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映画『太陽がいっぱい』感想

予告編
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 雨も上がって、急に暑くなって、太陽光が憎くも感じてきてしまう今日この頃。

 そんな本日は、ルネ・クレマン監督の『太陽がいっぱい』の感想文を投稿しますー。


 予告編の動画内には「新宿シネマカリテで上映」となっておりますが、本項は4年ほど前に渋谷のBunkamuraル・シネマにて上映されていた4Kレストア版を観に行った際の感想文です。

他に予告編動画が見当たらなかったものでして……。悪しからず。


太陽はどこに


 渋谷のBunkamuraル・シネマで一週間限定ですが上映されていたので鑑賞。この映画の感想は何年か前にも書いたことがあるので、今回は取り留めもない話をたくさんしようと思っていますが、悪しからず。

 4Kレストア版ってことで、要は映像が綺麗ってことです。確かに子供の時分に伯父が見せてくれた『太陽がいっぱい』のVHS(TV放映の録画。とうの昔に擦り切れて観れなくなりましたが)の映像は、「塵でも舞ってんのか」ってぐらいに汚かった覚えがあります笑。それと比べるのもどうかとは思いますが本当に綺麗でした。だからこそ主演のアラン・ドロンの美貌が映えるというものです。彼はジェームズ・ディーン、ジュリアーノ・ジェンマと並んで、世代や国を問わず個人的にイケメンだと思う俳優の一人です。高い鼻とか彫りの深い目元への憧れもあるのかな? 本作には、最大の魅力の一つである彼のその美貌に惚れ惚れできるシーンがたくさんあるんです。



 自身の悪事の尻拭いのためにまた悪事を犯し、その尻拭いのためにまた悪事を重ねていくことでどんどんと追い詰められていく主人公・トムを見ていると、『危険がいっぱい』でのアラン・ドロンの姿を思い出す瞬間があるけど、それと比べると焦りを滲ませながらもどこか危機感が欠如しているトムからは、余裕すら感じられます。罪を犯してすぐの彼が市場を歩いているシーンで、店頭に並ぶエイの口元と鼻の穴がまるで人の顔のように見える特徴を活かし、「誰かに見られているのでは?」という悪人(或いは、何か引け目を感じている人間)特有の不安感を印象付けるシーンを挟む等、少なからず彼も意識している筈なのだとわかります。

にも関わらず、そんな状況下でも前向きな展望を信じて疑わない彼の姿から窺える若干の “ヤバイ奴” 感が、アラン・ドロン固有の美貌と相俟って、他にはない魅力を生み出しているんじゃないかな。鏡の前でフィリップ(モーリス・モネ)の真似をしているシーンなんかわかり易い。芝居から漏れ出る色気と、その行為自体のヤバさという、似て非なるそれぞれのゾクゾクが綯い交ぜにされた感覚は、僕の知る限り他では味わえません。



 本作には間違いなく、ある種の青春が描かれている。でもそれは淡い色恋や爽やかな情緒なんてものではないんです。その身を焦がすほどギラギラ輝く太陽にも負けない、若さ故の主人公のパワーが “野望” という形となって現れ、それがアラン・ドロンの甘いルックスとニーノ・ロータによる忘れられない甘美なメロディとで彩られている。〈力強さ〉✖〈美しさ〉という「まさに」と呼びたくなるような “青春らしさ” に、サスペンスという毒っ気が混ざり、「悪い事だ」と認識しつつも上記のような甘味に惹かれ、本作の中毒となる。(……映画の余韻に引かれてか、妙にカッコつけた言い方をしてしまったかも笑)

「欲しい!」というシンプルな想いによって、目を曇らせるどころかむしろ感覚を冴えさせていった主人公の様子も相俟って、ついついそんなことを考えてしまう。実は感覚が麻痺してしまっているとも気付かない辺りも同様にね。



 タイトルやクライマックスのセリフにもある “太陽” という希望の光が、皮肉にも彼の見据える展望とは終始相反しているのも面白い。島の街並みから海面に反射する太陽光まで、ロケ地であるイスキア島は本当に日の光が映える。日の光が届かない海中に残された闇(=事件の真相)が、船を引き上げることで文字通り白日の下に晒され、最初の日焼け同様に、彼だけには決して太陽は微笑んではくれないのだ、と言わんばかりのラストシーン。忘れられない名シーンと呼ばれ続けるのも納得です。


 今にして思えば、視覚的にも暗喩としても、常に太陽が印象的な本作だったけど、日に照らされた街並みや海面に反射する光ばかりで、太陽光そのものがスクリーンに映る瞬間は一度もない。「太陽がいっぱいだ」と口にしていたトムだったけど、彼が目にしていたのは本当の太陽光(≒希望の光?)ではない、偽物の光なのだ、だからこそこの結末なのだ、とすら感じられます。

あ、でもレンズで直射日光を撮影するのは危ないのか……? でも夕焼けとか朝焼けとか弱めの日光なら作品によっては映っていたような……。う~む、そういう視点で映画を観たことはないからなぁ。今後はそういう目線も持って映画を観ることにしようかと。また何年後かに本作を観たくなった時のためにもね。


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