これからは傷つける側のケアも必要

とあるツイートを見て共感したことが
タイトルになってるんですけど

世の中傷つける側と
傷つけられる側がいたとして

当然傷つけられた側はケアの対象になる。
精神科病院でも殴られた側は怪我の対応や
心のケアなど行うわけです。

言葉の暴力でも同じですね。

問題は傷つけた側は
その人が悪いと
個人の責任にして
ケアの対象にならないことが多い。

実は傷つけた側も傷ついてるんですよね。

もちろん人を傷つけたことを
無かったことにはできないし
全肯定することはできないのですが
責任を個人に押し付けるだけでは
何も改善しないって話です。

アルコール依存症患者が飲酒して
暴力を振るったら

アルコール依存症の話をここからしますが
抽象化しやすく
どの人間関係にも置き換えられる話にしますので
この先も読んでいただけると嬉しいです。

アルコール依存症の治療に携わると
必ずと言って良いほど出てくる問題が
その人の家族との問題。

アルコール依存症になって
本人が困って受診するパターンもありますが
本人よりも家族が困って
何とか病院に受診させる、という
パターンの方が多いような気がします。

入院して断酒を目指して
治療が終わり退院して
しばらく経つと再飲酒して
また家族に暴力をふるったり
罵声を浴びせたりする。

「お酒はやめるって言ったのに！」
「なんでこんなにあなたを支えてるのに傷つけられなきゃいけないの！」
「入院してくれている間だけが束の間の休息だった」
「もう離婚したい！」

とまた家族は辛い目に遭ってしまう。

当然病院をはじめ医療機関や
自助グループ、家族会といったところで
家族はしっかりケアされる場所があります。

が

傷つけたアルコール依存症患者本人に対して
心のケアをすることって
本当に少ない。

今、読んでくださってる方々も

「お酒をやめられなかった上に家族を傷つけてるその本人が悪いのは明らかだ！」

と思ったことでしょう。

その気持ちはものすごくわかる。

何なら精神科で働くスタッフにも
そういう感情を持って
「自分が悪いことをしたんでしょ、しっかりお酒をやめて反省しなさい」
というスタンスで接するスタッフもいます。

しかしこれらはアルコール依存症の症状で
風邪ひいた人に
「何咳してるんだ！」
「何で体温が高いんだ！」
と怒っているのと同じ原理なんですよね。

「風邪をひいて咳をしているせいで周りが迷惑している！お前が悪いんだからお前が責任を取れ！」

と言われているようなものなんです。
アルコール依存症患者さんが
お酒を飲んで易怒的になってしまうのは。

ただお酒を飲んでも
道徳的な判断力に関しては
多少保持されているとも言われているので
一概には言えませんけどね。

これはあくまで例え話ですが
家族に迷惑をかけた本人も
道徳心がないわけではないので
結構みんな傷ついてるって話です。

しかもこういう場合だと
この家族には味方がたくさん付くのに対して
本人には共感してくれる人はほとんどいない。

そして本人が自己否定をして
自己肯定感が下がってしまい
さらに心に傷を負うのです。

「どうせお酒なんかやめられるはずがない」
「自分が悪いから愚痴を吐くこともできない」
「どうせ自分はダメなやつなんだ」
「生まれてこなきゃよかった」

とうつ状態になって
さらに気分を紛らわそうとして
またお酒をやめられなくなるのです。

私はこういう人ほど
心のケアが必要だと思います。

こういう人の断酒率を上げるためには
忍耐力や罰則などではなく
ちゃんと自分のことを
わかってくれている人がいることなんです。

家族とは対立していることも多いし
元々孤独を紛らわそうとして
飲酒がやめられなくなっている人が多いので
人に頼ることがなかなかできません。

人にとって孤独や孤立することは
非常に大きなストレスになる。

だからこそ
その人達のことを理解して
共感できる人の存在が
回復する上では必要なんです。

傷つけられた側は守ってくれる人がいますが
傷つけた側をケアしたりサポートしようという人は
なかなかいません。

何もアルコール依存症だけの話ではなくて

親に愛されなかった人が
自分の存在を認めて欲しくて
悪事を働いたり
不良になったり
日常でのストレスの発散がうまくできず
SNSで他人を批判したり
孤独で誰にも甘えることができない
入院患者さんが
病院スタッフにわがままを言って振り回したり
傷つけられると
当然人間なので誰でも傷つくし
そんな人と関わりたくないと思ってしまう。

だけどそういう人の
傷ついた心に寄り添って
介入することで
世の中から傷つける人や傷つける行動が
減っていくんじゃね？

それが本当に生きやすい時代なんじゃね？

と思う私でした☺️