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読み切り物語

14
ショートストーリーです。
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記事一覧

Conversation at the cafe. -カフェにて−

Conversation at the cafe. -カフェにて−

「え、それって人の顔が何かの食べ物みたいに見えるってことでしょ?で...でた~ミサの定期的変人発言、今月でもう3回目!」

「ちがうよ~、それじゃあヒエロニムス・ボッシュの絵みたいじゃない。あたしが言いたいのは、もしイメージするならってことよ。前から歩いてくる人の顔がすべてそういう風に見えたらあたしだって頭おかしくなっちゃうよ」

「なるほどね~(ヒエログリフ…って誰だっけ)じゃあ、あの人の顔

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A piece of sinful -罪深き一切れ-

だ、誰だね、誰かそこにいるのか?

「.....」

誰かいるのか?こんな夜中に香ばしい匂いを漂わせおって。け、けしからんぞ!

「......」

一体どこから入ってきたんだ?け、警備の人を呼ぶからな!

「......」

なんてことだ、全粒粉のパンを一切れ鉄製のフライパンでこんなにたっぷりのオリーブオイルで、か、軽めに焼きおって!
おのれ、罪深いぞ!

「.....」

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−幻奏家たちの食事−  #1

−幻奏家たちの食事− #1

.............「Midori、今日のコンサートは素敵だったぞ、前よりもな、音の伸びがちょうどよくてな、スピッカート*の音がほら、琥珀みたいにきれいに光っているようだったよ。」

「ほんとMidoriちゃん。素敵だった。すべてのパートが完璧だったわよ!」

「おじさまもおばさまもありがとう、わざわざBerlinまで見に来てくれるなんて思ってもいなかったの。そうね、今日のコンサート

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-幻奏家たちの食事- #2

-幻奏家たちの食事- #2

「おお、Midoriが選んだ場所にしては珍しいじゃないか、でも素敵なところだね」

「ええ、いつもおじさまと外国でお食事する時は、床に赤い絨毯が敷いてあって、テーブルにゴシック調のロウソクが立ててあって....うふふ、でも最近はこういう場所にも来るの。オーケストラのメンバーの方が連れて来てくださった時に知ったのよ。いろんな職業の人も来るから、話をすると面白いし、店員さんももちろん英語が話せてね

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-幻奏家たちの食事- #3

-幻奏家たちの食事- #3

「私は小説家をやめようかと思っていたんだよ。長年信頼している出発社の友人にもそれは話したんだ。」

「そうなのね。でもおじさまは一度原作の映画化にも携わって、成功してるじゃない。なんていうか、私が言いたいのは、他に”そういう”仕事がしたかったからなの?」

「わたしが今までやってきたことは形が違えどすべて一緒だと思っている。要はね、私は ”幻想” を扱う仕事をしてきたんだ。それを全部やめて

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-幻奏家たちの食事- #4

-幻奏家たちの食事- #4

「おじさま、すっかりごちそうになってしまって申し訳ないです。でもありがとう。」

「いいよ、コンサートは招待してもらったからね。」

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Zebra zone
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「数日後に、嵐が来るようだね。
例えば大きな木が倒れるとする。それを描写するとしたら、どんな角度で、木の種類は、葉っぱの色は、音はど

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それを貴方達は「キボウ」と呼ぶ

それを貴方達は「キボウ」と呼ぶ

「その時だけ現れるんだね」

わたしはいつ現れようなんて思ってないわよ

「なぜそんなに美しくなったの?」

あなた私がそんなに美しいと思っているのね

わたしはそんなこと考えたことがない。

ただね、どのような‘方向’にいいけばいいか分かってるの。

あなたたちは時々キボウという言葉を使っているけど、私は最初その言葉も知らなかった。

だって私はすでにそれを知っているんだもの。

気が

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Bach:Cello Suite 6 Gavotteのための覚書

Bach:Cello Suite 6 Gavotteのための覚書

中世のアムステルダムかブリュッセル、またはドイツの地方都市かもしれないが、石畳の小道とそれを取り囲む赤褐色の石造りの家並み。私は馬にまたがってその小道に迷い込んだ一人のはぐれた騎士だった。おそらくそこは、私の知っている土地ではないのだと認識し始めている。私は馬をゆっくり歩かせながら狭い小道をカツカツ音を立てて進む。

私は来たこともないこの町になぜか懐かしさを覚えている。
だが具体的な記憶がない

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A something nutty in our head

A something nutty in our head

A: ねえ ミックスナッツの中で何が一番好き?

B: え?このタイミングでその質問どういうことだよ。
んん、なんかこのまま答えるのは癪だからそっちからまず、どうなの?

A: 私すでにこれ!っていうのがあるのよ、でも今はいわない。

B: なんだよそれえ…んん、俺アーモンド。

A: えー、王道だね。でっかいトウモロコシとかいうのかと思ってた。 ねえ、私のなんだと思う? 当てたら明日大き

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〜未来を予測する

〜未来を予測する

浜松町 浜松町です。
ドアが閉まります。
次はー...えー次は......

“教えません”

えー まだ教えたくありません。
車内で次の駅を知っておられる方、お隣の方に耳元でスコットランド訛りで、そっと教えてあげて下さい。

次の駅を出発する際、答え合わせを致します。

ステージの後で

ステージの後で

...あなたさあ、あそこの歌詞...一番歌の中では盛り上がってキメるとこでしょ、でも私わかるんだけどあれ、あなたの本当の気持ちじゃないでしょ?

ちょっとビジネスがかってるというか、わかりやすく狙ってるとこっていうかぁ。

その辺で一番歌の中で「愛」についての内容が濃くなるのよ。でもあなたは実はその部分が出すほどの愛には背いてるというか、そっけない態度なのよ。

いやもちろん歌唱の出来は最高だ

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“田町派”の男

“田町派”の男

あなたのバッグ、いいですね。

新しい感じじゃないけどいい味出してる。

ああ、いや私怪しいもんじゃありませんよ。

私もあなたと同じ「田町派」でしてね…。

おや?けげんなお顔をなさる。

わかっているんですよ、あなたは浜松町では乗り換えたくないんだ。

この青い電車のほうが昼間の快速運転の間、どちらかの駅で各駅のヤマノテに乗り換えにゃならんでしょう。

2駅とも同じように階段を上っ

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男の中の魔女 -At the Some Dialogue-

男の中の魔女 -At the Some Dialogue-

A : 自分の内的なリアクションや大小の感動を人に伝えるのって簡単ではないですね。

B:1日の中で、まるで写真にとっておさめたときのような印象が心の中で何回も残るんです。人に説明するときはその印象を最もシンプルな見出しのようにして相手に伝えます。

A:そこで相手が少しでもわかってくれる部分があれば会話を掘り下げることが出来ますね。

B:そうですね、そこからが勝負なんです。ところで印象というの

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Restaurant 〜夕食と友と記憶~

Restaurant 〜夕食と友と記憶~

そう、私はさ、最近思い出したのよ。
以前本当におかしくなるくらい大好きだった元彼とよく、話題になってる行ったことないレストランに行ってたこと。
でねえ、よくその店の売りの部分をさ、本当だー、本当にお肉でかい!とか言って楽しむのと同時に粗探しすることもやってた。

接客の人の言葉遣いがちょっと癪だとかさ、ちょっとグラスが汚れてるの見つけたりとか、他のお客さんの格好見つけてね、ああ、あれちょっと不倫

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