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映画『クーリエ:最高機密の運び屋』感想

予告編
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 ごめんなさい。現在、絶賛二日酔いの中で編集しています。誤字脱字など、ご容赦ください。


抜群の緊張感


 キューバ危機……うん、キューバ危機ね、覚えてるよ。たしか学校で習ったと思う。細かく説明しろって言われると参っちゃうけど笑、(物凄くざっくりと)概要ぐらいなら知っている。本作は、米ソ冷戦下に発生したキューバ危機において、一人のごく平凡なセールスマンがスパイとして活動していたという実話を基にした映画。とにかく緊張感が抜群でサスペンスとしてめちゃくちゃ面白い。ドンパチアクションのスパイ映画も面白いけど、こういうスリルを味わってこそスパイ映画の醍醐味よね。



 冒頭、ペンコフスキー/アレックス(メラーブ・ニニッゼ)が二人の男性の跡をつける。この後、周囲から人の気配が消えた途端に接触を図るのですが、ここでの男性二人の会話があまりにも何てことのない日常会話だったせいか、その後に描かれるシーンの全てを、たとえそれがどんな内容の会話だったとしても「誰かに見られているんじゃないか?」という疑いを持って観てしまう。ずっと暗めの調光も相俟って、不安感は募るばかりです。


 時折出てくる不自然な画角も良い。良い……っていうか何て言うか笑、不気味とか怪しげって言った方がわかり易いのかな? 天井から覗いているかのような、人の脳天を追いかけるように真上から撮られたシーンが非常に印象的。そこに映る人物が「何かあるのでは……」などと不安になっていることが想像できてしまう。普通のドラマじゃあまり見かけない画角という違和感も然ることながら、この画角のせいで人物の表情が見えないこと自体が、余計に不安感を煽ります。勿論その人物は諜報活動の真っ只中なので、仮に表情をスクリーンに映したところでポーカーフェイスを気取っているのでしょうけれど、逆に表情を見せていないからこそ、表情を見せること以上にその人物の心情を深く想像させられます




 緊張感が活きるのは、時折描かれる緩急によるところも大きい。例えば、あくまでも一(いち)セールスマンとして働くグレヴィルの様子をポンポンと変わる早いカット回しで描いていくのに対して、いざスパイ活動を提案されるシーンではゆっくりと回して彼の表情をじっくりと映し出す。こういったシーンに限らず、スピード感の違いによる緩急によって、観客を退屈させない、けれど見せたいところはじっくり見せてくれるから面白い。

 他にも、チャビー・チェッカーの『Let’s Twist Again』が流れるシーンも良かった。ペンコフスキーの「酒は強いか?」というちょっとした緊張と緩和のユーモアある台詞の後、夜の街に出向き酒を飲み倒すグレヴィル(ベネディクト・カンバーバッチ)たち。すっかり酔いも回り、同席していた者たちが順々にホテルの部屋へ入っていく。しかし、全員が部屋に戻った途端、素面の表情になり諜報活動を開始する。ペンコフスキーの質問に対し「唯一の取り柄です」と返していた台詞が活きている瞬間でもありますが、先述したスピード感の違いとは異なり、陽から陰への切り替えという緩急が際立った瞬間でもあると思います。



 とまぁ、サスペンス作品としてあーだこーだと述べてきたものの、実を言うとスリリングなサスペンス面以上に、ドラマ部分が面白いのが本作の一番の魅力なのかもしれません。愛する家族が居て、仕事にやりがいも感じている。そんな男が突然、世界の命運を握るような立場になる。はじめのうちは家族と仕事のバランスがとれていたグレヴィルの日常……。しかし次第にスパイ部分が家族との時間(家族といる時のグレヴィルの頭の中)を支配していく……。家族とのシーンとスパイ活動のシーンの切り替え方が上手いからなのか、【家族⇔スパイ】の行ったり来たりの繰り返しによって、グレヴィルの中でスパイとしての意識が強くなっていく様子がよくわかります。なんとなくですけど、『アメリカン・スナイパー』みたいで、仕事と切り離しているつもりの日常ですら仕事の存在が心を蝕んでいくような……。けれどこの過程があったからこそ、彼は真に逞しいスパイとして勇気ある決断、行動をしたのだとも思います。


 ソ連の軍人がペンコフスキーを追い詰めた時に見せる「納得しろよ?」と言わんばかりの無言の小さな頷き(みたいな首の動き)、ソ連の収容所に入った時のグレヴィルの痩せこけて変わり果てた相貌等々……。本作は演者陣の表情も見どころの一つ。ドラマ部分が面白いと述べたのは、こういった史実だけではわからない部分を描いているところに本作の魅力があると感じたから。サスペンスとしてもドラマとしても面白い一本でした。


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