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映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』感想

予告編
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レインボー


 シーアが監督!……観に行った理由はたったそれだけ笑。シーアの楽曲が好きで、本作で流れてくる曲も全部好きだったし、本当に気軽に観に行っただけ。でもまさかそんな本作でこんな映画体験に出逢えるなんて思いも寄らなんだ。シーアについてはネットでの情報しか持っていないですけど、ファンが知り得る程度の知識だけでも彼女について知っていれば、本作の見え方が少しは変わってくるかと思います。

 その一方で、主人公ズー(ケイト・ハドソン)の妹で自閉症のミュージックをマディ・ジーグラーが演じていた(シーアのMVにも出演していた方)ということで、本作には「エイブルイズム(Ableism:非障がい者優先主義)ではないか」との指摘もある。キャスティングに至る経緯や思惑までは知らないので何とも言えませんが、たしかに安易に「良い」と呼べるものではなかったかもしれません。「初監督だから大目に見よう」などとも思いませんし、シーアがチャリティ活動などにも積極的な人物であることが知られていたからこそ残念な気持ちも生まれてくるかもしれない。ただ、そういった指摘を軽視するわけではありませんが、何もかも全否定するには勿体無い魅力があることもまた事実。以上のような問題に目を瞑るわけではありませんが、本作を観て感じたことを真摯に述べていきます。



 本作では、ミュージックの周囲の人々は彼女の事を単に障がい者としてだけでは扱わず、特別な魅力のある人物として接していた印象でした。そんな彼女の心の中を、シーアの楽曲にのせて映像化したかのようなシーンも見どころの一つ。けど実は、YouTUBE上などでも公開されている各楽曲のミュージックビデオそのままの映像だったので、見覚えはあったんです。でも物語と同時に鑑賞することで、場面によってはどこか『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のワンシーンを彷彿とさせられることもありました。


 そんな各音楽シーンでは、背景や衣装が真っ黄色だったり真っ青だったり……、必ず何かしらの色で統一されたような空間になっており、そこでダンスや歌が繰り広げられる。はじめのうちは、そのアーティスティックな世界観にただただ浸ることしかできずにいましたが、ラストに流れる『Together』での虹色に彩られた映像が、それまでのシーンたちに意味をもたらしてくれる。レインボーフラッグといえばイメージし易いかもしれません。それ自体で一つの象徴になっている印象も強いですが、元々は各色それぞれに生命や自然、調和、精神などの意味が込められており、本作のラストシーンによって、それまでに描かれてきた色が一つに合わさったという気がします。

 また、シーア自身が本人役でカメオ出演(緑色のメイクで顔を覆ってはいましたけれど)したシーンでは、彼女自らの口で慈善活動への熱意を語っており、作品全体を通して彼女自身の想いが反映されていることがよくわかります。



 シーア自身、依存症で苦しんでいたという過去もあるし、障害や依存症などのコミュニティでの活動をしていることも知っている。だから本作に彼女の半生や経験が投影されていることは容易に想像がつく。そんな強い想いで作られているからこそ、過去にも交流があるマディ・ジーグラーをキャスティングしたというのもわかる。結果として、失敗になってしまった部分もあるけれど、シーアが音楽制作以外の手段で自身の想いを形にした本作を観ることができて、僕は本当に良かったと思っています

だって考えてみれば、エイブルイズムの問題も当然だし、(僕自身は周りにそういう人がいないので判りかねますが)シーンによっては自閉症の表現が過剰になっていたのかもしれなくて……。要するに、本国に比べて公開のタイミングが遅かった日本では、もしかしたら上映の中止だって有り得たんです。少なくともソフトスルーになっていたって不思議じゃない。でも劇場で観ることができた。もしかしたら、そういったことに対する意識がまだ日本では希薄なだけかもしれないけど……。

でも過ちが混じっていたとして、だからこそその問題に対して真剣に考えることにも繋がる。色んな意見はあると思いますが、劇場で観られて良かった。



 主人公ズーも、失敗をしでかしている。そんな自分の弱さに向き合い、弱いながらも向き合おうとしていく姿勢は、シーアのことを投影しているとはいえ、彼女に限らず多くの人の心にも刺さり得るんじゃないかな。登場人物たちのイマジネーションを音楽と映像で味わうことで、観ている者のイマジネーションも膨らんでいく。そんな映画だったと思います。


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