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7.みんな飛べるのに、私は飛べなかった

自分が大切にしていたぬいぐるみ。

することは到底ないが、私は人を刺しても大切にしていたぬいぐるみなんて刺せない。
そう思ってた。

でも、私は刺した。

薬を過剰摂取して、
周りのものを全部ぶちまけて、回らない頭で、癇癪を起こしてる私は破壊できるものが自分しかないと気づき、
自分の身体を刺したくなった。腹に一発包丁で。
でも私には出来ない。
学生時のトラウマと、親族に迷惑がかかると思ったから。
練炭なら、この20歳から精神科にかかりっきりの出来損ないの私でも死ねるんじゃないのかと。でも既に足は千鳥足。


というか歩けない。

床にぐちゃぐちゃになった身体と顔で目の前に自分の分身を見つけた

自分がしんどい時にいつも一緒にいてくれた、ぬいぐるみだ。

目をカッぴらいて、ハサミを手に取る。
大声が出そうになるのを、また人に迷惑をかけると必死に抑えて
ぬいぐるみの腹を裂く
あれだけ大切にしていた、あのぬいぐるみを。

「ごめんね、ごめんね、ごめんなさい、ごめんなさい」

少し落ち着いたら、今度はぼろぼろと溢れる綿と身体を抱き締めて、謝りながら啜り泣いた。
完全なメンヘラである。
でもそれほど、あの子が価値のある子で、私の身代わりになってくれた子なのだった。

皮肉にも、その日は天気が良かった。
空が青かった。日が照っていた。
初めてホットラインに電話した、月を見上げた日のように、ぼうと見上げて

「飛ぶことならできるかも…」

と思ったが、しょせん、

私はぬいぐるみを犠牲にするような卑怯な人間なので、
「迷惑をかける」という免罪符で飛ぶのをやめた。
もう身体も動けなくなってた


さて、なんでこんなことになってたかというと、自分の中では許せなかったのだ。
祖母の葬儀を自分の栄光としか考えてなかった坊主
周りは泣いてるのに泣きもしなかった他の孫
空回りするややこしい祖父を煙たがる周り
気を遣ってるようでズレてる行動をした彼氏
しんどいなか行ったのに、率先して動いた自分の癖と
後悔するから行なった行為、
感情で行動して自分の首を真綿で締めるようにしんどくなる小心者根性

全部、自分の思考が原因なのだ。


ここに記して、殉職と呼ばれている身代わりになってくれたぬいぐるみと、
祖母のことを忘れないようにしたいと思う。


誰も、悪くない わるくないのだ。

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