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映画『コヴェナント 約束の救出』感想

予告編
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最近サボってたけど久しぶりにまとめて映画感想文投稿しようかと②



緊張感


 劇場で予告編を目にした時から気になって仕方が無かった本作。もちろん「ガイ・リッチー監督作」というのも、観に行きたくなる理由の一つではあったのですが、観終わる頃には最早そんなことは関係なくなっていました。エンドロールが流れ始めるまでガイ・リッチーが監督だったことすら忘れてしまうほど作品に没入してしまう……。本作にはそれほどの魅力が詰まっています。



 物語の舞台は2018年、アフガニスタン。戦地から奇跡的に生還した兵士が、自身の命を救ってくれたアフガニスタン人通訳とその家族がタリバンから命を狙われていることを知り、彼らを救出するために命を賭して再び戦地に向かうという物語。

あらすじだけで既に泣きそうですが、アフガニスタン人通訳などのドキュメンタリーや実際の話から着想を得て制作されたのだそうです。正確には「実話を基に」というわけではないそうですが、それらと見紛う程の緊張感がある、見応え抜群の一本でした。


 本作の冒頭、YouTUBEでも公開されているシーンなので細かく述べてしまいますが、主人公・ジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)を含め、彼が率いる部隊のメンバーの名前が表示されます。それぞれの登場人物がそれなりに重要なんじゃないかと思わされるシーン。
 9.11同時多発テロの報復措置について等々、当時の状況について説明するテロップの文言には似つかわしくない、だいぶポップなBGMが流れていたせいもあってか、「ド頭からこんなに名前と顔を覚えられるかなぁ」なんて気の抜けたことを考えながら観てしまっていましたが、急に突き落とされる。

 本作の舞台、彼らの居る場所が、如何に危険と隣り合わせなのかと理解させられます。本作にはドキュメンタリーなどにも見劣りしないと思わされる程の緊張感・緊迫感が漂っています。無論、この冒頭シーンに限った話ではありません。



 手に汗握ると言いますか、観た方それぞれでヒヤヒヤドキドキするシーンは異なると思いますが、個人的にはキンリーと通訳のアーメッド(ダール・サリム)の二人が、タリバン兵に追われながら戦地から逃げていたシーンが一番でした。

 隠れながら逃げていく二人と、彼らを探しながら追い掛けてくるタリバン兵。それぞれの姿が何度も交互に映されていくのですが、周囲にはこれといった目印の無い荒野しか見えないため、各登場人物の位置関係がまったくわからない。おかげで、「どこに敵が潜んでいるのかわからない」というキンリーとアーメッドが抱えていたであろう緊張感が、こちらにまで伝わってくるような錯覚があります。

また、無線機の存在も非常に大きい。タリバン兵の無線機を奪い取って逃げることで、その無線機からタリバン兵らの無線での会話が聞こえてきた瞬間に、無線機の電波を拾えるほどの距離(およそ200~300mほど?)にまで追い着かれてしまったということがわかる。加えて、そこまで来ても尚、互いの位置関係がはっきり描かれないので、「数百メートル以内に居るのはわかるけど、それ以上のことがわからない」という緊張感がより一層際立っていました。


 これら、戦地から逃げ帰らんとするシーンは、本作の半分ほどの尺を占めていたかと思います。予告編や映画情報サイトのあらすじなどでも明かされていることなので、ひとまずは二人とも生還することは既に分かっているにも関わらず、「一体どうなるのか」「無事生き延びてくれ」と思わずにはいられませんでした。

また、この逃走パートがじっくりと描かれていたことで、キンリーにとってアーメッドがどれほど大きな存在なのかということも理解させてくれる。

だからこそ、再び戦地に戻ること、そしてアーメッドのビザ申請に躍起になっている姿に説得力が生まれる。もちろん、キンリーを演じるジェイク・ギレンホールの演技力あってこそですが、ヴォークス大佐(ジョニー・リー・ミラー)にビザ申請を請願する際の目力も凄まじい。戦地で、半ば諦めてしまったような表情を見せる瞬間もあったからこそ、その時とのギャップも相俟って、ここでの目力、及び表情の力強さには圧倒されました。


 あと、戦地からの逃走パートだけではなく、アーメッドたちを救出するパートの話も忘れられません。先ほどの話にも繋がりますが、敵がどこにいるかわからないという緊張感はここでも活きていました。

 携帯電話を利用してアーメッドらを誘導し、家から逃がそうとするシーン。相変わらず敵の位置は不明確なままなのですが、今度はタリバン兵らの姿さえ映されないまま、音声でのみそれぞれの位置情報が提示されていたことによって、アーメッド側の緊張感が、観ているこちら側にまで伝わってくる。

しかもアーメッドが逃げる様子が、なかなかカットを割らないまま描かれ続けていくので、これもまたヒヤヒヤドキドキさせられた要因でもあります。



 緊迫感あるシーンばかりに惹かれてしまいそうですが、戦地外でのシーンも素晴らしい。単に会話をするだけのシーンでも、サイドミラーに話者の一方の姿を映すことで、カットを跨ぐことなく、会話する両者の顔を同時に映し込むといった、飽きさせない工夫が見受けられます。また、ゆっくりとしたズームイン/アウトも見どころだったかもしれません。
 キンリーとアーメッドが基地内のベンチに斜向かいになって座って会話するシーンなどもそうですが、(気のせいかな?)なんとなく、登場人物の内面や心情にフォーカスする瞬間でズームイン/アウトが用いられていた気がします(ここでの「理解し合えたな」というセリフも印象的でした)。

 そのせいか、戦地から逃げている際のズームイン/アウトも、過酷な状況を、共に命を賭して生き抜こうとする道程、その実体験の共有によって二人の絆が、多くを語らずとも強まっていくことを示唆していたとすら思えてくる。

 本当に見応え十二分の本作。20年にも及んだこの軍事作戦の意味を改めて問い掛ける瞬間も織り込まれ、終幕するその時まで気が抜けません。そして最期の最期に流れてくる、「コヴェナント」についての話……。単なる「契約」を超えた、人と人の絆、心の繋がりの力強さを見せつけられた一本でした。


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