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読書日記『お探し物は図書室まで』

本のタイトルに「図書館」や「書店」というキーワードが入っていると読みたくなってしまう。
少しだけ繋がっているお話が何本かつまっている本はワクワクする。
『お探し物は図書室まで』はそんな私にとってズッキュンな小説であった。

人生や現状に悩む人が、とある図書室を訪れ、レファレンスされた本と小さな付録に気づきを得るこのお話。
章題は人物名と職業。
悩みは様々だったが、どこかで仕事が関係していることは共通していた。

やはり、人生において“仕事”というのは大きな割合を占めているものだと見せられる。

今のところではあるが、私は仕事についての悩みはない。
自分にあった環境で働けているからか、仕事を“お金を稼ぐための手段”として捉えているからか。もちろん、辞めたいと思ったことはあるけれど、それも一時のことである。

一昔前は、入社した会社で定年まで勤めることが当たり前だったと聞くが、今日、転職は普通に考えられるようになっていると思う。実際に、私の勤めている会社にも中途採用の方が何人もいる。
仕事をしてお金を稼ぐことは生きていくために必要なことだと思う。義務でもあるしね。だけど、仕事に縛られる必要はない。


本の中で悩める人は、仕事を続ける選択、辞める選択、仕事をしながら仕事をする選択。自分の選択をしていた。

私は、たぶんいま、仕事を続ける選択をしているんだなと感じ、今後登場人物たちのように、悩み、考え、自分の選択をしていくべきなんだと感じさせられる。

仕事について悩むことはないけれど、この本をよんで考えたことはある。
「私のやりたいことって何かあるんだろうか」ということだ。
図書室でレファレンスをしてくれる司書の小町さんを始め、悩める人の周りの人は、この本の中で「あなたが気づいたから」「あなたが動いたから」という趣旨のことをよく言う。
だから、読了後は「何かしなければ」という気持ちになった。
だけど、私は何がしたいのだろうか。
旅行やカラオケには行きたいけれど、この本の「やりたいこと」とは違う気がする。それとも、旅行やカラオケの先に何か見つかるものなのだろうか。

「何がしたいのか」は時々考えることだけれど、やりたい事のために動きだす彼らに触発されて、久々にゆっくり考えることができた。

前述したように、この本は少しだけ繋がっている章がつまったお話である。
全編に登場する司書の小町さん。
章を読み進めるたびに、彼女のことが少しずつ分かっていく。そんな所も楽しい小説であった。

あらすじ(ポプラ社/書籍の内容 より)

お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?
人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。
彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。「本を探している」と申し出ると「レファレンスは司書さんにどうぞ」と案内してくれます。
狭いレファレンスカウンターの中に体を埋めこみ、ちまちまと毛糸に針を刺して何かを作っている司書さん。本の相談をすると司書さんはレファレンスを始めます。不愛想なのにどうしてだか聞き上手で、相談者は誰にも言えなかった本音や願望を司書さんに話してしまいます。
話を聞いた司書さんは、一風変わった選書をしてくれます。図鑑、絵本、詩集......。
そして選書が終わると、カウンターの下にたくさんある引き出しの中から、小さな毛糸玉のようなものをひとつだけ取り出します。本のリストを印刷した紙と一緒に渡されたのは、羊毛フェルト。「これはなんですか」と相談者が訊ねると、司書さんはぶっきらぼうに答えます。 「本の付録」と――。
自分が本当に「探している物」に気がつき、
明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。

『お探し物は図書室まで』

著者:青山美智子

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