033 | 自転車の記憶(鎌倉にて 2)



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鎌倉まで来た目的はこれ、神奈川県立近代美術館鎌倉館。この2016年1月いっぱいで閉館した。




聞けば同館は1951年に開館した、日本で初めての公立の近代美術館との事。竹橋の国立近代美術館の前身が京橋に開館したのより早いのだ。が、私が数年前に訪れた時、既に閉館が決まっていた(気がする)。その閉館がいよいよ迫っていた。

最後の企画展は「鎌倉からはしまった。1951~12016」。コレクションと共に同美術館の誕生や歴史を紐解く、この時はそのPART3 「1951-1965」。本当に最後の展示だ。




上野界隈に比べれば小さなミュージアムだけど、鎌倉の杜の中にある事もあり、私にとってはオアシス的な好きな場所だ。

企画展も大袈裟なものがブチ上がらず、鎌倉観光のついでに寄るのに良さげな、小粋なものをやっていたし、実際私はいつもそういう風に、この美術館に寄っていた。たまたまかもしれないけど、観光シーズンの土日でもぽつりぽつりとしか他に来館者を見なかったのも良かった。

今回はとても混んでいるけど、折角だからちょっと並んでカフェにも寄る。




これまで私が鎌倉館を訪れるのは夏ばかりだった(自転車で)。カフェには空調がないが、テラスからサラサラと風が抜けて涼しかった。今回は逆に、テラス開け放ってるのに太陽燦々で暖かい。冬にも来れて良かった。


2011年の夏に訪れた時の画像。同じようにコーヒー頼んだ筈だけど、ボトルで置いてくれた冷たい水がやけに美味しかった。




テラスの下は吹き抜けの中庭になっていて、その外は日本庭園風の池が広がり、そのまま鶴岡八幡宮につながっている。立地的には八幡宮の境内を間借りしたような佇まい。


同じく2011年夏の画像。春~秋は一面蓮池になる。ジャングルみたいだけど、炎天下でも日陰の吹き抜けは、緑と池面の温度低減効果もあり至極涼しかった。




吹き抜けの屋外彫刻(一部撮影可)。




渡り廊下の向こうの新館部分は閉鎖されている。2011年の夏も既に閉鎖されていた。震災時に破損して、耐震性に問題がある事が確認され、展示使用が中止されたのだ。そういう事も閉館を決定させるきっかけになったのかな?




吹き抜けの写真のポストカードと、同館オリジナルの鉛筆を1本買った。また、16Pの冊子を頂いた。「たいせつな風景」と題されたそれには、閉館に際し内外のアーチスト達から言葉が寄せられている。

その中で、画家の伊藤靖子さんは同館を "記憶に触れる空間の質をもつ美術館" と称している。私が此処を気にってたのは、僭越ながらこれに似た質感を感じたからかも知れない。
インパクトがあるとかとは違う、具体的な印象が静かに残る空間だったし、その空間で見るから作品の印象も深化する。

設計した坂倉準三はさぞ心を砕いのただろうし、以後も鎌倉という環境が更に相乗的に作用してたに違いない。もちろんミュージアムは箱であるだけではない。学芸員さんと作品たちがそういう時空を循環させてきたのだ。 来れて良かった。

http://www.moma.pref.kanagawa.jp/public/HallTop.do?hl=k

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