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【短編小説】路地裏の秘める魔力に魅せられて(前編)

「さて…と。この先、どう生きていこうか。」


夕闇が濃くなり始めた時を、私はひとり歩いていた。

これまでは、「ちゃんとした人生を」と思い、普通に仕事をしていたが、一回離れてみようと思った。

「ちゃんと」という表現も、「普通に」という表現も、人によって様々だが、私がこれまでどのように過ごしてきたかは、想像にお任せしたい。

なぜかわからないけれど、今は仕事から、日々の喧騒とした世界から離れて、別の世界を視てみたい。

そう直感的に思ったことがきっかけだった。


もちろん、これまでいた環境には、感謝しかない。本当は、そこにいればこの先も安定が続いていたかもしれない。

ただ、自分の内なる声を信じて、辞めてみた。 



自分の人生は、面白い。
そう胸を張って言える日々を過ごしたいと思った。

とにかく、面白いが共鳴する世界にしたかった。


ただ、何もプランは決まっていなかった。


『人生というものは、そんなに甘いものではないぞ。』

多くの人に、そう言われた。

そのように言われるくらい、おかしな夢を語っていることくらいは、わかっている。


仕事を辞める前に、人生が面白いとは、どういうことなのか。
そして、それは、どうすれば達成できるのか。

たくさん本を読み漁ったし、信頼していた人に相談したけど、答えは見つからなかった。


もしかすると、今の自分が求めているものは、これまでの偉人でさえ達成してこなかった、ということなのかもしれない。

未知の世界へ、進んでもよいものか。

自分には、未踏の地に踏み出す覚悟が、本当にあるのだろうか。

頭の中では、いろいろな思いを巡らせながら、ただひたすら歩き続けていた。

気づくと、まわりが暗くなっていた。

すっかり夜になったこともあるが、電灯が少ない道に入り込んでしまったようだ。
少し離れたところから、車のエンジン音が聞こえるから、ここが、通りの多い道から、1本奥の道であることが想像できた。


―こんな道が、あったのか。

そう思いながらも、歩き続ける。


いつもの道からそんなにかけ離れていないから、このまま進んでいっても、大丈夫だろうと思い、進んでいく。

知らない道を歩くのも、また今の自分の迷っている様を表しているようにも感じる。


 
表通りより、路地裏が好みだ。

路地裏には、宝の原石が眠っているような気がするから。


歩きながら、心の奥で、微かにワクワクした気持ちが芽生えたことに気づく。

自分の心の動きに素直になっていると、遠くの方に、一筋の光が見えた。

その方向へ、足早に向かってみる。

暗い道で、人通りも少なく、やや怖さはあったが、それを上回る興味が、自分を動かしていた。


向かった先にあったのは、
1軒の売りに出ている物件だった。

もちろん、誰もいない。
光を発しているものも見当たらない。

さっき見た光は、もしかすると、自分の幻想だったのかもしれない。

そう思いながらも、なにか導かれたような気がして、そのまま帰るのも気が引けた。


既に日が暮れ、周りも電灯が少ないため暗く、はっきりとは見えないが、売りに出ている物件は、ちょっと古めだが、雰囲気は、とても良さそうに見える。



今の自分には、ちょうどいい場所かもしれない。


あの光は、声にならない何かを発して、自分を呼んでいた気さえする。

自分の人生は、再スタートを切る。
これからの物語が、どのようなはなしになるかは、わからない。

でも、確かに言えるのは、この場所は、自分の物語を、なんだか面白そうなものへと導いてくれる。

そんな予感がした。


「きっと、これだ。」


そう思った瞬間、生暖かい、強めの風が吹いてきた。
これから雨が降りそうだ。

あいにく、傘を持ち歩いていない。

本降りになる前に、帰らなければ。

物件の窓枠に貼られていた連絡先をメモして、一旦引き上げることにした。

また明日、来て確認してから動きはじめてみよう。


これが、すべての始まりだった。
 

[後編につづく]




こんにちは。RaMです。

本日も、創作(妄想)を楽しませていただきました✨

こちらはフィクションですが、ストーリーを考えるうえで、参考にさせていただきました記事は、こちらとなります。

▼ いつも、ありがとうございます✨ ▼


タイトルに、前編とありますように、今回のお話は2部構成を予定しております。

▼ 後編は、こちら ▼


こちらのアカウントでの短編小説は、不定期更新です。

作品によっては、短編小説同士を繋げていくと、1つの物語になりそうな予感もしています。

もしよろしければ、今後の展開も含めて、お楽しみくださいませ。

自ら物語へのハードルをあげてしまい、
ここまで書いて、若干後悔しているRaMでした。

―なんのはなしですか
#なんのはなしですか #賑やかし帯  


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また次の投稿で、お会いいたしましょう。


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