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男の中の魔女 -At the Some Dialogue-

A : 自分の内的なリアクションや大小の感動を人に伝えるのって簡単ではないですね。

B:1日の中で、まるで写真にとっておさめたときのような印象が心の中で何回も残るんです。人に説明するときはその印象を最もシンプルな見出しのようにして相手に伝えます。

A:そこで相手が少しでもわかってくれる部分があれば会話を掘り下げることが出来ますね。

B:そうですね、そこからが勝負なんです。ところで印象というのは無数にあると思われるのですが、世の中にはどこかで役に立つ、というか利益にも結び付くような印象の立て方、みたいなものがもてはやされがちではないでしょうか。

A:ううん、といいますと?

B:あるあるのようなものでしょうか。ある目的の中で、決定的で論理的で有効な言葉の様式のようなものが着火剤になりそこから派生的にどんどんいろいろな印象の言い回し、が生まれてくるわけです。ある種の真実があるからこそ派生するものが出てくるわけですが、ある時点でそれと世界全体とを混同してしまうことが起きてくる。

A:具体的な説明が必要かもしれません。

B:例えば、ロケットの開発は簡単ではありません。英語でRocket science とは“とても難しい事” の同義ですが、ある時点でロケット開発を圧倒的に促進する1つの革新的技術が生まれたとします。そうすると皆そこから様々なタイプのロケットを開発するかもしれません。
規模も国から民間、個人まで、目的も観測、調査旅行、長距離にある天体への物資の受け渡し。
ただそれを促進した技術の根幹のアイデアというものが、例えば地球環境破壊のダメージの回復を目的とした技術を支える哲学の中でむしろ軋轢を生む可能性もあると思うのです。
あまりピンとこないかもしれませんが、感覚の伝染が全く違う世界の感覚への不全を正当化してしまう可能性について私は懸念しています。

A: なるほど。

B: ところで魔女を見たことがありますか?

〜突然のことだったけど先生は話題を変えたんだ。今日は私の不定期で主催する対談のイヴェントで以前から呼びたかった有名な心理学専門の先生に来てもらっていて、私個人として物を書いたりアイデアを思いつくような血肉になるような視点をいただけるし、これを文章化するに当たって媒体先も読者も大いに喜ぶであろう内容だった。内容は突如変わった。しかしへんな感じはしなかった。もともと先生は独特の視点を持っていらっしゃった。ずっと同じ空気の中であって何も途切れていないという感覚があった。例えば午前四時くらいの誰もいないホテルのロビーの片隅で何か秘密ごとを囁きあってるような、覚めてもいないし眠ってもいないような感覚だった〜

A(私): おとぎ話の中のようなものでしょうか?

B(先生): そうですね、でも私が意味するのは内在する魔女です。どこかの森にもいるかもしれませんが、どちらかというと私たち自身の中で見かけられると言えます。しかしこれは幸か不幸か、私たちの持つ何かしらの能力を理り詰である地点までくると見えるものだと考えています。

私の言葉でたんてきに申しますと、魔女というのは、割り切れない存在です。

魔女はおとぎ話でもそうですが私の認識でも一緒で、危険な世界への案内人であり無垢な人を貶める存在でもありますね。

私: その通りです。

先生: しかし私はこの魔女の存在こそが、ある意味幸福の、いやここは英語のハピネスという言葉のほうが良いかもしれませんが、その鍵を握っていると考えています。

私は懸念というか、少し情けをかけたいとさえ思うのですが「魔女が住まない人」もいるのです。

私: それはなんだか、そちらの方が健康的なイメージはしますが。

先生: 普段の生活ではそうでしょう、しかし魔女というのは自分の立ち位置やアイデンティティを示唆する存在でもあります。先程、理りという言葉を使いましたが、理詰の世界の先に魔女がいないとその人は自分の引き際や理りを詰めている目的というものがなんなのかわからなくなってしまうのです。

私: なんとなくおっしゃっていることが分かってきたように思います。

先生: いや、実をいいますと私も先程言ったその人が本当に魔女を持っていないかというのはわかりません。というのは大小魔女の素質というものはほとんどの人に見受けられますが、ある人々は意識的にどこかの人生の中でそれを押し込めてしまった可能性もあるからです。

私: そのような素質を殺さずにうまく付き合うような形になれば人生はもっと豊かになるとお考えでしょうか?いや、こういった質問は典型的というか、適切ではないかもしれませんが。

先生: 魔女をなるべく自分の中であいまいにしないで、理の中で働きかける自分とそこからどうしても割り切れなくてあふれ出してしまう魔女の部分、そこを自分で把握しておくことが大切なんです。どちらかを自分の固定概念や恐怖によって取り去ろうとしてはいけない。

魔女は何処の世界にもどこの時代にも存在すると私はおもいます。少なくとも人の住む場所ならね。

私: 先生、今日は遠く(魔界)から出向いてくださりありがとうございました。

先生: ありがとうございました。

<部屋の角の常緑の観賞用植物>

#Shortstrory #対談 #魔女

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