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映画「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」レビュー。名優が奏でる長年連れ添う夫婦の味わい。


モーガン・フリーマンの語りから始まると、それだけで物語が上質に感じるという鉄板の法則が活きている 笑 

やはり彼の物腰、語り口調、何だろう、聴いているとα波が出るのだけど、、

そして、ダイアン・キートン。ほんと演技うまいなぁ~。当たり前だけど、、元々ウディ・アレンのミューズ、そして、彼女ほど、年を経て、そのユーモアセンスとチャーミングさを漂わせている女優を私は知らない。

この2人がニューヨークで長年住んできたアパートを売る話といえば、面白くないわけがない。私も経験あるけれど、家を売る方、買う方、実に神経すり減らすことだと思う。

それが老夫婦なら、心と身体が追いついていかない瞬間が出るのは当たり前。ダイアン・キートンは前へ前へ。モーガン・フリーマンは躊躇して。この心の距離感とお互いの思いやりがなかなか響いてくる。また、2人の馴れ初めの回想シーンとのバランスも良く、一緒に過ごした40年の月日の味わいが沁みてくる。

2人で新たなアパート探しもしなくてはならず、ニューヨークの街並みが自然に入ってくるのだけど、時折、ウディ・アレンの「マンハッタン」を思わせる構図もあったりして、何だかいい感じ。

また、家を見に来る人たちの中で、連れられてきた一人の少女とモーガン・フリーマンの何気ない心の交流が微笑ましい。

そして、不動産仲介人に「セックス・アンド・ザ・シティ」のミランダ役で有名なシンシア・ニクソンだけど、秒刻みの競売交渉をするせわしない感じがぴったりはまってる。

だけど、ちょっと気に掛かるのはニューヨークのテロ未遂事件と絡ませて、物語を進行していること、そしてクライマックスでその影響もある。これはやや物語づくりとしては、あざといというかう~ンと思ってしまった。

今や映画と現実は分かち難く結びついて、地続きであることが多いけれど、ドラマツルギーを紡ぐ上で、安易な結び付けは良くないと思う。そして、彼らが最後どういう決断をするかということだけど、そこもやや私は引っかかりを覚えた。これは観る方によるだろう。

それでも、長年連れ添うということ、そして夫婦らしさって何かな?ということをぼんやり感じながら、時に丁々発止、時に味わい深い会話劇を軽快に観れる作品だと思う。

それは何といっても、この名優2人の卓越した演技力のなせる技だと思う。


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世界に愛を届けるシネマエッセイストのクワン Q-Oneです。皆さまにとって、心に火が灯るような、ほっこりするような、ドキドキするような、勇気が出るような、そんな様々な色のシネマエッセイをこれからもお届けします。今年中に出版を目指しています。どうぞ末長くよろしくお願いします✨☺️✨