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パンドラ・イン・ジ・オーシャン -19- #ppslgr

海面から差し込む光の中、桜色の人魚は両手にそれぞれ繋いだギリースーツ潜水機の二機を従えたままにヌバタマ・クイーンへと迫る!

「行くぜ二人とも!」
「ああ」
「いつでもいけますよ!」

Gの合図と共にロケットめいて上方へと投げ放たれた潜水機は、浮上するヌバタマへ食らいつくと手にしたニードルガンでもって残弾管理を投げ捨ててありったけの弾を撃ち放つ!

高速で飛来するニードルに針山にされながらもヌバタマは動きを緩めない!
海中の色が紺碧に変わり海面が近づいている事を告げる!機体の推進器を吹かして逆方向に全開!勢いが殺され減速する怪奇の女帝!

「次弾装填完了っと、次のはさっきのよりすっごいから誤爆しないようにね!」
「わかってらぁ!任せときな!」

二人のやり取りに次の一発の予兆を感じ取るとヌバタマと綱引き状態ながらもチェーンを伸ばして距離を取る。海面が近いとは言え今のイクサの状態で誤爆されれば一たまりもない所だ。

「アーッ!必殺技の名前考えてなかったぁ!」
「次にしようぜ次に!」
「わたし達戦闘する機会ほとんどないんだよぅ!」

ごちゃごちゃ噛み合わないやり取りが通信越しに届きつつも人魚は神話の海妖のそれにもにて顔を上げれば、歌う様に渦を巻くレーザーを放った。あれは熱エネルギーではなく、物理慣性を集約した一種の衝撃波とコンソール上に分析結果が表示された。

気泡を巻き込んで白く映るベクトル偏向レーザーは過たずヌバタマのど真ん中に直撃。怪異を巻き上げながら海面を突き抜けんばかりに吹き飛ばす!

「M・H!」
「ええ!」

オトヒメ達の一撃でちぎれたチェーンを引き戻しながら、後を追って急浮上するカルティマリナを迎えれば、背部推進器を吹かして彼女をオーバーヘッドキックでもってカタパルトの役割を果たして天高く打ち上げる。

白と黒の二体は共に海面を突破、水飛沫を挙げて空中に舞うがヌバタマが行動不能なのに対しカルティマリナは万全の態勢で槍を構え渾身の技を繰り出す!

「アビス・ネビュラ!!!」

上方のヌバタマ・クイーンに向かって放たれたその連撃は超人的視認能力の持ち主でなければまるで一瞬のうちに夜空に星がまたたいたかの如く、ヌバタマの全身に穴が空いたようにしか見えないだろう高速の刺突だった。

『ア、ア、アアアアアアアァァァアアアアッ!!!!?』

恐るべき耐久力で俺達の猛攻を防いできたヌバタマ・クイーンだったが、その身に受けたダメージが臨界点を超えて大気を地平線の彼方まで震わせんばかりの断末魔と共に四散。飛び散った肉片はマボロシだったかのように海に解け落ちた。

「ようやく終わったか……」

機体を波に揺られながらコクピットシート上で脱力する。深海と宇宙のどちらが過酷かは議論の余地があると思い知った一戦だった。

「しかし、この海域の海資源が復活するまで何年かかるだろうな」
「それについてはご心配なく、わたし達が可能な限り保護していたからね。君達人間が後先考えずに乱獲さえしなければ元に戻るよ」
「そいつは重畳」

ぷかぷか流されるままにオトヒメからの通信に応える。役目は終わったのでこちらは帰っても良いだろう。

【パンドラ・イン・ジ・オーシャン -19-:終わり:-20-へと続く

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