見出し画像

大学で授業をします。

 もう10年ほど前になる。近衛通隆氏のお別れの会の後の席で、北朝鮮の面白さについて語っていたら、ある方に君、講師やらない?と声をかけられた。

 川崎を皮切りにさすらいの講師生活が始まった。声をかけてくれた人が「参考になるよ」と誘ってくれたのが佐藤優氏の講演会。いや、すごかった。本当にすごかった。こんな方といっしょ、先生扱いを受けていいのか?と戸惑った。

 そもそもそれまで、人前で話す機会がなかった。頼みの綱の大学の恩師は既に関東を離れていた。ゼミの先生を訪ねて「授業をやらせてくれないか」と頼んだ。快諾してくれた。

 特別講師として何度かの失敗を重ねて、授業は面白くなってきた気がする。学生たちの感想も毎年読みごたえがあり、嬉しい。

 それから毎年、ぼくは母校の教壇に立つ。講師控室で、コーヒーを飲み出番を待つ。講師控室は学生は出入り厳禁。そこでコーヒーを飲み、ゼミの先生を待つ不思議さといったらなかった。

 あまり偏差値の高い大学ではなかった。ただ学生の数だけは多いから、OBはたくさんいるけれど、母校で授業をするために帰って来た教え子というのは、先生にとっても格別だったらしい。ゼミのOB会も全然機能していないし。

 週刊金曜日で、特集記事を書いたことがあった。見開きでぼくと蓮池透氏の記事が並んだ。恩師は以来、ぼくのことを先生と呼ぶ。

 恩返しが出来たのかなとその時に思った。

 コロナの影響で講師の仕事はゼロ。取材のために北朝鮮にも行けない。しょうがないから本を読み、昼の仕事をいやいやながらこなしている。昼の仕事はそれなりに適性があるようで、人並み以上のいい数値を出せるのだが、それが今のぼくには少し悔しい。

 さて約1か月後。去年は立てなかった教壇にぼくは立つ。今年はZoomでのオンライン授業。オンライン授業のやり難さ、インフラの環境も体験出来る。空っぽになったキャンパスで、空っぽの教室で、ぼくはカメラに向かって話す。

 提示されたテーマは「報道が排除するもの」。さて、悩みますか。

 そんな体験が待っている人生なんて、なかなかない。

 ■ 北のHow to その111
 オンライン授業の先進国が北朝鮮。将泉というところにあるモデル農場を訪ねた時に、そこに住む農場の職員は金日成総合大学のオンライン授業を受け、またデータベースや論文に触れているのだと聞きました。
 なかなかかの国の教育の実態は見られませんが、日本の四苦八苦ぶりを通して、オンライン授業についての経験を積んで次回の訪朝に備えようと思います。 

#オンライン授業 #北朝鮮 #Zoom #平壌 #コロナウィルス #大学 #編集者さんと繋がりたい #北のHowto #東海大学 #週刊金曜日 #教育 #恩返し #コラム #エッセイ #恩師 #佐藤優 #近衛 #特別講師

 

サポートいただけたら、また現地に行って面白い小ネタを拾ってこようと思います。よろしくお願いいたします。