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ペンは剣よりも強し【pirokichi Books】

朝のラジオのニュース番組のトップニュースで知った『知の巨人』の訃報。

私は勝手ながら師匠というか恩師と思い慕っていた頃があった。

まだ学部生、研究室にも配属されていない頃、いわゆる指導教官という直属の師匠の存在しない、どこか帰属の判然としない頃。

大学というところは何でも出来るところ、という反面、何が出来るのだろうかと思いながら、アルバイトに勤しむというのは「どこか違う」と感じていた。金を稼ぐためにこの自由な時間があるのではない、と。

(無論、これは一時的な思いであり、後となってはバイトをする頃もあったのだが。)


夢にも出てくる師匠

そんななか、本当に夢にまで出てくるほど敬愛して止まない方であった。

立花隆

「ペンは剣よりも強い」ということを体現してみせた圧倒的な取材力と文章の力で時の首相に引導を渡したのだ。


打ちのめされた初対面

初めて立花氏と出逢ったのが『精神と物質』。

現在、研究者を生業とする者のなかで、科学を志したり、研究をしたいと思うキッカケになった本、と挙げられることの多い1冊。

日本人初のノーベル医学生理学賞受賞者である利根川進博士との対談。

内容は簡単とはいえないが、立花氏が充分に理解したうえで、対談や説明が行われるので、現役の研究者が説明するのとは全く異なった筆致で、一般の方や若い読者に読みやすいように最大限配慮されている。

最先端の科学を紹介するノンフィクション作家の偉大さに圧倒されたものであった。

私自身の「人生を変えた1冊」といっても過言ではない。



モラトリアム時代に

唯々手探りであった学部生時代前半。何をしてこの時間を過ごせば良いのか、持て余すエネルギーをぶつける先をわかりかねていた。

そんな時に出逢った1冊。

当時、立花氏が属していた東大のゼミ生とまとめた「数多くの方々の二十歳のころ」

どんな内容が記されていたかなど全て忘れてしまったが、当時羅針盤の如き存在となってくれていた1冊。


知の巨人とは何者か

立花隆氏の著作を読むうちに、彼のことをもっと知りたくなった。

そこで、氏の半生や過ごし方、交友関係なども綴られている1冊を読んだ。

武満徹氏を知ったのも立花隆氏の御陰である。


膨大な読書量を誇る氏の紹介する書籍を手掛かりに私は読書に没頭した。



読んだ著作(の一部)

各界の方へのインタビュー作品。


金字塔

これが有名なる角栄を倒した著作


脳から最先端のサイエンスへ

氏は脳科学へ興味を持ち始め、さらに様々な分野の最先端のサイエンスを紹介するノンフィクションを上梓する。

当時の大御所や新進気鋭の研究者へと鋭い質問をぶつけていく。

科学の内容は古くなっても、取材、編集といったプロセスは古びることはない。

以下に登場する研究者の顔ぶれも圧倒的だ。

人体再生学について斬り込んだ1冊。


当時話題になった捏造事件にも斬り込んだ。


次々と披露される本の数々

サイエンスのみならず、哲学、政治経済、人文、歴史、サブカル、エロなどなど

幅広い書籍によって、世界の大海の広さを知らしめられ、私の無知を痛感させられ、影響を受けて手に取った書籍は数知れない。



圧倒的なる熱量は圧巻

東大での立見が出たという講義を収録した講義集は圧倒的。

学生の頃のモラトリアムな時代にこそ、圧倒的な知識の大波に飲み込まれてぶっ倒れる経験、そして起き上がってその片鱗から辿っていく、そんなプロセスを味わうことは良い経験だと思う。



考え方

かつて筑紫哲也さんのニュース番組には準レギュラー?という頻度で登場されていたり、メディアで拝見することが多かった頃があった。

しかしそれから時が経ち、あまり登場されなくなった時期になっても生き方や考え方についての著作は時折刊行され、私自身、その度手に取っていた。

そして、その度に氏の思考法に影響を受けた。



おわりに

今日は、今日のうちにどうしても思いを伝えたかった。

でもあらためてゆっくりと氏について思い返しながら綴ってみたい。

そう、過去の著作を読み返しながら。

以前、猫ビルを観に行ったことも良い思い出だ。

一度でよいから、「生・立花隆」を拝みたかったが、ついぞ叶わなかった。

本当に、私の混沌とした若き時代をすくい上げて下さったことに深く深く心より敬意と感謝を表したい。

貴方がいなければ、私は今、サイエンスを生業としていることはなかった。

これからも氏の著作を開けば、また逢える。

なのでまだサヨナラはいいません。


おしまい




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