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映画『素晴らしき、きのこの世界』感想

予告編
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 明日5月9日(火)よりAmazonプライムビデオにで配信開始予定の本作。
 劇場に観に行った時は「なんじゃこれはw」と思いましたが、その感じが楽しいドキュメンタリー映画でした。話半分で観て丁度良いのかも?笑


眉唾物?w


 なんとなくですが……学生の頃は “ドキュメンタリー映画” って聞くと、どこかハードルが高いイメージがあった気がします。でも最近は全くそんなことはありません。それは「ボクも感性が大人になってきたんですよ~」とか言いたいわけではなくて、何て言うか、昔(と言ってもまだ僕が学生の頃)は割と政治的だったり社会的な内容のものが多いんじゃないかというイメージ(偏見)があったんです。でも次第に、芸術や自然、科学、あとはスポーツとか文化系の作品など、段々と取っ付き易そうなテーマのドキュメンタリー映画が増えてきて、全国の劇場、それも大手シネコンなんかでも上映されて、もっと言うと趣味的な内容のドキュメンタリーまでも多く見かけるようになったようになってきて……。あくまで、なんとなくだけど。

そうやって知らない世界を覗いたり、知る喜びに触れる、そんな楽しみがあるというのが、今の僕が抱くドキュメンタリー映画のイメージ。この映画なんか正にそう。マジで、何の気なしに、たまたま上映していたから観たんです。これが意外と面白かった笑。(余談ですが、「すばらしき〇〇の世界」みたいなタイトルのドキュメンタリー映画は、個人的に相性が好いのかもしれません。まぁあくまで邦題だから、配給会社の匙加減ではあるんですけどね。)

 上映の規模でいうとそれほどではないけど、実は大スクリーン向けなんじゃないか?と思える映像が盛りだくさんの本作。森に自生するきのこや菌類を捉えた映像も綺麗なんだけど、一方で、まるできのこの胞子や菌糸内を通る電気信号(乃至はそれぐらいの小さな物質)になったかのようなミクロな視点で描かれるCG映像が、それに負けず劣らず見応えがあります。ミクロな視点から見るきのこの世界はこんなにも広大で複雑で魅力的なのかと思わされました。その映像はもはや、異世界ファンタジー作品の様相を呈していると言っても過言ではないかもしれません。

そして、この「きのこの世界にようこそ」感が溢れる映像の数々の後、次第に「今あなたがいるのは人間世界ではなく、実はきのこの世界の一部なんだよ」感にシフトしていく感じもまた面白い。



 本来の順序で言うと逆になっちゃったけど、実際の菌類の活動を捉えた映像も本作の見所の一つ。特に序盤は、きのこが主演する作品のオープニングアクトかよ、ってくらい矢継ぎ早に映し出されます。不思議なもんで、専門的な知識や強い興味が無くても映像に惹き込まれてしまいます。僕が知っているきのこ像とは大きくかけ離れていることがほとんどで、まるで花が開くように成長するきのこ、毒々しい見た目や色鮮やかなきのこ等々、多種多様なきのこの姿を拝める。これらの成長や繁殖といった時間経過を伴う変化をタイムラプスで撮影しているのも面白い。(なんか観終わってから知ったんですけど、本作の監督であるルイ・シュワルツバーグ氏はタイムラプス映像で割と有名な御方らしいです。)

そうそう、今の内に述べておくと、リアルな自然の様子を映し出しているので、きのこや虫の見た目が苦手な人は絶対に観ない方が良いです。



 専門的な内容だし、中には眉唾な話もあるものの、各所で理解を早めてくれる参考映像やイメージ映像だったりがちゃんと挟まれているので、とても観易い。こういった親切な工夫も本作の良いところ。

ところで、今述べた “眉唾な話” というのが、個人的にはかなりの衝撃でした。科学的な根拠も無しに否定するのはちょっと野暮なんですけど、本作の後半なんかはもうね……笑。まさしく「信じるか信じないかはあなた次第」ってやつです。これの憎いところが、“そうと言わんばかりの語り口に見せかけて、実は明言していない” ところ。 「きのこのおかげでガンが治りました」とは言っていないんだけど、もうそう言っているかのような語り口なんです。

なんか字面だけだと悪口みたいな文面になっちゃってますけど、そうじゃない。これは本作の良いところ。幼少の頃からきのこに魅了され、直向きにきのこと向き合ってきた菌類学者・ポール氏が語る、きのこ・菌類への愛。「ああ、この人は本当にきのこが好きなんだなぁ」と感じられることは、趣味的ドキュメンタリーが目指す理想形の一つなんじゃないかな。まぁもしかしたらポール氏は「趣味じゃなくて科学」って怒るかもしれませんが。



 事実はさておき、菌類がもたらす無限の可能性の映し方は良かったです。治験のシーンでは、幻覚が見えるタイミングで重低音が聞こえ、当事者が体感している不思議な感覚を味わわせてくれるような効果があるし、また、視覚的な効果で言えば、前述したCGシーンで度々流れていた、菌糸内を電気信号が通る様子が、ここでの幻覚体験(脳神経に作用する描写)と呼応しているようにも見えて面白い。

 「オススメ」と言うと本作の内容の肩を持つことになりかねないですけど、気軽に観られる専門的ドキュメンタリーとしては面白かったと思います。


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