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−幻奏家たちの食事− #1

.............「Midori、今日のコンサートは素敵だったぞ、前よりもな、音の伸びがちょうどよくてな、スピッカート*の音がほら、琥珀みたいにきれいに光っているようだったよ。」

「ほんとMidoriちゃん。素敵だった。すべてのパートが完璧だったわよ!」

「おじさまもおばさまもありがとう、わざわざBerlinまで見に来てくれるなんて思ってもいなかったの。そうね、今日のコンサートは今までの中でも一番楽しく弾けたかもしれないわ、でもね、コンサートの前一週間は、激しい練習はなしで、ゆっくりしていたの、それが逆によかったのかもしれない」

「みどり、来週の木曜日がお前の誕生日だろう?好きなものなんでも買ってあげるよ」

「ありがとうおじさま。いま私科学の本に夢中なの、来週お仕事が休みの日があれば一緒にMallの中の本屋さんに行きましょう」

「おお、いいとも。もうこの街のことだったらMidoriのほうがよく知っているかもしれないな」

「うん。素敵なレストランの場所も知っているの。Bode Museumのちかくで、フリードリヒ道から少し歩いたところよ。おじさまの小説のお仕事は、今は執筆中なの?」

「ああ、そうだとも。締め切りはまだ先にしてあるから時間はゆっくりあるよ。いやあ最近な、すごく疲れてしまってな。」

「あなた、それはまだここではいいでしょう。今日はMidoriちゃんの挨拶なんですから…」

「おじさま、おばさま。今日は見に来てくれて本当に感謝しているわ。もう楽器を片付けて出なきゃいけないの。来週またゆっくり話しましょうよ。」

「そうだな、気をつけておかえり」

「ありがとう」

つづく

*スピッカート:ヴァイオリンなどの弦楽器の奏法の一つで弓を跳ねさせるようにし、音を小さい粒になるようにすること。

*写真/Picture : Instrument museum Berlin

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