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目利きの先代。味を守るためには、人を見る目も大事。

この仕事をはじめてから約18年。落花生を販売するようになってから、『もうそんな年数が経過していたのか。』と改めて感じた。そんな年数販売してきたにも関わらず、最盛期の落花生工場に伺うのは初めてと言うのは、少し恥ずかし気持ちにもなりました。

年を重ね曲がりなりにも知識が増えての工場見学というのは、見る目も変わるんだな。と今回伺った事により感じ、改めて様々な商品をもう一度、振り返る意味でも見ておかなければならない。お客様に伝えていくには、幾度となく伝えていくのが、私たちの仕事だと常日頃言っていたけど、言っているだけだった。

工場にある機械の大きさ。維持の仕方。今までは、味とか見栄えばかり気にしていたような気がします。見栄えを維持することは、もちろん大事だけどその中身を維持するのはもっと大事なことなんです。

知っている風を装うのではなく、知ることが大事。でも私たちは、自ら携わるわけではないので、本当に知ることというのはないのかもしれない。そんな中でも、作り手との関係を大切にし、その人を知ることで、伝える内容や伝わる内容も変わってくるのだとも思います。

今回は、今年出来たばかりの新豆入荷で、慌ただしい落花生の工場に伺ってきました。

そもそも落花生って。

そもそも落花生というのは、畑で作る農家さんがいて、収穫された落花生を煎ったり茹でたりする工場があって、販売をする私たちがいます。農家さんが、自身の畑で収穫された落花生を煎ることもあります。

落花生は殻ごと煎るさや煎り落花生と、殻を割って中の実の部分を煎る素煎りと呼ばれる落花生があります。莢に入ったまま煎るのにも理由があって、殻が水分を吸い取ってくれる効果もあり、殻がない状態に比べると食感がカリッとしていて美味しく感じます。

ただ現実問題、『殻は食べれないから、ゴミになるので。』と殻付きを嫌う方もいらっしゃるのは、事実あります。そんな方にオススメするのが素煎り落花生と言われる、殻を取った状態で煎る落花生です。

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こちらが、素煎り落花生の原料となる殻を割った状態の落花生です。火を通してないので、このまま土に植えると落花生が生えてきます。主に素煎り使われる落花生は、2等級や3等級のものになり粒も大き目です。

落花生は、生のまま食べることはできません。煎ったり茹でたりすることで、はじめて口にすることができます。この殻を割った落花生たちに、火をいれていくところをご紹介していきます。

煎るに隠れた、職人技。

素煎りを任されている職人さんは、落花生の工場の仕事に携わってから約11年程だそうです。入社したての頃から、先代に目をかけられていたようで、特に素煎りの落花生に関して手取り足取り、煎り具合や温度の感覚など、間近で教わってきたそうです。

煎るという二文字の中に、実は色んな技術があって私自身そのことに気がついていませんでした。今回改めて話をうかがった中で、その事に気付かされました。

煎るというのは素人ながらに想像すると、それは例えばフライパンを火にかけて、炒めるようなイメージでしかありませんでした。卵を焼くでも、肉を焼くでも火が通れば、そのまま食べることができる。その状態にしているだけ。そんな簡単なものに捉えていました。

ナメてますよね。

ただ、実際の煎って商品にするという事は、同じ品質、同じ風味、同じ色味に仕上げていくという事が必要。考えてみればわかるのですが、たまごを焼くでも焦げ目が付くか付かないかとか気にした事がない。

そもそも、ちょっとした料理と一緒にして良いものかどうかもある。なぜ機械化をしていくのか。それはいつも同じ味、品質に仕上げる必要があるからに他なりません。

殻を取り除いた落花生の煎る時間は、10分から15分だそうです。これは、1日の中でも仕上がり時間が異なります。理由は、朝一番に火入れを行うと、まだ熱しきれていないので時間がかかり、運転を続けていくと熱が伝わりやすくなるので、仕上がり時間が早くなります。

もちろんこれは、原料となる落花生の粒の大きさによっても異なってくるので、一回一回違うと言っても過言ではありません。たった10分の中でも、その違いに影響される煎り具合をコマ目に気にして、そして見極めながら徐々に仕上げていくそうです。

note品質チェック

煎り途中でもチェックしていきます。まずチェックは、渋皮の色味ではなく、あくまでも中の実の色合いを見ていきます。ときには、中の状態を割って見る必要があります。落花生は粒が大きいものではないため、そのチェックはとても細かい作業となります。

落花生の色味を見間違いなく、同じ品質にしていくっっていうのは、やはり難しいモノなんだな。という事を今回は、とても教えられました。こうして煎りあがって窯から出てきた落花生は、落花生に含まれる油分の兼ね合いもあって、とってもツヤツヤして輝いていました。

note-出来上がり

出来立ての味わい。

窯から出てくれば出来上がり!かと思いきや、まったくそうではありません。窯から出てきて、特に時間を決めてはいないようですが、大体10分から15分ならして置いておきます。

煎りたての落花生というのは、実はまだ食感がカリッと仕上がっておりません。どちらかと言うと、フニャっとした食感でちょっと湿気ってるような感じです。

出来上がりって何でも美味しいイメージがありましたが、落花生の場合は出来上がりではなく、その後10分程度置き冷めていく段階で、カリッとした食感に仕上がっていくそうです。

また不思議なもので、人肌で少し温もりがある程度の温度で、出来上がった落花生を袋詰めしていくんだそうです。こうして余熱をコントロールして出来上がる落花生は、機械化しすぎては失われてしまう味なんではないかと思いました。

note煎り具合

煎りたての落花生と、時間をおいた落花生を割っていただき見比べさせていただきましたが、素人目にはさほど違いがわからず『何が違うんだろう。』と、想うくらいの色味でしかありませんでした。

きっとこう言う細かな違いに気が付ける人が、先代が作り上げた味を守っていくためには、必要な能力でもある。と思いました。それに加えて、デジタル化と耳にすることも多い中で、デジタル化では表現できない人間的なアナログ的判断で作り上げる味が、アナログ時代を生き抜いてきた先人たちの味を守っていく事にも繋がっていくんだろうなぁ。なんて、作業する姿を見ながら思っていました。

気にしている事は?

先代が目にかけてくれたこともあって、今では煎りの工程を任されている職人さんに『先代から教えられたことで、気にしている事は?』と伺ってみました。

少し戸惑いながらも出てきた言葉は、『窯から出した時の色と、袋詰めする前の手をかざした時の温度。』だそうです。

落花生の煎ると言う工程は、落花生屋さんに取っては心臓部と言っても良いところ。この微妙な温度、色味の違いを守ることが今まで作ってきた味を守り続ける事にもつながっていくんだろうな。

教えられたことを、そのまま実直に守り続ける。これは簡単そうで、意外とできないこと。取り組んでいく中で、忘れてしまうこともあれば、自身の考えを加えてしまうこともあります。

もう教えを聞こうとしても聞けない声。だからこそ、教えられたことを守りやり続けられる人。味を守っていくためには、仕組み作りや教えに力を入れていくのはもちろんですが、人の見極めも大事なんだな。と、今回の工場見学で学びました。

note煎りきらめき

引き継がれる落花生の味を私たちも感じながら、引き続き伝え続けていきたいと思います。

引き続き、応援のほどよろしくお願い致します。

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