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10年以上販売してきて、無知と思い知った瞬間。

どんな事でも、そうなのかもしれない。20代で見る風景と30代で見る風景。もっと歳を重ねた時に見える風景。例え同じ風景だったとしても、意味や理由を知ることで『そうだったのか!?』と、自分の知識不足だったことを痛感することもあります。

今回の落花生工場への潜入。そもそも11月と12月は繁忙期になるため、あまり伺う機会もなかった。というより、もっと違うことにチカラを入れて来たのかもしれません。

『10年以上販売しているけど、出荷最盛期の落花生工場って初めての訪問になりますね。』

今までは単に若さという、何か勢い的なもので販売してきたように感じています。落花生というものを農家さんから納品してもらい、工場で水洗いし煎り選別して出荷。言葉にすれば簡単に捉えてしまう。言葉で言うだけだと二文字だけの事も、聞いていけば聞くほど、知っていけば知っていくほど、たった二文字だった事も100字、200字と増えていく。伝えたいことが多くなっていくと感じたこの一年。

今年の夏の生育状況から落花生のことを見て来たこともあり、愛着は今まで以上になっています。落花生の知識が少なからず増えた段階で伺った、年末の出荷最盛期の落花生工場のことをお伝えしていきます。

原料の入荷も最盛期。

少し肌寒くなり始めた11月。千葉県の富里にある弊社協力会社の池宮商店に伺いました。私たちの中では、池宮さんと呼ばれてはいるが本名は池宮城さん。池宮さんの製造する落花生を販売し始めて、早くも15年以上が経過しています。行くまで気がつかなかったのですが、伺った時に繁忙期の工場の違いに驚きました。

『えっ!繁忙期になるとこんな量になるの?』

農家さんが収穫したままの麻袋に入った落花生。1袋あたり約37.5kgにもなる袋がいったいいくつあるのか。この量を見て驚いた。

『すごい量ですね。これ全部倉庫にしまうんですか?』

その言葉しか出ないくらいの落花生の入荷量。3mを超え高さまで積み上げられている場所もありました。

いくつも積み重ねられた落花生の麻袋。

ここから原料を保管倉庫に積み上げ、必要な量を水洗いして選別していく。良い豆は良い豆で、この時点でも選別が行われ始めているが十分ではないという。

『まだまだ入荷してくるんですか?』

『入って来ますよ。ただ、今年は注文していた数よりも少ない。』と池宮さんはいう。

日頃から農家さんを訪ね、良い品質を維持するためにも手が足りなければ農作業に手を貸し、人手不足などの農家さんの負担となる部分を補填している池宮さん。農家さんとの苦労を共にするからこそ、良い関係が生まれると信じているから。そのことを綴った先日のnote。おかげさまで多くの方に読んでいただくことができました。

池宮さんが契約している農家さんは、千葉県内に93件にものぼる。それでも、年間の供給量が足りてはいないんだそうです。『農家さんとの関係をもっと強めていかなくては。』そう思ったのは、もう6年ほども前。

世間では、少子高齢化、業務効率化と言われる中、思うように進まない農業の現実を目の当たりにしながら、今後も農家さんの支援を視野に入れながら取り組んでいくそう。『なぜ、そこまで?』そう疑問に思う事もあるが、会話の節々に出てくる落花生への想い。『なぜ、ぼっちを作るのか…』『手間を惜しむと品質が…』農家さんと苦楽をともにするのは、美味しい落花生を提供する強い想いがあるから。良い作り手というのは、言葉より先に行動に現れてくると常々思うところがあります。池宮さんからもビンビンその分雰囲気が伝わってきます。

煎るに隠れた職人技。

池宮商店さんにある落花生の煎る機械というのは、2つのタイプが設置されています。一つは窯の中でグルグルと回りながら煎っていくもの。もう一つは、鉄網のような上に落花生を広げて、鉄網自体を手の平でグルグル回すように落花生を転がしながら煎るタイプの機械。

先日、殻をとった落花生を煎る機械のこともレポートしていますので、こちらも参照していただければ幸いです。

どちらも一長一短あるらしいが、池宮さんでは窯タイプの煎り機は莢が付いたままの落花生を煎り、鉄網の上でグルグル回すタイプは、素煎りと言って殻をとった落花生を煎るときに使用している。

今回は、落花生を殻ごと煎る機械を紹介をします。

落花生を煎る窯。

写真では中々伝わりづらい部分もありますが、煎っている最中は大きな音で会話が声が通りにくい。加えて窯の温度は120℃から150℃にもなります。今では窯の上に排気の設備を作ったので、あまり感じない程度の温度になっているという。この排気設備が落花生を煎る作業にはとても重要で、窯の温度の安定に加え、室内に充満する落花生から出る粉末を吸い取ってくれるのだそうです。

粉塵が舞う中で作業していた名残で、製造担当の方は今でも防塵マスクをして落花生を煎っていました。

防塵マスクをしながら煎る担当者。

落花生を煎る時に、時より窯から落花生を取り出しては割って見て何かを確認している。一度ならず、二度、三度と。気になって聞いてみました。

『何をみているんですか?』

『落花生の色味を見ているんです!』

少し大きめの声で話さないと伝わらない環境で、落花生を煎るときのコツみたいなものを伺った。

煎り具合を確認しているところ。

色味を見ているのは外側の殻の色ではなく、落花生を割った時の中の色味ということ。煎り始めてから60分ほどが経過しているそうで、

『これが、そろそろ窯から出す色味です。』

そう説明されても違いがあまりわからなかった。そのくらい落花生の微妙な変化をずっと見続けているのがその説明だけで伝わってきました。殻を割って色味をみる落花生も、窯に入れた落花生の中で少なからず選びながら見ていて、どれでも良いというわけではない。その理由は全体的な品質。

『サンプルで見る落花生は、大きいものを選ぶんですか?』と聞いたところ、『いえ、大きいのでも小さいのでもなく、平均した大きさのものを選んでみています。』とのこと。

ちょうど中間のサイズを見ることで、大きい落花生と小さい落花生の差を同じような仕上がりに持っていくようにしているのだそう。

ただ同じ仕上がりと言っても、頼りになるのは自身の目の感覚だけしかない。なぜなら、煎りたての落花生ってカリッとした食感ではなく、どちらかというと湿気っぽい仕上がりになります。落花生が冷めていく段階でカリッとしていくんです。

それがどの程度か知るために、煎りたての落花生が窯から出てくるのを待った。落花生が窯から出てくる時はこんな感じです。

窯から出て来た落花生は、最低でも100℃近くは間違いなくあるのだと思われます。手を差し伸べると『熱いですよ!』と言葉を投げかけられた。

『大丈夫っす!』

と言いながら、顔には『アチッ』って感じが出ていたと思う。確かに熱かった。出来立ての焼き芋を両手で転がすように、落花生を両手で転がし冷めるのを待った。そして出来立ての落花生の殻を割って、まじまじと見つめてみた。

煎りたての落花生。

渋皮の色味は、いつも見ているものより淡くうつり、キレイな感じがした。そして早速、その煎りたての温かみのある落花生を口にしてみた。

『うん。確かに湿気っぽいですね。』

その場では湿気っぽいと言ったが、『湿気ている』とお客様からお申し出をいただく落花生より、はるかに食感が柔らかかった。落花生の仕上がりというのは、この後の選別前に1時間程度おいておくことで、みんなが知っているカリッとした食感に仕上がっていくそう。

この1時間後にしか分からない食感を、煎り途中の色味だけで見るのは、間違いなく長いこと時間をかけてないとできないことだし、出来上がりがどの程度の食感になるという照らし合わせまで行ってないと、自信を持って答える事もできない。

知れば知るほど、その奥深さが伝わってくる。

思えば農家さんの作る落花生は、農家さんによって質も違えば大きさも違う。さらには、同じ窯でも温度が日毎で変わる。ガスで調整する火加減は、窯の温度を20℃から30℃も変えてしまう。さらに言えば、窯が温まりきる昼と朝一番でも仕上がり時間が変わって来てしまうのです。

この条件が毎日違う中で、同じような食感に仕上げるのは、毎日窯の前に立ち続けることでしか、養うことができないなぁ。と思いながら、じっと作る人を見続けていました。

断片的な記憶。

私が、落花生工場をこうやって訪ねるのも、はっきり言えば久しぶりなこと。それまでは売るに専念というより、どうすれば自分の部門の売上を伸ばすことができるかばかりを考えていた。それが私の仕事なので、当然と言えば当然のことです。

ただ、時間の余裕ができてきたから改めて。それも一つの理由としてありますが、通販を担当するようになって、よく耳にする言葉が頭から離れないのです。

『千葉の落花生が、近くで手に入らなくて。』

この言葉を耳にするようになり、日本各地には同じように千葉の落花生を好きでいてくれる。食べたいと思っている人が多くいるのではないか。と強く思うようにもなりました。そして落花生の収穫量が減りつつあり、さらに少子高齢化の波が間違いなく影響してくるだろうということ。この社会問題に対して、『何かチカラになれることはないだろうか。』そんなことを考えていたら、『とりあえず農家さんを訪ねてみよう。』と動いていました。

農家さんの話も製造工場の池宮商店さんのお話も、10年ほど前に間違いなく聞いていた話。あの頃の私は、どこか知った風に見せているだけで全く知らなかったのだと改めて思い知るきっかけにもなったのが、今回の工場見学。

その一つが、落花生煎り機の上にある排気口になります。

落花生煎り機の上に設置された排気口。

これは約10年ほど前に、工場を訪ねたときにはなかったんです。当時、池宮さんが言っていたのが『今度、あそこに排気設備を新たに設置するんです。』と言っていた記憶だけはありました。

当時、無知な私は『そうなんですね。』と気にも留めていなかったが、それは煎っている最中に、一度も足を踏み入れたことがない証拠でもあるなぁ。と思い知った。

あの排気口ができたことにより、窯の温度の安定度が増し品質も安定するようになった。さらには、防塵マスクがいらないくらいに室内をキレイに保てるようになりました。とは、先ほど画像にも出て来た担当者。

落花生は農家さんが育てて、工場で洗って煎る。言葉にするとこれだけですが、これはとても要約しすぎていて、夏場から最盛期までを通じてはじめてわかったことがあった。

まだまだ、無知でした。

収穫体験から、工場見学を通じて改めて知ることばかりで、自分自身の知識というか情報の得方も見直さなければいけないと反省をした12月。

自分がどこまでできるか分からないけど、まずは目標にしている有機栽培の落花生農家さんの畑での収穫体験。年始早々にご挨拶に伺ってきます。夏場には、綺麗に広がる落花生畑にできるように種まきのお手伝い準備からはじめていきます。

夏場の落花生の花。

まずはこんなキレイな花を、たくさん咲かせてみせますよ。

応援のほど、よろしくお願いいたします。

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