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映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』感想 

予告編
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円環を成す

 IMAXレーザーHFR(ハイ・フレーム・レート)3D版にて鑑賞。もはや呪文みたいな感じ笑。まぁとても簡単に言うと、“画質がめっちゃ良い” って思って貰えればいいんじゃないかと。

 一作目の『アバター』は十年以上前。本作の公開にあたりリマスター版が一部劇場で上映されていたみたいだけど、僕は『アバター』を劇場で拝むのは本作が初めてでした。そりゃあハイグレードな上映方法を選びますよね。エンターテインメントとしても勿論だけど、この物語が描くものをより深く味わうには、可能な限り上質な形で鑑賞するのが最善だと思います。


(本項ではそれとなくネタバレもあります……っていうか、物語内の用語も出てくるので、未見の方には伝わりづらいかも。すみません。)


 本作では全体的に捕鯨批判みたいなニュアンスががっつり込められていましたが、日本の方はどう感じているのかな……? その是非はさておき、色んな方の意見を伺ってみたいところです。

 また鯨に限らず、前作からも同様のことですが、概念や哲学としての〈生命〉について意識させられてきます。仮の肉体を作り、そこに意識だけが入り込む。或いは、 本来の肉体は朽ちてはいても、記憶だけが情報としてインプットされている。そんな状態。

 では何をもって命なのか、はたまた自分なのか。「我思う故に我有り」というか、〈生命〉の捉え方、延いては〈死〉の捉え方までをも意識しながら鑑賞する192分という印象でした。

可能な限り上質な形での鑑賞などと述べたのは、リアルであればあるほど、鮮明であればあるほど、没入することができるから。それこそ映画館なら尚更ね。


 序盤、侵略のために森の中を進むスカイピープルたちのシーンと、キリが葉の裏から光を透かして見たり草の上に寝転がってみたり他の小さな生命たちと戯れたりするシーンが交互に描かれます。

平和な空間に脅威が迫っていることを見せられつつ、侵略——他者の生命を奪う——する前者と、今ある生命の息吹を肌で感じている後者という対比が、より強く〈生命〉を際立たせる。

実は後半のシーンでもキリは思考だけではなく感覚としても〈生命〉を捉えている様子が描かれるのですが、一作目とは異なり、舞台が森から海洋へと移った本作のためか、個人的にはエイワよりも海の方が「偉大なる母」という大自然をイメージしやすかった気がします。


 本作における“海”が指し示すものを明確には言い表せないけれど、

「海の道には始まりも終わりも無い」、
そして「命は借りもの」「いつか返す」

というセリフの通りであれば、 生命一つ一つの終わりは、とても大きな流れの中の一つであると思えてくる。

今思えば、3時間超という長い物語の中で様々な出来事が描かれていながらも、作品全体として一貫してそうだったような気もします。

始まって早々、お腹に子を宿すネイティリの姿が描かれ、クライマックスにはその生命が海という大自然へと還る。しかもその時の肉体は胎児のようなポーズとなっていて、本作の始まり——母親の胎内——へと戻っていくかのよう。

「命は借りもの」 「いつか返す」という言葉もここのシーンで出てきた。そしてラストに流れるクレジットと海の中を泳ぐ動物たちの映像では、一匹一匹は弧を描くように泳ぎながらも、その多くが二匹で対を成して弧を描くことで、まるで円環を成しているかのような見た目の動きだった。

……まぁここでの動物たちの泳ぎ方については軽いこじ付けかもしれないですが、作品全体を通して観た印象は、〈生命〉が円環を成しているということ。

残念ながら、本作が始まった時と物語内の状況があまり変わらぬままになってしまった部分もあるけど。何をもって生命なのかという非常に内面的な視点と、それでもその魂や生命は大きな流れの中の一つに過ぎないのではないかという、逆にとても大きな目線でも描かれていたように思えます。



 実のところ、先述した捕鯨批判みたいなことも含め、例えば戦争が起きるきっかけみたいなものについて。侵略する側とされる側。無暗に逆らわない方が犠牲は減るようにも見えつつ、でも屈することで他に大きな犠牲にも繋がりかねないという、まるで現実に起きている国際問題をも彷彿とさせること。或いは人種や生まれという差異が、その人物そのものの価値を決定付けてしまうような差別の問題等々。

その上映時間の長さもあってか、本作にはテーマが多過ぎる。今回の感想文で述べてみたのは、あくまで一部分。その映像の凄まじさも然ることながら、文字通り、語り尽くせない。


 まぁところどころで気になる点もあるかもしれないですが、この映像体験は、やはり劇場で味わえて良かったと思いました。



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