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動物トレーナーの皆さまへ、分割思考してみませんか?

動物のトレーニングが終わったあとで「あれ?私は何がしたかったんだっけ?」ってなることありませんか。親切な人に囲まれていると「アナタは何がやりたいのかわからない!!」って優しく声をかけてくれることもありますよね。また、トレーナー同士でも、伝えたいことが伝わらない、相手の言っている事も腑に落ちない、そんな時には、分割するとスッキリしますよーというお話しです。

「やりたい事がわからなくなっちゃう現象」は
 ・いつでもどこでも発生する
 ・知らないうちにふわーっと始まる
 ・個人だけではなくチーム全体で発生することもある
 ・わからなくなっている事に自分では気づきにくい
 ・放置しすると慣れて平気になる、気にならなくなる。
 ・自身の成長を阻害する
 
こいつ非常にヤヤコシイですね。
たしか「困難は分解しろ!」って昔の哲学者が言ってたし、最近では論点思考とか、イシューとかも流行ってるみたいなので、「やりたい事」を分解してみましょう。「やりたい事」とは、目的・目標・課題などの事ですね。

目的別に分解してみると、6項目になりました。

1、トレーニング(行動形成)
新しい種目の形成、崩れた行動の修正、サインと行動の関連付けの再構築、これらが主なが目的です。

2、ワーク
すでに完成している種目の実行と現状維持が目的です。
(種目の修正はワークではなくトレーニングに含めます)

3、サーチ(状況把握)
健康状態、個体関係、道具や設備への逃避や執着、行動の特性や変化の把握が目的です。
サーチは、アクティブな方法(サインを出す・触れるなど積極的にアプローチし、動物の反応から情報収集する方法)と、パッシブな方法(動物に気づかれないように情報収集を行う方法)の2つに分けられます。

4、ギフト(無償提供)
動物が欲しいもの、必要としているもの、好きな事、必要な条件や環境等を無条件で提供することです。治療、出産、新たな環境への適応、著しい意欲低下、恐怖や不安を感じた場面、元気がない時、人と動物の関係性を構築する場面などで必要になることがあります。

5、オペレーション(治療、運営
治療や検査、運営のために必要な事(プールの移動など)の実行が目的です。
(ハズバンダリーなどサインで出来るものはワークに含めます、種目として完成していないものをオペレーションに含めます)

6、レスキュー
動物から人への攻撃、人から動物への危害、人や動物の急病、自然災害の発生等で、人(ゲストやスタッフ)と動物の生命を最優先する必要がある場面です。

具体的例があるとわかりやすいですね。普段行っているトレーニングと呼ばれるセッションを、この6項目に分割してみました。
 
例)ある日のイルカトレーニングセッション
 ①開始餌(食欲確認)  ←(サーチ+ギフト)
 ②体温測定       ←(サーチ+ワーク)
 ③ジャンプ、吻タッチ  ←(ワーク)
 ④新種目・前方宙返り  ←(トレーニング+サーチ)
 ⑤別のプールへ移動   ←(ワーク+オペレーション)
 ⑥背泳ぎ、胸鰭バイバイ ←(ワーク)
 ⑦終了
 
この例では、純粋な意味でのトレーニング(行動形成)は前方宙返りだけで、ワークの比率が多いようです。
 
分割して解った事は、
 ・トレーニング中に、実はいろんな目的が混在していた。
 ・目的は次々と変化している
 ・2つ以上の目的を同時に進めていることもある
 
これだけ複雑な事をしてるのであれば、ほんのちょっと予想外のこと(予想外のNGとか、トラブルとか・・・)が起きただけでも混乱しそうですね。

さて、どのような状況の場合「アナタは何がやりたいのかわからない!!」って言われてしまうのでしょうか。

例)時々見かけるダメダメパターン
当初、出来るだろうと予測してスタートしたもののうまくいかず、でも出来るかもと楽観視して続行すると動物に「絶対嫌!」と拒否され、レベルを安易に下げたり過剰なヒントを使ったりと迷走が始まり状況はさらに悪化。タイムアウトを使うも効果なく、そのうち動物は離れて帰ってこなくなり、それでは困るので戻ってきたところで簡単な種目を行い最後は強化して終了。
 
スタート前の予測が甘く判断するタイミングが遅いとハマります。うまくいかない場合は、目的の切り替えが必要です。①状況を再確認し(サーチ)トレーニング手順を再構築する、②やりたかったことを諦める(違う種目のトレーニングやワークへ変更もしくは終了)、③オペレーションとして行う、①②③のどれかをスパっと選んだほうが良い結果へつながると思います。この手段で、今すぐ、どうしても、やらなければならない、といった固定概念にとらわれると、知らないうちに目的や意思がすり替わって、ゆっくりと着実に自ら混乱の泥沼へ落ち込んで出られなくなります。
 
一方で、高い技術を持つ方々は、目的の選択にぶれや迷いが無く、状況が変化した場合でも適切な目的へ瞬時に変更しています。たとえ2つ以上の目的を同時に進めている時でも、トレーニング8割+サーチ2割といった感じで、それぞれ配分を自分の意思でコントロールしているように感じます。
 
今回分割した6項目は、トレーニングの時間だけでなく、ショー、プログラム、動物と遊んでいる時、取り上げ作業、処置、治療など、動物に係るすべての時間に応用が効きそうです。もちろん、他のトレーナーとの意思疎通のズレ解消にも役立ちそうです。
 
本当は、細かい事ごちゃごちゃ考えずに、動物と楽しい時間を純粋に過ごすのが一番だと思いますが、いろんなことを考えすぎて混乱しやすい人(私です)や、混乱した状況を解きほぐしたい場合にはおススメの方法です。
 


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