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【インサイトコラム】都会に住むビジネスパーソンの視点でマーケ・メディア戦略を考えるのは大間違い

『マーケティングとは「顧客志向(Customer-Oriented)」を具現化するプロセスであり、顧客の必要なもの、欲しいもの(ニーズ)とは何か?あくまでも顧客基点で考え、企業側の都合で進めてはならない、顧客に合ったサービスや製品を提供するためには顧客との相互理解が必要、これらの考えはB2CであろうとB2Bであろうと違いは無く、しっかりと肝に銘じなくてはならない。』ということをお伝えしましたが、では、「顧客志向」を具現化するには、具体的にどうすればよいのでしょうか?
今回は「顧客との相互理解」の部分において、特に情報発信やメディア戦略に焦点を当てて考えていきたいと思います。

「情報を発信する」とは「情報を受信し正しく理解してもらう」ことである

今や生活者にとって、インターネットやSNSなどは当たり前の情報源、メディア、コミュニケーションの場でしょう。TVやラジオ、新聞、雑誌などの旧メディアと呼ばれる媒体のみならず、HP、YouTube、Facebook、Twitter、Instagramなどの新メディアで、日々刻刻と新しい情報が発信されています。PCやスマートフォンの普及によりネット系メディアの台頭は、皆様実感のあるところと思います。
そして発信側も、新旧メディアの多角的な分析により「マーケティングROIの最適化」や「オンオフ跨いでの複合的なメディアプラン策定」「動的な発信コンテンツの開発」など、発信する情報の効果の最大化を進めてきました。
しかし、ここで忘れてはいけないことが1つあります。それは「発信した情報は、受信されて初めて意味をもつ」ということです。つまり、顧客のニーズを理解し、企業側の都合ではなく、彼らにとって最適な状況で情報を発信し受信され、内容を正しく理解してもらうことで、初めて「顧客との相互理解」の実現となりうるのです。では、どうしたらきちんと受信してもらえるのでしょうか?そのためは、企業側が顧客の最新のメディア接触状況を確実に理解しておく必要があります。

新旧メディア、どちらが強い?

楽天インサイト(株)が2020年2月に全国20~69歳男女を対象に実施した『最新メディア接触状況調査(※)』では、各メディアへの接触状況や普段の生活状況、各種メディアへの信頼度、イメージ等を県別に聴取しており、その一部から下記の傾向を確認することができました。非常に納得性の高い結果です。

テレビ番組(地上波)はまだまだ強い。全国で強い。(図1参照)
・ただ、視聴時間別によっては都市間に差がある。(図2参照)
 -まとまった時間では、テレビ番組が強い。
 -スキマ時間では、インターネットが圧倒的。
 -交通手段の違い等により、通勤通学や移動時間は、首都・関西圏ではインターネット、地方都市ではラジオ番組が強い。
 -朝食時の過ごし方にエリア差が見られる(新聞など)。

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まだまだ強いテレビメディア、どのように付き合う?

視聴時間によっては都市間に差があるとはいえ、テレビ番組(地上波)のメディアパワーはまだまだ強い状況です。私たちがこのテレビメディアを最大限活用し、適切な情報発信をしていく為には、テレビメディアの特徴を良く知っておく必要があります。それは、仕組を理解するということではなく、消費者側がテレビメディアをどのように捉えているか?を理解することを意味します。
上記の調査(※)では、各県在住者ごとに、その県で放映される民放テレビ局のイメージを聴取しています。今回はその結果のコレスポンデンス分析により、エリア別に同系列のテレビ局のパーセプションを地域間比較してみました。
本コラムでは、『関東広域圏:キー局パーセプションMAP』と『中部広域圏:準キー局パーセプションMAP』を抜粋してご紹介します。

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【関東広域圏】
テレビ朝日は「知的・真面目系」、TBSは「品質良い系」、日本テレビは「歴史有り系」、フジテレビは「にぎやか・元気系」、そしてテレビ東京は「オリジナリティ」
【中部広域圏】
テレビ朝日系列の名古屋テレビは「信念あり系」、TBS系列の中部日本放送は「歴史有り系」、日本テレビ系列の中京テレビは「にぎやか系」、フジテレビ系列の東海テレビは「品質良い系」、そしてテレビ東京系列のテレビ愛知+岐阜放送+三重テレビは「オリジナリティ」

なんと、同系列のテレビ局であっても必ずしも同じパーセプションに付置されるわけではない、これは他都市でも同じ結果でした。関東(東京の)キー局の関係性を是として、他の都市のテレビメディアを理解してはいけない、きちんと都市ごとのその都市におけるテレビメディア特徴を理解し、都市特徴に合わせた付き合い方をするべき、つまり「都会に住むビジネスパーソンの視点でマーケ・メディア戦略を考えるのは大間違い」、ということなのです。

Think Local, Act Local

私事になりますが、2000年初頭(ああ、また年齢がバレます。)某米国系“清涼飲料水メーカー”にてマーケティング業務に従事しておりました。そしてその時代、その米国系清涼飲料水メーカーは、日本独自商品を量産し、テレビメディアで莫大な情報(CM)を日本独自コンテンツで発信していました。その時のマーケティングスローガンが『Think Local, Act Local』。まさに、外資系メーカーが日本の顧客志向を具現化していた時代だったと思います。
その後、多くの外資系FMCGメーカーは日本からマーケティング機能を撤退もしくは縮小、マーケティングプロセスのグローバル統一化にシフトする、などをしていきました。某米国系清涼飲料水メーカーにもグローバル化の波が押し寄せました。商品も情報も全てグローバル統一されたもの。日本市場が不況に陥ったことも理由の1つですが、大きな予算を持つマーケティングプロセスにおいて、商品や情報の差別化を効率的に実現することが大きな目的でした。
そして令和時代の今、デジタルメディアが普及し、多くの人が世界中の情報に接することが可能となる状況では、グローバル統一された商品やサービス、そして情報発信の差別化的価値は弱くなりました。改めてマーケティングの原点『顧客志向』の具現化に立ち戻る時期が来たと思います。そして、その1つの方向性として2000年時代よりもさらに推し進めた『post-Think Local, Act Local』があると信じています。これは、「顧客志向の具現化は変わらず、しかしその顧客の生活エリアレベルに基点をもつ」という考え方です。
最後に、上記調査から「居住地域に合わせたCMに対する意識」の結果をご紹介いたします。

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これを見ると、佐藤尚之さんが仰っていた「東京は別の国」を思い浮かべずにはおれません。

(※)『最新メディア接触状況調査』概要
調査手法 :インターネット調査
調査エリア : 全国
調査対象者 : 20歳~69歳 男女
回収サンプル数 : 23,500サンプル
調査期間   : 2020年1月30日~2月3日
調査実施機関 : 楽天インサイト株式会社

出典:
佐藤尚之:ファンベース ──支持され、愛され、長く売れ続けるために 筑摩新書(2018/2/6)


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