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ベトナムは怖いか?
前回、「ベトナムでバイクに乗るたび、事故に遭って片足が飛ぶ妄想をしている」と書いたが、いつしかそんな妄想もしなくなってしまった。
既にバイクもベトナムも、私の日常に溶け込みつつある。
はじめて乗る乗り物は、良くも悪くもわくわくするものだ。
速さにおののくし、きちんと奇跡に驚くし(「鉛が空に浮いてる!」)、事故ることも律儀に想像する。
飛行機に乗るたび、席に着いた途端に窓を閉めて眠りにつく人に驚いて「なんでこの離陸の瞬間を味わわないの?! 身体が地表を離れるんだよ?! めちゃレアじゃん! ぞわっとしない!天然ジェットコースターだよ!無料展望台つきだよ!」と思っていたのだが、あれも、乗り慣れた人にとっては日常なんだろう。逆に、日本の電車でやたらはしゃぐ外国人観光客を見ると、「何がそこまで珍しいんだろう」と思うし。
乗り慣れた乗り物が提供する危険は、まったりと日常に浸透していく。
ひったくりのリスクだけはいまだに忘れず、荷物は前に抱えている。
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ベトナム人だって、バイクが危険じゃないとおもってるわけじゃない。
ベトナム人の何人かに聞いて驚いたのだが、皆割と口をそろえて「バイクは危ない」という。危ない、と言いながらバイクにのるベトナム人もたくさんいるのだ。横行している3人乗り、4人乗りも、「危ないとは分かっているし交通ルールでは禁止されているが、黙認されている」という認識らしい。
だからベトナム人だって、もっと安全で安価で俊敏な移動手段があったら、そっちに移るだろう。バイクが好きで好きで仕方なく乗ってる人も中にはいるだろうが、バスや電車が未発達である現状、バイク以上にまともな交通手段が無い、だから皆バイクに乗ってる。
ベトナム人はバイクにロマンやプライドをかけている、ようにも見えるが、あっさりと他の交通手段をとりこむ未来も考えうる、と思う。フランスパンもビーフシチューも貪欲に自国料理にとりいれ、H&Mもユニクロもどかどか呼び込むこの国を見ると、そんな気がする。
だから、「日本人だけどバイク乗っちゃうぜ、バイク禁止の駐在員とは違うんだぜ」的な無駄なプライドはもたないようにしている。それはそれですごくダサいと思うから。
しかし「バイクに乗る=危険」「日本=安全」と短絡思考するのは本当にダサい。そういう頭の使い方が一番危ない。
安全なはずの日本で、「~しなきゃいけない」「~しちゃいけない」でがんじがらめになり「全然自尊心が安全じゃない」と感じたため、ためしに外国に逃げてみた。
そういうわけなので、私はバイクに乗らないわけにはいかなかった。
私がどこまでベトナム人になれるか分からないが、ためしに日本人じゃなくなる必要はあるのだ。
なのに先日、大衆食堂で「これ何?」と聞いた食べ物がカエルだったから、瞬時にやめて別のものを頼んでしまった。
「カエル=食べない」の短絡思考を変えられるのはまだまだ先だ。
渋澤怜(@RayShibusawa)
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