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【嘘のような、ホントの物語】#3 〜 不思議な力を持つ娘 〜 誕生まで 〜

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前回のあらすじ
40歳を目の前に、カンボジアで働いていた私。1年ぶりにタイを訪れ、友人との再会を喜んだ。友人から恋人へ関係が進展して、タイを後にした私。それから数週間後、妊娠が発覚。カンボジアでの高齢出産を前に、バンコクの病院で出生前検診を受ける決心をした。妊娠15週に入り、羊水検査をするために一路バンコクへ。陸路で国境を越えたのは、もう夕方近かった。


∞ 国境を出発

ロンクルア市場の外れから出発したミニバスは、バンコク市内へと出発した。前回乗った時と違って、外国人とローカル風の乗客が半々ぐらいの割合で乗車していた。

国境から、4時間ほどでバンコクに到着する予定とのことだった。

最終到着地点がはっきり分からなかったが、BTS駅の最寄りで降ろしてくれるなら、それでよし、とすることにした。

細かいことは、聞いても答えてもらえないから、観念するしかないのだ。

実のところ、私は、白か黒かハッキリしたい性格の人だった。
何でも逐一、状況を把握したい人なのだ。日本で働いていた時に、特にそれを叩きこまれた。

また、それが評価されて、カンボジア人への指導役として、カンボジアに来ることになったようなものなのだ。

でも、環境がそれを許さなかった。このあたりの国では、細かく詮索しても暖簾に腕押し。自分が欲しいと思う答えはもらえない。

あれこれやっても、結局、疲れるのは自分だけだから、もう、そうすることを止めてしまった。たけど、可笑しなもので、その方がうまく行くのだ。

タイの道路は、路面がスムーズで、体がとても楽だと感じた。そう思うと、急に眠気が襲ってきて、少しウトウトした。

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

車が止まって、人が下りていく気配で目が覚めた。

どこだろう?

ガソリンスタンド、コンビニ、トイレが併設されているサービスエリアだった。外は、もう真っ暗で。コンビニの明かりが眩しかった。

ミニバスは、ガソリンではなく、ガスを充填する。

カンボジアのタクシーもそうだったが、タイも長距離運転をする車は、ガスタンクが搭載されているのだ。だから運賃も安い。

ちなみに、バンコク市内で走るトゥクトゥクは、ガソリンだ。黒い煙を出しながら走るし、運賃も高い。

ガスを入れるため、何台かのミニバスが並んでいた。あちらこちらに、私たちと同じように、トイレ休憩らしい乗客がウロウロしていた。

とりあえず、トイレに向かうことにした。

少し並んでいたので、トイレの入り口付近にある手洗い場で鏡を見た。それにしても、ひどい格好だ。

汗が渇いて、顔も唇もカサカサに乾燥していた。塩っぽい顔を洗って、鏡を見ながら塗れた手を手櫛にして、髪を整えた。

タイは、トイレが有料の所もあるが、こういったサービスエリアは、無料で使用できる。そして、ある程度、清掃されているので、使いやすい。

ひとつ難を言えば、洋式トイレがほとんど無いところだ。
トイレットペーパーは、当たり前だが、設置されていない。だから、国境越えの時は、常にトイレットペーパーを1ロール、持ち歩くことにしている。

時計を見ると、午後6時をまわっていた。

タイ人と思われる乗客は、コンビニの横の屋台で、揚げたソーセージを買って食べている。外国人はコンビニの中で並んでいた。きっと、レンジでチンのサンドイッチやお弁当を買っているんだろう。

時間がどれくらいあるかわからなかったので、私は、コンビニでパンと豆乳とガムを買った。つわりはなかったが、食欲は沸かなかった。でも、少しは口に入れた方がいいと思い、豆乳で何とかごまかしていた。

今日は、ちゃんとご飯食べてないや、赤ちゃん、ごめんね。

後で振り返ってみると、本当に無謀なことをしたと思う。。。

ミニバスがガスを入れ終わって、コンビニの駐車場へ戻ってきた。用事を済ませた者から順に車に乗り込んだ。

ソーセージは匂いがするから外で食べてくれ。

そう、ドライバーに言われたらしく、数人のタイ人らしき人達が、バスの前で必死に揚げたての熱いソーセージを食べ切ろうとしていた。

外国人は、コンビニの前に座り込んで、まだ、悠長におしゃべりをしている。

私は先に乗りこんで、のんびりと出発を待った。

∞ ミニバスを途中下車

サービスエリアを出発してから、2時間ほど経過したころ、市内に近づいてきたのか車が混みあってきた。

車窓からは、都会のビル群の夜景が見えはじめた。こうやってバンコクの街並みを見ると、ビルの造形は違うけど、東京や大阪とそんなに変わらないなぁと思う。

カンボジアの生活に慣れてきた私には、都会の暮らしに、あまり魅力を感じなくなってきていた。カンボジアでの生活が現実で、今いる都会は幻想のような、そんな錯覚に陥ってしまう。

車が高速を降りるようだ。

高速の降り口は、降りる車が多くて渋滞していた。車線が少なくなり、クラクションがあちらこちらで鳴っている。我先にと進もうとする車。事故が起こらないのが不思議なくらいだ。

突然、ドライバーが大きな声で何か言っていたが、よくわからない。一部のタイ人らしい人たちが、ミニバスのドアを開けて降りて行った。

ドライバーが私の顔を見て、『BTS !』と言った。

あ、そうか、みんなBTSの駅に向かって歩いているのか!

そう思って、私も途中下車して歩いた。小さなトランクがほんとに邪魔だったが、みんな、ぞろぞろ歩いていたので、なんとか後ろにくっついて歩いた。

車の行列にぶつからないように坂道を下ると、先の方に、バスがたくさん止まっているのが見えて、BTSの駅が歩道橋の上にあるのが見えた。

ホッとして、自然に大きな息が漏れた。

はーっ。もう少しだぞ。

歩道橋の階段をのぼった。


∞ いざ、病院へ

朝、目が覚めると、目覚ましが鳴る前だった。

昨夜は、BTSの本数が少なくて、駅で少し待つことになり、ホテルに到着したのは、午後9時をまわっていた。

荷物をほどく間もなく、シャワーを浴びて、すぐベッドに横になって、とりあえず、無事到着したことを会社の同僚に連絡して、彼には、SMSメッセージだけ送ったところで、あっという間に眠りに落ちていた。

寝坊しなくてよかった、、、

お腹が空いていたので、ホテルの朝食券を持って、ビュッフェに向かった。

ビュッフェといっても、とても質素なメニューだったが、おかゆがあった。ショウガをいっぱい入れて、ナンプラーで味付けする。

いつもは唐辛子も少し入れるが、妊娠してからは辛いものは止めた方が良いとカンボジア人に教えてもらったので、食べないようにしていた。

コーヒーも、妊娠が分かった時点から飲むのを止めた。オレンジジュースでは、目は覚めないが、ビタミンはたっぷりだ、と思いながら流し込んだ。

あまり、のんびりしている時間はなかった。8時半にはBTSに乗らなければ、予約の時間に間に合わない。

急いで部屋に戻り、必要な荷物の確認をして、ホテルを出発した。

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ 

現在では、たくさんの路線が乗り入れているバンコクのBTSも、当時は、グリーンライン(黄緑)が、モーチット〜オンヌット間のみが運航されていた。空港から市内へ向かうエアポートリンクも、まだ開通前だった。
(*2009年の路線図=左、2021年=右)


そして、当時のBTSは、ガラガラだった。

現在では、通勤の足として一般的に利用され、朝のラッシュ時はパンパンで乗れないこともあるBTSだが、当時は、バスに比べてかなり運賃が高かったため、通勤でBTSの利用者は少なかったようだ。

だから、朝乗っても余裕で座ることができたし、冷房が寒いくらいきいていた。

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ 

病院の最寄り駅で下車して、しばらく歩くと、ホテルのような建物が現れた。

ここか、、、

中に入ってみると、ロビーで歓談しているアラブ系の人がたくさんいた。モスリム教のビジャーブというスカーフを着けている女性たちだ。

ホテルのロビーにいるみたいだ!

天井が高く、吹き抜けになっているロビーを見渡し、インフォメーションを見つけると、日本人外来の場所を確認して移動する。

とにかく広い。迷いそうになりながら、天井の方の表示を見ながら進む。

日本人外来の専用受付に到着して、予約の確認をしてもらい、その後、パスポートを提示したり、写真を撮ったりして、登録手続きを行った。

そうしていると、日本人の白衣の女性が迎えに来てくれた。細身の女性だったが、お腹が少し目立っていた。

彼女は、産婦人科医なのだが、妊娠後期に入って、サポートに回っているいう。胎教のためのレクチャーや、海外で安心して出産できるような講習会のようなものも企画しているという事だった。

一応、タイで出産する場合は、こちらで、、、というセールストークもあった。2泊3日の入院が一般的なのだそうだ。

しかし、日本人の場合は、オプションで延長パックも用意されていると言っていた。至れり尽くせりである。

バンコクでの出産を、イメージしてみた。

ホテルのような病院での出産には憧れるけど、タイに住んでいない私にとっては、沢山のハードルがありそうだな、、、

例えば、予定日前からタイに滞在することとか、ビザの問題、産後の手続き、子供のパスポート、、、

ちょっと考えるだけでも、いろいろ出てくるので、それ以上は考えないことにした。

この時は、彼との結婚するなどという事は、微塵も考えていなかったのだ。

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ 

診察室に入ると、どのような方法で検査をするのか説明を受け、羊水検査を受けるにあたっての同意書に、サインをした。

少し待たされて、医師が現れた。

中華系のエネルギッシュな中年の男性だった。

すごくテンションが高くて、今朝も赤ちゃんを取り上げたばかりだ、と言って、産婦人科の医師はとても忙しい、ということをアピールしていたので、ちょっと笑ってしまった。

その医師は、私のお腹をエコーで確認し始めて、ちょっと顔が曇った。それから、私にこう言った。

まだ羊水の量が少なすぎて、検査できる状態じゃないから、検査を1週間後に延期しましょう。

え、どういうことですか?

羊水の量が、検査のために取り出せる量に達していないのです。1週間後にもう一度来てください。

えーっ!そんな〜、どうしよう、、、!!


【嘘のような、ホントの物語】#4 〜不思議な力を持つ娘の誕生まで〜 に続く


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∞ まえがき ∞ より

この物語は、ある家族に実際に起きた、
嘘のようなホントの物語。

『自閉症の娘』や『ADHD疑惑のタイ人旦那』と、
『カサンドラになりかけた日本人妻』の
エピソードを描いた私小説的エッセイです。

他のエッセイに比べて、かなりプライベートな内容が
含まれているため、書く決心がつくのまでに
時間を要しましたが、

海外、国内問わず、育児に苦労している方や、
大人のADHDの方の対応に悩んでいる方の
ヒントになれば…と思い、執筆することにしました。

この物語は、決して暗く悲しいものではありません。

困難に打ちひしがれる日もあれば、
文化の違いから、お互いを理解し合えず
涙する日があったり、

バカバカしい事で、お腹がちぎれそうに
なるくらい笑ったり。

人生という旅路を、何故か一緒に歩く
ことになった、

マイペースでトンチンカンな旦那さんと、

不思議な力を持つ娘を中心に、

日本人妻が翻弄されながらも、
強く生きる物語なのです。

この物語のシリーズは、今後、
有料記事にする予定です。

不特定多数の方へ、無料で届ける内容ではなく、

本当に必要とされる方に、読んで頂きたい、

と考えているため、
そうすることにしました。

ご理解頂けると、幸いです。

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