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-幻奏家たちの食事- #4
「おじさま、すっかりごちそうになってしまって申し訳ないです。でもありがとう。」
「いいよ、コンサートは招待してもらったからね。」
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Zebra zone
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「数日後に、嵐が来るようだね。
例えば大きな木が倒れるとする。それを描写するとしたら、どんな角度で、木の種類は、葉っぱの色は、音はどういう音で、匂いは、早さは、それをどのような文化背景や年齢の人に最も早くうまく伝わるか、あいまいな表現でも同じ国の人なら伝わりやすいかもしれないけどそれでいいのか、考えるね。」
「私ね、おじさまの本を読まなかったら、今こんな風になれていないとおもうのよ。架空の世界を。でも私がやっていることはいたってシステマティックで現実的、だからよくわからないけどね」
「わたしもわからないことはあるよ。でも現実だけ意識していればいいというものでもない。人は自分が自分の現実を見ていたいという幻想を、他人に押し付けてしまうこともある。」
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Riding on the train
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「今、私は電子メールを使って情報交換したり、ファンや批評家たちの意見を拝見している。きっとお前もコンサート以外ではそうなんじゃないか?」
「そうね、でもチャリティーコンサートなどでは会場が小さいところもあって、教会とか小学校とかね、そういうところでは、なるべく多くのお客さんと話して感想を聞いたり、握手する機会も持っているの。」
「そういうことは本当はもっと必要なのかもしれないね。
おそらく何年後かにはもっと、通信技術が発達してInteractionの手段が多様でスムーズになるだろう。しかし逆に思惑や、イメージなどが個人個人にさらにダイレクトに影響しやすい時代にもなる。今は想像しにくいけれど、ファンや協力者だと思っているような人にも、時に注意した方がいい。逆に敵だと思っている人が協力してくれることもある。内在されていたそのような変化がスピーディーに、目に見える形でやってくる。
…Midori 恐らくね、何処までが自分の幻想で、何処まで他人の幻想か自分でわかっていることが大事だと思うんだ。」
「…そうね、今は全部じゃないけど、なんとなくわかるわ。
ねえおじさま、そこの角がホテルなのよ、今日は本当にありがとう。」
「今回は私はMidori の演奏に完全に見せられてしまったんだよ。もっと緩やかで、矛盾を一個一個敵にせずいきたいんだよ。私はそういう世界に住んでいたい。なんだか川の流れの真ん中で静かに佇む石みたいにね。でも若いころの、私への復讐だったかな?」
「あら、ちょっとおじさま冗談はおやめになって」
おわり -Thank you-
※登場人物はすべて架空の人物です。
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