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映画『フェアウェル』感想

予告編
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 毎日投稿していると、「明日は何の映画の感想文を投稿しようか……」と悩んでしまいます。まぁ、これまで趣味で書いてきたものをコピペして載せてるだけなんですけど。

「今日は〇〇の記念日なので、それにちなんだ映画を~」「現在公開中の〇〇にちなんだ映画を~」等々、色んな理由をこじつけてきましたが、そろそろ思い付かなくなってきました笑。


 そんな本日10月2日ですが、日本ではちょうど3年前、2020年の10月2日に公開された映画『フェアウェル』の感想文を投稿しますー。

よければどうぞー。



グッド・ライ


 近年話題に上がることが多いA24作品。アメリカに住む主人公ビリー(オークワフィナ)に知らされた、中国に住む祖母(チャオ・シュウチャン)の余命。けれど余命のことについて祖母には言ってはならない、と家族から口止めをされる。

アメリカと中国、東洋と西洋……。考え方の違いに葛藤する主人公の姿が印象的な物語。


 余命宣告ってね……。正直言うと、どちらの方が正しいと言える自信はありません。けど個人的には告知する派かな。っていうか告知して欲しい派。

でも重要なのは告知する、しないのどちらかではなく、それぞれの理由。何故告知するか、何故しないのか。本作は、自分と周囲の考え方の違いに葛藤するビリーの心情がよくわかるように描かれていたと思います。



 まず “告知しない” という展開だからこそ、この葛藤が浮き彫りになるんじゃないかな。もし告知したら、それはそれでまぁ色々あるんでしょうけど、少なくとも一つの区切りにはなると思う。“言っちゃいけない” 状況だからこそ、言うべきか否かで悩み続けることになってしまう。告知することを “重荷を課すこと” と捉える親族たちに違和感を覚えるビリー。はっきりと示されてはいませんが、この違和感はその考え方自体へのものではなく、その考え方を言い訳のようにしてしまっている空気に対してのよう。

「親族で決めたこと」
「中国ではほとんど告知しない」
「東洋と西洋では命 の考え方が違う」

……そんな “そういうもんだから” だらけの説明に納得できなかったんじゃないかな? 告知の是非はともかくとして、「重荷を課す」だけではなく、個人の尊重という側面もあると言いたかったんじゃないのかな? そんな風に思います。

思いつかなかったのか、それとも口籠もっていただけなのかは判然としませんが、明確に言葉にされていないからこそ、観客に考えさせる余白を与えてくれる。



 ビリーのいとこで、祖母にとっては孫息子のハオハオ(チェン・ハン)の結婚式は、余命僅かな祖母 “ナイナイ” に会うために親族が集まる口実でもありました。そんな結婚式の準備に付き添うナイナイとビリー。衣装合わせやら写真撮影やらでわたわたしているハオハオ夫婦を余所にナイナイとビリーが話しているのですが、この時、ビリーの姿だけが背後の鏡に映ります。まるで今ナイナイと会話しているビリーとは別の “もう一人のビリー” のよう。上手く言えないけど、ナイナイには見せていない、本当のことを言えずに抱え込む彼女が隠れていると教えてくれているようにすら感じてしまう。

こんな憶測をしてしまうのは、その鏡に映る彼女の姿が後ろ姿だったから。ナイナイの余命の件をビリーに言わずに隠していた彼女の父親ハイヤン(ツィ・マー)を、同様に背中越しのショットで映していた序盤のシーンがあったからこそ活きる構図。これがたまたまなのか狙ってなのか、それとも僕が深読みし過ぎなだけなのか笑。

それはわからないけど、そんな二人の後ろで描かれるハオハオ夫婦の結婚式準備がグダグダなのも面白い。結婚含め、これから先の前途多難さを示唆してくれているんじゃないかとすら思わせてくれます。



 などなど、そんな細かな描写も各所で際立つ本作は、クライマックスも素晴らしい。車に乗り込み帰路につくビリーたち。その道中で横切るのは、かつて自分達の家があった場所。けれど都市開発のため、父から「見てもわからない」と言われるほどに今は影も形も無い。それを大人しく見つめながら通り過ぎていくこのシーンは、ビリーがナイナイとの別れを受け入れた証拠。

このシーンとは対照的に、「見てもわからない」と言われてもなお「見に行きたい」と言っていた中盤のシーンは、まだその時点ではビリーがナイナイとの別れに納得できていなかったとも受け取れる。最期にそんな景色を持ってきて、その後のシーンで「あ、それでもビリーの心にはナイナイが存在しているんだ」と思えるアクションを添えてくれて……。いやぁ、素敵な締め括りでした。



 最期に、これは書くべきかどうか迷ったんだけど(要するにネタバレ注意です!)本作の一番の見所は最期の最後。まさかのエンディングにひっくり返りそうになる。冒頭の「実際にあったウソに基づく」というテロップは、もしや祖母についた嘘以上に、我々観客へのものなんじゃないかとすら……いや、嘘はついてないか……。でもそう考えると、劇中で医者が口にしていた「これは良い嘘です」というセリフも意味深に聞こえてくるから不思議だ笑。まぁそんな考察(妄想)はさておき、このラストシーンこそ、気持ち良く劇場を後にできた、これ以上無いほどの理由なんです。


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