけでない、私のうちの観葉植物には大量に虫がわき、これまた見事に枯らしてしまった。 結婚祝いにと夫の友人がプレゼントしてくれたものだっ

          観葉植物を枯らす件について

          心の病のカミングアウト

          夫がさきほど20年以上付き合いのある友人にLineで心の病をカミングアウトした。 夫が、病状がよくなく、仕事を休んでいて、吐き出す相手がいないと嘆いていたので、私のすすめがあった。 月に1、2回サッカー観戦に行くほど仲がいい友人だ。 まだそのLineにはまだ既読もついていない。 だが、もうすでに大きな後悔をしている。 夫は、一般の人は、心の病をもつ人に、とても冷たく、心の中では、自分の子どもを会わせたいと思いはしないという。 きっと、Lineで友人は、言葉では、そ

          心の病のカミングアウト

          夫が会社を辞めようとしている。

          夫が会社を辞めようとしている。 転職先は決まっていない。 ただ、辞めたいという。 転職サイトにはいくつか登録しているが、動きはない。 共働きだからって、なめてんじゃねーぞ、と思ったりする。 インテリアコーディネーターになろうかな、などといって、参考書を買ったまま、開く気配もない。 おまえはいくつだ、あと数年で、40歳なんだぞ。10代、20代のコとおなじことを考えてどうする。 しかもだ。 私たち夫婦は、精神障害を患っていてそれぞれの会社に障害者雇用で雇われている

          夫が会社を辞めようとしている。

          保険の外交員

          統合失調症の症状が安定しないとき、でも生活のために、あるとあらゆる職業をした。 塾、ホテル、不動産屋、JAZZ喫茶、パン屋、などなど挙げればきりがいない。 その中でも、保険の外交員は、思い出に残っている。 私がいた営業部は日本で一番の営業成績をあげているところだった。 お金持ちの社長夫人や、夜はホステスをしながら掛け持ちで外交員をしている人、夫は教師で専業主婦だった人、長い黒髪のシングルマザーや西成に住む気の強いきれいな女の子、おっぱいの大きい頭のきれる営業成績抜群の

          保険の外交員

          その人の美しさ

          「re_e.coの目はいったいどこについているんだ。小さくてわからない。みんなでre_e.coの目を探しに行こう。」 中学生だった3年間、副担任から授業中ことあるごとに脈絡なくあざ笑って言われ続けた。 今思えば、教師からの執拗ないじめだったと思う。 だけど、当時の私はただただその言葉を真に受けて、小さな目をどうにかしなければと思い詰めていた。 おしゃれに敏感なコならアイプチがすぐに思いつくだろう。 だけれど、流行やおしゃれにまったくもって無関心だったガリ勉の私がアイ

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          夢追い虫

          美人じゃない 魔法もない バカな君が好きさ 途中から 変わっても すべて許してやろう(夢追い虫/2001) こんな無条件の愛の吐露があるだろうか。 私が30年以上聴き続けているアーティスト、「スピッツ」の楽曲だ。 この曲に何度慰められたことがあっただろう。 自分にはなにもない。そんな自分でも生きていいと、好きだと言ってくれる。 私には本当に大切な曲なのである。 この曲を聴くとふと思い出すことがある。 私が、小学5年生だったときのこと。 私は、障害のある同年代の

          夢追い虫

          お兄ちゃんの大冒険?

          19時を過ぎても帰ってこない。小学4年生のダウン症の兄は、乗れるようにと母と猛特訓した自転車とともに行方不明になった。 母と市場へ買い物へ出かけ、大好物のベビードーナツをもってウキウキ気分で帰宅した私は、夕方になっても兄が帰ってこないと心配する祖母に玄関口で迎えられた。 携帯もなにもない時代、時計の針がただすすんでいく。 ベビードーナツが喉を通らない。 心配して早めに帰宅した父が深刻な顔で「警察に届けよう。」と言った瞬間だった。 家の電話がけたたましくなった。受話器

          お兄ちゃんの大冒険?

          私のこと

          「娘がこうなったのは全部私たちのせいなんです!!」 逮捕・拘留された私を迎えに来た両親は警察官に泣いて訴えた。 「だれのせいでもないですよ。」 そう警察官は静かに応えてくれた。 10年以上前の今頃の寒い寒い日、私は繁華街にひとりいた。 錯乱状態だった。 トイレもお風呂も人とのセックスもすべて世界中の人にのぞき込まれていると妄想を抱いていた私は大声をあげながら、通りかかった警備員に突然なぐりかかった。 当時、摂食障害で172㎝に45㌔のやせっぽちだった私はすぐに警

          私のこと

          大好きな夫のこと

          夫は、建築と音楽とサッカー(と私のこと)が大好きなおじさんである。 私には、トイレの回数から過去の失恋話まで詳しくなんでもしてしまうドラえもんようなお腹をした基本無口な人だ。 落ち込みはじめるととてもめんどくさい。 一重で切れ長の目でいかつい顔をしている。 私より背が低い。 私に必要な優しさをもっていて、繊細で、そして、とてもどんくさい。 夫婦喧嘩はしたことがない。 そんな夫には自殺未遂経験が2回ある。 夫は私と同じ統合失調症を25歳で発症している。 当時、

          大好きな夫のこと

          はたらくってなんだろう

          「きょうだい児」って言葉があるらしい。 障害のある兄弟のいる人のこと。 幼いころ、自分は大きくなったら、 「大切なものを守るためにはたらくんだ」 って思ってた。 それが大人になったときの私の役割だと思っていた。 私の大切なものは、お兄ちゃんで、ダウン症で、知的障害があった。 お兄ちゃんは、学校で、いじめられたって、そんなことおうちではひとことも話さなかった。いつも家族のなかで、友人のなかで、ただ、にこにこにこにこ笑っていた。 でも、たった、一度だけ、そんなお兄

          はたらくってなんだろう