その人の美しさ
「re_e.coの目はいったいどこについているんだ。小さくてわからない。みんなでre_e.coの目を探しに行こう。」
中学生だった3年間、副担任から授業中ことあるごとに脈絡なくあざ笑って言われ続けた。
今思えば、教師からの執拗ないじめだったと思う。
だけど、当時の私はただただその言葉を真に受けて、小さな目をどうにかしなければと思い詰めていた。
おしゃれに敏感なコならアイプチがすぐに思いつくだろう。
だけれど、流行やおしゃれにまったくもって無関心だったガリ勉の私がアイプチの存在など知るはずもなかった。
そんなださすぎる中学生が考えに考えた目を大きくする方法は「おでこの余った皮をアロンアルフアでくっつけて、その効果により、目を吊り上げて、目を大きくする方法」だった。
おわかりになるだろうか。おでこを手で吊り上げてみると額の肉が引っ張られ、まぶたが上に上がり、目が少し大きくなるのである。
だが、アロンアルフアはそういった目的では一切作られていない。
おでこを張り付けても張り付けても、1分と持たず、無残にはがれて、カピカピになったアロンアルフアだけがおでこに残るのである。
セロハンテープも試してみた。が、結果は同じ。
今、そのときのことを思い出すと自分の幼さや方向を間違えた一生懸命さをいつくしみをもって笑ってしまう。
私は、中学校を卒業してその副担任から解放されるまで、3年間家に帰ってはそういった「工作」を続けていた。
大人になって、自分の容姿に良くも悪くも愛着を抱けるようになった今、思うことは、副担任の異様さでしかない。
本来持つ、その人自身の各人のもつ美しさが目に入らない。
いったい、その目で彼は生徒の何をみていたのだろう、と。
副担任は問題を起こしては教育委員会に何度もお世話になっていたという。
あの言葉は副担任が自分自身に放っていた言葉だったのかもしれない。