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“新しい価値”について、最近感じていることをつらつらと。

本記事は、KDDIアジャイル開発センター Engineer & Designer Advent Calendar 2022の15日目の記事です。

そもそも、価値(Value)とは何か。

稲盛さんの教え通りに、まずは原理原則立ち返って辞書を確認してみると、比較的シンプルなものには、以下のような説明があった。

〘名〙
1, 物事のもっている値うち。あたい。かちょく。〔英和記簿法字類(1878)〕※ 吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三「研究する価値があると見えますな」
2, 人間の基本的な欲求、意志、関心の対象となる性質。真、善、美、聖など。
3, ある目的に有用な事物の性質。使用の目的に有用なものを使用価値、交換の目的に有用なものを交換価値という。

精選版 日本国語大辞典

ここで確認したかったのは、一般的な言葉としての意味であるが、“価値”という言葉はあまりにさまざまな分野で使われており、言葉の解釈がその分野ごとに存在している。また、◯◯価値などのように、細分化されているため、価値について語る時には、言葉の表現から相手の思考を汲み取りつつも、 “誰のための” “どのような” 価値を指して表現しているのか、注意しながら会話する必要がある。(もちろん、直接的に確認できる相手の場合は、事前に認識を合わせてから話す方が話しやすいが。)

価値の種類

ものづくりの分野で比較的馴染みやすい方に分類できるのは、“マーケティング”などの経済的な観点で使われるもの。企業と顧客の関係性に繋がる“エンゲージメント”に繋がる価値、そして、顧客視点の価値最大化を目指す“経験価値”ではないかと思う。

  1. 経済的(マーケティング)な視点による価値

  • 機能的価値:提供物自体が顧客に提供する価値のこと

  • 金銭的価値:貨幣による等価交換によって、商品やサービスを取得すること

  • 時間的価値:時間の経過に伴って価値が変化すること

  • 社会的価値:製品を所有したり、サービスに従事したりすることで、消費者が他の人とつながりを持てること

  • 心理的価値:製品が消費者に自己を表現したり気分を良くしたりできること

2.企業と顧客の関係性に影響するエンゲージメント価値

  • 紹介価値:既存顧客がインセンティブ付きの紹介制度などを利用し、新規顧客を紹介してくれたかどうかを表すこと

  • 影響価値:既存顧客が内発的に(自主的に)新規顧客や見込み客を紹介したり、クチコミをしたり、ブログやSNSで発信すること

  • 知識価値:顧客が企業にフィードバックする知識がどれだけあるかを表すもの

3.製品・サービスを購入する際の経験や体験を、意図的にマネジメントすることで価値の最大化を目指す経験価値

  • 感覚的価値:視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といった五感に訴えかけるもの

  • 情緒的価値
    斬新なアイデアや細やかなサービスなどによってブランドそのものに愛着を抱かせるなど、情緒的な部分に訴求するもの

  • 創造的・認知的価値
    顧客の知性や好奇心に訴えかけるもの。そのサービスを利用したときの感動や高揚感など

  • 肉体行動、ライフスタイルに関わる価値
    美容体験で実際に変化が表れるなど、ライフスタイルや肉体面で実感できるもの

  • 準拠集団への帰属価値
    集団の中での交流や有名芸能人への共感などによって、ある集団への帰属欲求をかき立てるもの

上記のカテゴリーの他にも、哲学的解釈や歴史的価値など、一見するとものづくりとは離れた分野にも思えるところにもさまざまな“価値”が、この世には存在していることがわかります。

(ようやく本題) 新しい価値って?

VUCAの時代がなんちゃらとか、モノもコトも飽和状態であるとかなんとか言いながら、現状に甘んじるのではなく、新しい価値が生まれ続けている。それを後押ししているのは、3つの変化。
1.テクノロジーの進化、2.地球環境の変化、3.それに伴う人々の価値観の変化だ。

“新しい価値”というのは、これら3つの変化を捕まえながら、キレイに交わる部分を見つけ出す、針に糸を通すようなイメージを持っている。
かといって難しいところは、全ての人間が最新のテクノロジーを望んでいるわでもなし、価値観が変わっている人も入れば、変わっていない人もいるという、マーケットの複雑さも相まって、ビジネスとして成功するに至るサービスはなかなか生まれにくいのも事実。そんな中でも私たちは、この“新しい価値”に向き合い続けなければならない。

私が思う、これからの“新しい価値” との向き合い方

サービスデザイナーの視点で、“新しい価値”との向き合い方について、私見を述べると、これから必要なのは、inside-out の精神を、どこまでoutside-inに持ち込めるかが鍵だと思っている。
※ インサイド・アウト は「私」を、アウトサイド・インは、ユーザや世の中の課題を起点にして発想をするという考え方です。

一般的なアプローチとしては、顧客と一緒に課題がなにかを定義し、事業戦略の視点でスコープを決めて、最終的には課題を解決するプランをつくることだ。(アウトサイド・イン)そうすることで、曖昧さを極力排除しながら合意形成を図っていくアプローチ。重要なのは、そこで小さく纏まらずに、それから改めて一人のクリエイター、人間として自分起点でインサイトアウトの視点でアプローチできるかどうか。また、それが最終的に課題と目的と接合できるのかを考えるのが重要で、さらにどのようにアップデートし、拡大させていくかまでのストーリーが描けているのかどうかにかかっている。

この、アウトサイド・インと、インサイド・アウトのバランス感覚がとても重要で、これをチームの人(プロジェクトメンバー)に理解してもらえるかどうかで、サービスの質が大きく左右すると言っても過言ではない。しかしながら時間的制約もあるし、特に共創プロジェクトのような複数の企業が交わるような状況だと、お互いの文化のすり合わせから行う必要がでくるので、思考レベルまで擦り合わせる時間は正直ないのが現実なのです。それでも、意思のある人がチームに存在していれば、良い方向に進めることが多いので、ぜひ一人一人が、プロダクトやサービスに対して意思を持って向き合っていってほしいと、心の底から思います。ユーザー視点だけではもう、差別化できないし、“新しい価値”は生まれにくいから。

結局、サービスは人が人のために作っている

良いモノや良いコトの真髄は、受け手が “なぜ? ” とひっかかりを感じてそれについて思考を巡らせたり、心地良さをおぼえて感性を揺さぶられる時間がながければ長いほど、その人の中に入り込んでいくんだと思う。それを繰り返していくことで、無くてはならない存在(サービス)になる。最初の掴みとリレーションシップ。
最初の掴みの部分は、感性が合うかどうかもあるけど、これからの時代には、スペキュラティヴなデザインにちゃんと反応できて思考できる見識は持っていたいし、自分でも表現していきたいと強く思ってる。デザインとアートは全く別物ではあるけど、感性に響くという点においては、表現の一部であり、伝えたいことが伝わったり、別の解釈で受け止めてくれることで喜びを感じる点は似てると感じる今日この頃。

つくり手も意思を持って、内と外を高速で行ったり来たりして思考を巡らせることによって、ようやく内なるパワーみたいなものと、社会が繋がり出す。それを何回も繰り返していく中で、貧相なアイデアしか出せなかったところから、金の卵が生み出せるようになると信じています。その思考が持てるようになると、ようやく“社会的価値”のフェーズとの繋がり、経済価値との両立について本気で向き合えるようになります。

そんなことを書いておきながら、付け加えたい価値観

賛否両論の意見があるものの、デジタルネイチャーの落合さんが最近やたらとハマっている、ChatGPT(AIテクノロジーを利用した自然言語処理ツール)を使えば、人はチャットで会話をしているような感覚で指示を出すだけで、コードを書かなくても新しいソフトウエアサービスをつくりだすことができる時代に既に突入している世界線も、すぐそこまできているんですよね。このような世界において、人間が何に価値をおくのかも益々細分化されているよねって話。ものづくりのプロセスが削ぎ落とされて、人よりも優秀なコンピューターが直ぐに答えを持ってきてくれる時代に、人は何に喜びとか楽しみを覚えるんだろうか。
私は、人の感性でしか感じられないことを信じたいし、AIが作った作品よりも、人間が作った作品で感動したいと思っている。でも抗えない事実として、2025年には、AIが人間の頭脳を超えるシンギュラリティが起こるとも言われているので、益々社会の変化が激しくなる時代に突入しますね。AIを使いこなしながらも、人が人であることの喜びを感じられる社会に繋がるサービスが必要になりそう。もう自分の価値観とか感性くらいしか信じられない時代になってしまう気がする。どんどん、インサイド・アウトしていこう。


[参考]
落合陽一さんのイケイケコンテンツ関連は、面白いので貼っておきます。

終章 マタギドライヴたちが招く未来(前編)|落合陽一
終章 マタギドライヴたちが招く未来(後編)|落合陽一
最近見た動画で一番おもしろかったかも。↓
魔法の世紀, デジタルネイチャー, そしてマタギドライヴへ

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