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短歌№31-60

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河川敷を
駆けるゴールデン
レトリバー
夕日を浴びて
きらめいている

針を落とし
私の産まれる
遥か前
熱狂に湧いた
歌を聴いてる

ねぇしってる?
みえないけれど
シトロンの
かおりがするんだ
おひさまのした

無駄なことを
一緒にしよう、と
笑う君
待ち合わせしよう
赤い公園

熱に浮かれ
騒いだ虫の
声はいま
夜風とともに
静かに眠る

夏の雲を
ソーダ水だと
言った君
秋ならきっと
カプチーノラテ

日が暮れて
祭の鐘は
提灯の
灯りを頼りに
集落をゆく

ふと思う
いつか命が
尽きるとき
思い出すのが
今日ならいいな

掌で
触れあう君の
身体には
血潮のように
電気が巡る

北風が
木の葉を揺らし
ざわめいて
離れないでと
身体を寄せた

忘れ物の
フリして戻る
夕暮が
染まる机に
あなたがひとり

土手に出て
地平を縁取る
山はなく
野分が駆ける
ここは武蔵野

夜明け前
星空が見える
単線の
ホームのむこうの
近づく光

不随意に
漏れた声すら
隠すけど
知られたくない
独り占めしたい