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ぼくらに、いったい何ができるのか。

2021年の3月。ピーナツを一粒も無駄にしないプロジェクトを発足しました。千葉県の落花生に対して販路を作り続けるだけではなく、何か違った形で支援ができないものか。チカラになることはできないか。そんなことを話し始めたところからのスタート。

『一粒も無駄にしないか。無理かもなぁ。』

心の中では、どこかそんな事も思っていました。だって葉や茎だけでなく、食べれない殻の部分も含めてだから。やるなら、とことんだ。ただ、その理想には辿り着かなくとも、まずは目指してみる。そんな歩き出しも大事だよな。と、まずは製造工場や農家さんの元を訪ねてみました。

今の世の中の状況だから、久しぶりに作り手の話を聞く機会となった6月。農家さんの種まきの風景を一緒に見ながら、久しぶりにみる落花生の畑はとても広大でした。さらに言えば、有機栽培だからなおさら大変そうに見えるところがありました。

今までだったら、『落花生の状況どうですかね?味は?量は?』そんなことばかりを気にしていた。一つの目標を掲げると、作り手に聞く質問まで変わっていきます。

『突然ですけど、殻…何かに使えないですかね?』

殻を何かに使うなど、食品業界ではあまり考えもしない事でした。だけど、聞いてみると『ちょうど、紙に織り交ぜて何か作れないか。話があったところで…』という思いがけない回答が。さらに、『葉っぱとか茎って食べれないですかね?』と聞いたところ、『ちょうど、お茶に…』ってそんなことある?っていうタイミングの良さに驚きました。

幸先よくスタートしたように思われた5月。だけど、いまだにカタチにしたって事がない。初心にかえりながら、今後の展開を改めて言葉にしておきたいと思います。

まずは自分でやってみよう。

千葉の落花生は、例年5月に種まきが行われる。最近は、暖かくなってきていることもあり、4月に蒔く農家さんもいるとのこと。温暖化というのも農家さんの頭を悩ます問題でもあります。

風の噂程度には聞いたこともあったが、『農家さんに種まきを早めて欲しい。』などとも言いづらいんだとか。なぜなら、お願いして落花生が実らなかった時が大変だからです。頭の中では、『早めに蒔いた方がいいんだよなぁ。』と思っていることも、農家さんを絡めると簡単にお願いできないところが、作付けの難しいところでもある。そうだよなぁ。

ぼくらがお世話になっている製造工場の池宮商店さん。ここ数年の落花生の原料状況に少なからず危機感を持ち、農家さんとの関係を強めてきた。そんな努力は、あまり表立って伝えられないが間違いなく原料が安定して供給されるのは、池宮商店さんの努力他ならないのです。

それを知ったのは、昨年農家さん周りを一緒にしたからであって、やらなければ気づかなかったことでした。

『今まで何をやってきたのか。』

そう思うこともあったが、農家さんとの関係を作ってきた姿を目の当たりにして、『何かできることはないかなぁ。』と思うようになり始めました。ただ、殻を何かに使えるようにすればいい。とか、いま流行りのフードロスをなくすには。とか、上澄みをすくったような取り組みではなく、もっと深掘りしていくことで、何か違う取り組みにもつながるのではないかと考えるようにもなっていったのです。

『まずは、種を蒔くところから見学させて欲しい。』

そんなお願いをしました。そして伺ったのが、有機栽培で落花生を育てて30年以上の杉本さんのお宅。10年近く前に伺ったきり、ぼくは来ていませんでした。そんなぼくの急なお願いにも、嫌な顔せず受け入れてくれたのは、素直に嬉しかった。

30年以上もやり続けているから、正直年齢のことなんか聞けもしないけど、『ちょっと種をうえてるところ動画撮りたいので、やってもらっていいですか?』と無理なお願いを簡単にしてしまう、ぼくでした。

Twitterにも動画をアップさせていただいたが、落花生も機械化は進んでいる。けど、有機栽培は機械化はできない。したとしてもそこまで労力が変わらないのだという。詳細が伝えられないのは、まだまだ知識不足です。

有機栽培を諦めれば、もっと人手もかからず時間も短縮できるが、杉本さんはこっちの道を選んでいる。この後の秋に収穫体験の話を伺ったときに聞いた『商品を作っているんじゃなくて、食を作っているんだよ。』という言葉。信念がある人の行動は、真似しようとも真似し難い。だって30年以上ですよ。

そんな杉本さんの姿を目の当たりにしたぼくは、余計になにかチカラになれるようにはなれないか。と考え、まずは大変だという草取りを7月に手伝おうとした。ただ昨年は、『間に合っちゃってるから気持ちだけ。』と言われてしまったのが残念でした。

今年は、6月の梅雨の時期でもお手伝いに行けるよう、今から心づもりをしていたりします。

なんだかんだで無我夢中。

昨年発足したこのプロジェクトは、もちろん一人で行動しているわけではなく仲間がいます。ぼくはどちらかというと、発信担当に近いところがあります。ただ、ぼくの『収穫体験を企画したい。』その想いに強く賛同してくれた仲間が、『収穫体験を受けてくれる農家さんに会ってきました。』と話を持って来てくれたのです。

仲間って大切です。

ぼくらとして、どちらかというと出来ちゃった落花生、つまりは『自分たちで作った落花生をどうせなら収穫してもらおうよ。』的な感じで、過去に収穫体験をしたことはありました。しかも、幼稚園生向けにとか。

今回は、そうじゃなくて農家さんの畑でプロが育てたもの。加えて、お客様からお金をいただく。という初めての試みが行われました。

企画するにあたって、農家さんに迷惑がかからないように。お客様に迷惑がかからないように。さらには、満足していただけるか。などなど、実施をする上でもスタッフ同士で話し合いを重ね、いざ募集!

でも、ちょっとビビリなので細々とスタートできれば。そんな思いも届いたのか、参加希望は4組6名の方。残念ながら1組2名の方は当日キャンセルになってしまいましたが、私たちとして一歩どころか大幅な一歩前進の取り組みとなりました。

受け入れていただいた農家の大久保さんはじめスタッフの方々には、改めてお礼をしたい気持ちがいっぱいです。さらには、参加していただいたお客様も満足いただけたようで、帰りがけには、なんと弊社直営店の加曽利房の駅にまで足を運んでいただけました。

こんな嬉しい気持ちは他にない。

会社関係者だけでなく農家さんを交え、さらにはお客様と一緒に体験する場面に居合すというのは、感謝という言葉以外に見当たらない私の語彙力のなさが悔しいところです。

思い知らされた言葉。

2021年の秋。この企画がはじまって、一番楽しみにしていた収穫の時期。有機栽培の杉本さんに、事前にお願いし連絡をまった。

『10月に入ったら、おそらく毎日収穫することになるから、いつでも来ていいよ。』

と相変わらずの快い返事だった。それでも近年、この収穫時期に結構な確率で雨が降る。しかも長雨だ。落花生にとって、この収穫時期の長雨は、やっかいもの以外の何者でもない。

畑から掘り起こし、少しの期間乾かしたりする場合、その間にカビが生えてしまったりするのだ。その近年の状況から、念のため2日間まるまる予定を空けて準備をしました。

今回、収穫のお手伝いを予定していたのは、大きい品種の【おおまさり】だ。おおまさりは、今の技術的にはあまり煎り落花生には向いておらず、ゆで落花生として食されることが大半です。

ゆで落花生にする場合は煎り落花生と違い、畑から掘り起こしてなるべく早めに収穫し、出荷していくことだ。茹でた後の食感が、少し日をおいてしまったものだと芯が残ったように、固さを感じてしまうからです。

ぼくとしても、本格的な落花生の収穫体験をお手伝いするのは、人生初めてのこと。このプロジェクトに参加していなかったら、おそらくやっていなかったと思います。

お手伝いをしに行った2日目。会社のスタッフと、はじまる前に談笑していた時の杉本さんの一言が、今でも印象に残り続けている。

『作っているのは、商品じゃなくて食ですよ。』

その言葉に、今までのぼくのやてきたことは、間違いではないけれど意識の甘さを感じた。世間では、オーガニックやら添加物やら食品ロスやらの言葉で溢れかえっていたりもする。その言葉をみるたびに、『そうだよな。何かしないとな。』とにわか知識的に、ひけらかしを行い、取り組んでいるかのようにも見せてしまっている。

あくまでも商品でも間違いではない。意識の問題だ。お客様からお金をいただく以上、手渡すものを商品として扱っていた。ただ、間違いなくそれは食品なので、人が口にするもの。体内に取り入れられるもの。その手渡すものを商品として見ているか、食として見ているかの違い。

この微妙な違いに見えることが、ぼくには天と地の差を感じてしまったのだ。

ずっと有機栽培というものに携わってこられたのは、この意識の差があったからだし、それを40年もの月日やり続けた方から言われた言葉だからこそ、感じた違いだったのかも知れません。

この収穫体験で、杉本さんの話を聞きながら行えたのが、ぼくにとって日頃あつかう商品に対する意識を変えさせていただいた、良い経験となったのは間違いない。

この商品ではなく、食という言葉で伝えていく意識を大切にして行きたいと感じたのでした。

未来に残したい風景。

この春先の種まきから収穫までを経験し、改めてよかったと感じています。有機栽培だけでなく、慣行農業で育てられている方も数名ご紹介いただきました。

もちろん慣行農業をやられている方にも、しっかりと落花生と向き合っているから、品質の良い落花生をお届けできているのも間違いないし、池宮商店さんが農家さんとの繋がりを大事にしてきてくれたからこその、これは結果だとも思います。

そんな農家さんの畑を伺う際に、多く耳にした言葉がありました。

『手間をかけられれば…』

という言葉。農薬や肥料を使うから、良いものができるわけでは決してない。やはり手間をかけた分だけ、良い土作りができるし、落花生が育つにも良い環境を作ることができる。

同行していただいた池宮商店さんも、

『畑の出来上がり具合が、全然違うんですよね。特に今年は…』

とおっしゃってました。その畑がこちら。

落花生の花が咲いた頃

見る人が見ると伝わるのですが、落花生のすぐ横に盛り土がしっかりと施されているのです。落花生は花が咲いた後、その花が咲いた部分からツルが地面に向かって伸びて行きます。このツルが土にしっかりと刺さることで、多くの実を収穫することができます。

さらに言えば、花芽が土からなるべく離れないように咲き誇っている状態が、多くの実を収穫できる理由にもなる。

こうした小さな一手間一手間の積み重ねが、収穫期が一年に一度しかない落花生の栽培には、とても重要なことだ。

そして近年よく耳にするようになった【生産性】という言葉。確かに、生産効率をあげていければ、農家さんにとってもメリットがある話だ。ただ生産効率ばかりに目が行きすぎると、落花生の場合は品質や味に直結してしまう可能性すら出てきてしまう。

その話に少し触れたのが、このnoteになります。

落花生にとって、風物詩的な存在でもある【ぼっち】作り。煎り落花生の風味をよくするには、欠かせないぼっち作り。別にその姿カタチが珍しいから作り続けているのではなく、味をよくするためにぼっちを作り、乾燥時間をつくる。

煎り落花生の味をよくするのは、この乾燥具合がどの程度行われていて、どういった環境で行われていたかにもよる。外で干したからといって、晴れとは限らない。しかも、全ての落花生を同じ天候状況下で、乾燥させられるわけでもない。

ただ、収穫した落花生を出荷したいのは、どの農家さんも同じ気持ち。だって自分たちの生活にも関わってくるから。先ほども書いたが、近年の長雨はとても厄介な問題で、この乾燥する時間や環境がままならなかったりするそう。

生産性ばかり追い求めれば、ぼっちなど作らずに少しばかり乾燥させてしまうことの方が、よっぽども農家さんには楽だったりもするわけなので、生産性が悪い生産性が悪いと嘆いてばかりだと、もしかしたら近い未来、このぼっちの姿さえ、めずらしいものになってしまうかもしれない。

伝え続けたい味。

ぼくは、販売という仕事に約10年以上携わってきました。その中で、ここ数年とてもお世話になっているのが落花生。

通販部として飛躍的に売上を伸ばすことができた、立役者的存在でもあります。今までも落花生工場には何度か訪れていたし、販売し続けて得てきた知識もある。と思い込んでいました。

昨年からはじめたこのプロジェクトのおかげでもあり、農家さんを何度も訪れるきっかけにもなっている。落花生のタネの植え付けから、伺うことで見えてきたぼくの知らない世界。こんなにも大変だったのかと。

育てるプロでさえ、よく実る年とそうでない年との違いが分からない現状だったり、天候や自然災害の影響で大幅に収穫量に影響が出てしまうことだったり。

『くれくればかり、いってたなぁ。』

まぁ販売する側だから、少しのワガママは必要なんですけどね。ただ知れば知るほど、知らない自分は生意気にも見える。反省した。だけど、反省してばかりでも仕方がないこと。だから、もっと落花生のことを知り直さなければいけない。と思い、また落花生を煎るところから見直したかった。

改めて落花生の莢がついたままでの、煎るという工程を見させて欲しい。とお願い。快く引き受けてくださるのは、いつも感謝でしかない。

そして落花生の煎ると言う工程を、見学した際のまとめたnoteがこちらになります。

【煎る】と言うたった二文字で表現されることの中にも、毎日接する人からすれば、さまざまな感覚が詰まっている。その日の気温、使う原料、煎る機械の調子、さまざまな要因で出来上がりの食感や、風味が変わってしまうことを知りました。

素人感覚でいると、落花生の製造感覚はこうなります。

落花生を用意する。 → 煎る機械に入れる。 → 決まった時間を設定。 → 時間がきて、落花生の出来上がり。

ざっくり落花生を煎る工程

こんな感じではあるのですが、煎り時間終了とともにカリッとした食感に仕上がらないのが落花生なんです。

煎りたてはどちらかというと湿気っぽい。ぐにゃっとした食感で、冷めていくと同時に、カリッとした食感が増していくのです。最終的なカリッとした食感と風味をターゲットに、落花生の中の色味をみて判断して仕上げる。

この煎る人の目がずれてしまえば、最終的な味も食感も変わってしまう。さらに言えば、落花生の粒の大きさも違えば、窯の中の火の通り方も違う。全体平均を狙った仕上げ具合は、『まさに職人技だなぁ。』と感心。

この長年培われてきた落花生に向き合う姿に、ぼくら販売する側の人は支えられてきたのだなぁ。と。ぼくは先代のことも知っていたので、先代が伝えたことを守り続ける人たちがいることに、改めて感慨深くなってしまった。

製造する現場を訪れるだけでなく、実際に作っている人の声を聞く大切さ。誰から教わったのか、何を大事にしているのか。それぞれの立場で、意識しながら向き合っているものを少なからず知ることができた機会となりました。

覚悟を決めろ。

最初は、千葉だから落花生でしょ。販売する側として何ができるのか。少なからず、ぼくらは何かできると思っていた。

だけど、半年以上経って振り返ってみたときに、カタチとなったのは落花生の収穫体験一回だけ。もっと行動するべきこともあったのではなかろうかと反省の念しかない。

どちらかと言うと、いつもの販売すると言うカタチに終始し、新しい取り組みへの一歩が後回しになってしまった現状です。

今思えば、覚悟が足りなかったなと。

販売する側としてだけみたら、貢献できているのかもしれない。けど、もっと多くの消費者の方に、落花生のことを知っていただく機会を作りたい。加えて、落花生のまだ気付かれていない魅力を、掘り出すようなことをして行きたい。

落花生の実、うす皮、殻、茎、葉っぱ。現状捨てているところもあれば、有効活用もしている。調べてみると、ぼくらは活用できてない殻の部分を、うまく活用している方もいれば、うす皮の部分から違う魅力を引き出そうとしている方もいる。

農家さんのことを考えて、生産効率をあげようと機械を開発している方もいれば、人が足りない時にお手伝いをしている人もいる。今までおきてきた自然災害や、環境の変化に加え、今後は働き手の問題や、需要の減少なども考えられる。

まずは、一つ目標にした収穫体験というものの実施、サークル活動で落花生に興味を持っていただく方を一人でも増やしていく活動をすること。さらには、中途半端になっている殻の使い道や、葉や茎の使い道の捜索に加え、新たな落花生の魅力の発見などなど。

振り返れば、やってない出来てないことだらけ。

一度歩きはじめた道を、簡単にあきらめるのではなく、やれることをやれるだけやる。地道に進んでいきながら、大きなチカラに変えていく。

お世話になっている杉本さん。

この杉本さんのように、農家さん含め携わっていただける方々の笑顔を、もっと増やしていけるような活動、2022年は目指して進んで行きます。

引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。

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