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5冊読了(12/3〜2/18)

1『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎

2『騙されてませんか』荻原博子

3『科学的とはどういう意味か』森博嗣

4『毒親』中野信子

5『水族館の殺人』青崎有吾


この5冊は読んだ順番に並べてありまして、今年最初に読んだ本は5でした。
それが2月18日でして、つまり1から4までは去年の12月までに読んだ本です。
なので結構あいだが空いちゃったんですよね。

2ヶ月間ぐらい本を読み進めていなかったんです。
その理由は勉強していたからです。
前回の記事でも書いた通りFP3級の試験を1月に受けまして、その以前1ヶ月間ぐらいは今まで読書していた時間を試験勉強に充てました。

そのおかげで、なかなか余裕の点数で合格することができました。
報われてよかったです。
これで合格できなかったら、僕の読書時間を返せーということになります。

そのせいでこの読書感想文の記事も時間が空きました。
前回書いたまとめの記事を抜いて、今年最初の記事が3月になってしまうとは。
まあ今後も思いつきで、何かの勉強などに読書時間を充てたり、いきなりnoteをやめちゃったりとかあるかもしれませんが、そうじゃない限りは投稿していくのでよろしくお願いします。



1は谷崎潤一郎さんの比較的マイナーな作品です。
谷崎さんの作品は去年読んだ『痴人の愛』に続いて二作目になります。
とても面白いです谷崎さん。

この作品は、主人公の庄造が、飼っている猫を溺愛するあまり、前の奥さんとも今の奥さんとも関係がこじれていってしまうお話です。
庄造は猫への愛情のかけ方が強すぎて奥さんへのそれが疎かになるダメ亭主なんですが、奥さんも奥さんで、猫に嫉妬して猫と旦那を引き離そうとしたり、前妻は自分に猫をくれとねだったり、三者三様の醜態が現れてお話が展開されます。
第三者の目からするといい大人がなにで揉めてるんだという感じがしますが、本人たちはいたって真剣で、その揉め事の中心にいる猫は何も知らぬ存ぜぬの体で、その様子が滑稽で面白かったです。

谷崎さん自身も猫が好きだったんでしょうかね。
よくわかりませんが、猫を溺愛している庄造の目線で描写される猫の姿や仕草は、きっとこの作者も猫への愛情が強いのだろうと想像できるほど繊細で、読者としてもその猫の姿を想像して可愛いなぁと感じてしまうほどです。
タイトルでも一番先に「猫」が来ていますからね。
猫が一番優先順位が高くて、この物語の中心人物は猫であるということでしょうね。


2は初めて読んだ荻原博子さんの本です。
経済ジャーナリストという肩書きの方。
いろんなメディアでよくお見かけする方。

お金の勉強になる本をと思って読んでみたけど、まあ少し勉強になったけど、少しだなぁって感じでした。
投資とか保険とかについて、よく宣伝されていて一般的に良いとされているものにも、こういう落とし穴がありますよ、っていうことを項目ごとに教えてくれます。

なんか強引にケチをつけて落とし穴を無理矢理作っちゃってるように感じる項目もあって、まあそれも広く認知されていない新しい知識だから良いは良いんですけど、なんでもかんでも否定しているような印象で、読んでいてあまり楽しくなかったですね。
まあ50代とかもっとご高齢の方向けの、お金の管理について悪いことに騙されないための注意喚起本としては良いのかなとは思います。


3はミステリィ作家・森博嗣さんの本です。
大変面白かったです。
森さんの本は読めば読むほど森さんを好きになります。
そしてその才能にいつも感服します。

科学的とはどういう意味かについて書かれた本です。
もう紹介としてそれ以上に何も言い添える必要がないくらい過不足のないタイトルです。
こういうところからして科学的ですね。

僕は科学が何かはっきりわからないし、それに必要な知識も少ないけれど、なんとなく物事の判断基準として、常に科学的な考えができる人間でいたいとは思っています。
何か行動を起こす際に、感情とか人情とか、文化とか歴史とか慣習とか、或いはスピリチュアルとかオカルトとか、そういうものを加味して優先順位を決めるのが人間ですが、それらのうちの非科学的なものにどれだけ惑わされないで行動を起こせるかが、科学的な考えを持つのに必要なマインドである気がします。

なんでもかんでもデータや数値を出して、物事の正誤を判断し合理性などを測っていると、時に感情や人間味が薄い人と見えたりすることがあると思います。
でもそうではなく、感情が豊かでそのことに情熱を燃やしているからこそ科学的な考察ができるのではないかという見方もできます。
科学的=無感情、みたいな思い込みこそ非科学的で、そういう偏見を持った人にこそ読んで欲しい素晴らしい一冊です。


4は中野信子さんの本です。
去年は中野さんの本を一番多く読みましたが、今年もたくさん読んでいくことになりそうです。

『毒親』とはセンセーショナルなタイトルです。
毒親というものの正体に迫り、そうなってしまう原因やメカニズムや種類、正しい付き合い方や対処法などを解説している本です。

「パンドラの箱を開けるような気持ちで、本書を書き始めました。」という一行から始まる序文からもわかる通り、中野さん自身もかなり心してこの一冊を書き上げたのだなぁと思います。
親子の問題を学者さんの観点から解説することが、いかにデリケートでセンシティブな内容になるかということが伝わってくるし、それを著者自身がわかった上でお書きになっていることも伝わってきて、やはり信頼できる作家さんだなと感じました。

著者としては、親子の関係性について悩む読者に対して救いや学びとなることが理想でしょうけど、その世界に踏み込んで科学的な見解を述べることが必ずしも良い効果を生むとも限りません。
むしろせっかく忘れられていた過去の嫌な出来事を思い起こされる結果にもなりかねません。
そしてそれは著者自身にも及ぶ影響であり、だからこそこの内容が「パンドラの箱」と形容され、覚悟を持って書かれたのだろうなと想像できます。

性別の違いや、精神的か肉体的かとか、自覚があるかないかとか、本書で紹介されている以上にいろんなタイプの毒親が存在するのだと思います。
「毒親」なんて最近になって作られた俗っぽい響きの言葉ですが、ネーミングによってそのものを広く認知させる効果はあると思います。
「パワハラ」とか「ジェンダー」とか「ソーシャルディスタンス」とかと一緒ですね。
何をしたら毒親なのかという定義は曖昧ですが、家族という狭く囲われたコミュニティの中で、そう呼ばれる存在が一般にあるということが広く認知されることは、その問題に悩む人にとって助けになると思います。
そして毒親という言葉とその意味合いを知ったからには、今後自分が子育てをする立場となる人は、自分がそうならないように意識するはずです。

この本の副題は「毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ」です。
親子関係で悩む人がいる限り、毒親という言葉と無関係でいられる人はいないのではないかと思います。
自分自身があてはまらなくても、友人が毒親育ちである可能性だったり、或いは毒親になってしまう可能性があったり、そういうことでコミュニケーションの取り方を考えていくのも、親子関係で悩む人を増やさない対策になるかと思います。
読んでいる間は、嫌でも自分の親のことを考えてしまって、いろんな感情が胸に浮かんできますが、それを恐れず、考えるきっかけとして、どんな人へもこの本を一読することをお勧めしたいと思いました。


5は青崎有吾さんの本格ミステリーです。
「裏染天馬シリーズ」の2作目です。
このシリーズは現在までに4作出ていて、『体育館の殺人』『水族館の殺人』『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』『図書館の殺人』と続いています。
デビュー作『体育館の殺人』の鮎川哲也賞から始まり、それぞれの作品がミステリー賞の候補となったり、年末のミステリーランキングの上位に入っている凄いシリーズです。

3作目の『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』だけ連作短編集となっていて、僕は刊行の順番を間違えて、『体育館の殺人』の次にそっちを読んでしまっていました。
『水族館の殺人』を先に読まなきゃいけませんでした。
でも物語の進行上そこまで問題はなかったのでよかったと思います。
でも刊行の順番通りに読んだ方が良いと思います。

たくさんミステリーを読んできましたが、このシリーズはどんなミステリー上級者もその高い評価に納得して楽しめるハイクオリティな作品群となっていると感じます。
風ヶ丘高校に通う裏染天馬(うらぞめてんま)くんが警察による捜査も難航するような事件の謎を推理するお話です。
今回は水族館で起きた殺人事件の謎を解きます。

営業中の水族館のサメ水槽に人が落とされて、サメに食べられてしまうという事件が起きます。
事故ではなく他殺であることが判明して警察の捜査が始まります。
容疑者はその時間にバックヤードで勤務していたスタッフたちで、でも全員にアリバイがあって捜査はすぐに行き止まります。
そこで以前、風が丘高校の体育館で起きた殺人事件を鋭い推理力で解決へと導いた、裏染天馬くんに協力を仰ぐことになって、彼による捜査と推理が始まるわけです。

人がサメに喰われる描写はエグいんですけど、それ以外はわりとライトなタッチで、個性的な登場人物のキャラクターが立つように物語が描かれていきます。
でも真相にたどり着くまでの情報収集と物理的な検証と、アリバイ崩しに至るまでのロジックはとんでもなく緻密で最高です。
どんなミステリー小説に対しても感じますが、これもまた、よく考えたなぁこんなこと、と感服しました。

『体育館の殺人』がデビュー作でその続編として出された今作が、前作のクオリティを全く落とさない出来であることで、もうこの作家さんへの信頼は絶対的なものとなりました。
すでに世間的に評価されている方ですので凄いんだろうなぁと認識していましたが、実際に作品を読んで、ああ本物だ、と確信するに至りました。
次作の『図書館の殺人』も必ず読もうと思います。

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