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映画『ビリーブ 未来への大逆転』感想

予告編
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 明日5月28日(日)よりHuluにて配信開始予定の本作。

アメリカで史上初の男女平等裁判に挑んだ女性弁護士ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の伝記映画。

ホントにねぇ、自分、〈実話〉って触れ込みに弱いんですよねぇ……。


世界は回り続ける だから歩み続ける


 久しぶりにミミ・レダーが映画の監督を務めるっていうので、楽しみにしていました。有名どころだと『ディープ・インパクト』や『ペイ・フォワード』ですが、両作品とも感動できる要素を組み込みながらも、それをそのまま単純な大団円、ハッピーエンドで終わらせずに、観客に必ず何かしらのメッセージを植え付けてきた(その痼りが苦手な人もいるかもしれませんけどね)ようなイメージがありました。本作にもそういったものがあるのか僕一人の見解だけでは断言できませんが、本当に気持ち良い後味の中に、とても高い視点から届けられたメッセージのようなものを感じさせられました。



 本作は、女性の権利のために法廷で戦い続けた女性弁護士、ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の伝記映画。過去の事例などの情報収集や、法廷での戦法を考えるフェーズ、そこから裁判に向けての準備、そして本番、といった具合に、次第に加速していく感じがとても面白い。人物の感情やストーリーを煽るようにまくし立てるセリフも、法廷モノならではの魅力だと思います。エンタメ作としてぐんぐん面白くなっていく中、最期の最後、最も重要なことだけはシンプルな言葉にして示していたのも、それまでとのギャップもあって凄く印象的。何より作品全体を通してちゃんと家族の姿も描いているのが良かったです。

思想の強さのあまりメッセージ性ばかりが先走ると観ていて辛いというか疲れてくるものですが、夫の病気や親子の仲直りなど、家族としての苦難や幸せといったドラマも描かれていたおかげで観客にとっても観易くなるし、そんな家族が彼女にヒントを与えたり、窮地を救ったり、心の支えになっていたり、ドラマとしてもストーリーの展開としても主人公の救いとなる存在になっているのもまた良い。

 あと個人的な意見ですけど、主人公自身の魅力も本作の面白さに繋がっていると思います。頑張る姿、感情的になってしまう様子、あと「この人負けず嫌いなんだろうな」 というのが伝わってくるから可愛くも見えてしまう。主演のフェリシティ・ジョーンズの魅力炸裂です。



 ——映画の冒頭、天下のハーバード大学の階段を上がる彼女。そしてラスト、法廷への階段を上がる彼女——この2つのシーンは正に象徴とも呼べるシーン。彼女は常に歩み続けてきたんだ、だから強く在れたのだと知らしめるシーン。努力をし、上へ上へ、前へ前へと歩み続ける意志があったからこそ、未来に繋がる大逆転を起こせたんだ。男尊女卑が当たり前の社会で女性一人で立ち向かうことはどれほど過酷だっただろう。でも、男ばかりの中を歩く冒頭のシーンで彼女が見せた姿は、希望を匂わす微笑みだった。一方、ラストの誰もいない中、法廷へと歩み向かうシーンは、誰も付いてこられない程強く優秀であったことと同時に、まだまだその歩みを止めないという意志をも感じさせます。そして本作、延いてはルース・ベイダー・ギンズバーグの精神を綴ったかのような主題歌が流れ、終幕……。ホントに素敵な流れです。


 訪れたのは、あくまでも “変化”、つまりまだ終わりじゃない。文化や伝統を大事にし、踏襲、継承していくことが悪いわけではない。けど、彼女が教えてくれた通り、時代に合わないなら変えるべきなんだ。どちらが正解だとかそういう話じゃない。「文化だから」「伝統だから」だけで変化を拒んではいけない。それはただの思考停止なんじゃないか。人種差別、性差別だけではない、アップデートしていかなければならない課題がまだまだあるんだ。だからこそ、本作のラストカットでさえ、彼女は歩み続けていたに違いないと思わされます。


 エンタメ性とメッセージ性、ともに素晴らしい。役者の表情だったりセリフだったり、はたまた各シーンの舞台、設定、状況、画角など、撮り方の術の多彩さとバランスの良さ、そして決して逸脱し過ぎないからこその観易さ(受け入れ易さ?)がある。やっぱりミミ・レダー監督の作品は良いですよね。


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