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約束された結末。白頭山大噴火を見て

 写真は在日コリアンの友人からもらった北朝鮮の「金正日将軍の歌」の切手。白頭山と天池が描かれている。空いていたガラスの額に入れて家に飾ってある。

 その白頭山が噴火する。「半島が、崩壊する」というコピーにネトウヨ界隈はどっと喜んだ!なんてことはないか。

 白頭山は朝鮮民族にとっての富士山のようなものだから、日本における富士山の大噴火と同じ。フィクションではなく、実際にリスクとして見なければならない問題。噴火の可能性が実際に懸念されている。

 ここからネタバレ。

 

 白頭山には3つのマグマだまりがありとされ、1つ目のマグマだまりの噴火で、朝鮮半島はもうボロボロ。朝鮮半島崩壊を防ぐためには、北朝鮮の核弾頭を白頭山近郊の炭鉱から突っ込み、爆破させることでマグマを流すという、実に大味なストーリー。

 韓国軍の爆発物処理班の大尉(ハ・ジョンウ)が、自らの部隊を率いて、北朝鮮へ潜入。北朝鮮の人民武力部(ようは軍ですね)の工作員(イ・ビョンホン)と接触し、ふたりで作戦の成功を目指すわけだが…。

 嫌な予感が最初からぷんぷんした。

 絶対これ、最後イ・ビョンホン死ぬ流れじゃん。死亡フラグばっちり立ってる。

 韓流映画、ドラマの北朝鮮ものの多くは、北側の主要人物が死んで終わる。これ、韓流あるある。

 その点「愛の不時着」なんて、奇跡である。第三国(たぶん、スイス?)で邂逅を重ねるふたりという結末には「ないやろー!」とひっくり返った。少なくとも、ヒョン・ビンは出国できるわけがない。総政治局長である父の威光をもってしても。

 予想通りイ・ビョンホンは死んだ。最後にハ・ジョンウに娘を託して最後、核弾頭を詰めた起爆装置と共に炭鉱の奥底に沈む姿を見て涙…、レモンタブレットを食べる姿に涙、するわけがない。

 「スパイ・リ・チョルジン」でもそうだった。「レッドファミリー」でもそうだった。またこの結末か!と思う。

 別にこの映画をもって進歩派から保守派への回帰が…、とは思わない。だが、愛の不時着は進歩派の文在寅大統領じゃなきゃ出来なかったと思う。この映画は、どちらでもたぶん制作、放映出来る。韓流映画、ドラマの北朝鮮ものを見る時はいつ作られたか。また、その時の政権が保守派(北朝鮮に厳しい姿勢)進歩派(北朝鮮に歩み寄る姿勢)かを見る必要がある。というより、それが分かればだいたいの結末が見える。

「人が死ぬのはそりゃ悲しい。だがそれを結末とする韓流ドラマは俺は大きらいだ」。21世紀初めの韓流ブームの始まりの時に、脚本家の先生が吐き捨てるようにそう言っていた。

 ぼくも全面的に同意する。そして、大概最後に死ぬのは北側のメンバーというワンパターンな結末にうんざりする。

 ある在日コリアンの友人は、1年後に南北共同で復興委員会を立ち上げるというニュース報道の結末に一定の評価を示していた。

 もうひとつこの映画には疑問を感じた。マグマだまりは無くなり、噴火のリスクは減ったものの、核汚染はどうなったのだ。1年後に復興委員会というけど、その間措置はどうしたのだろう。まさか、ずっと漏れ漏れだったのか。

 火山の噴火は抑えられ、北の核兵器も処分できた。イ・ビョンホンの娘もすっかり落ち着き、ハ・ジョンウも無事母子と会うことが出来た。もしかしてハッピーエンド?

 いやいや。そうではない。核ってのは爆破したら、あるいは「無くなれ」と思った瞬間に魔法のように消えるものではない。処分し、除染し、長年その影響に怯え、また対策しなければならない。東日本大震災と福島第一原子力発電所のことを知る日本人なら、そう思うのではないか。

 北朝鮮と核というテーマに斬り込みながらもそこが浅かった。実に、実に残念だった。

 あるいは北朝鮮に配慮したか。2019年制作の映画。北朝鮮の核兵器で民族の聖山と朝鮮半島を守るという筋書きなら、北側も問題としないか。妥協点を探りながらの制作だったのかも知れない。

 評価は ★★★☆☆。背景の荒廃した北朝鮮の風景には、ストーリーとは対照的な完成度と共に一抹の寂しさを感じた。

 ■ 北のHow to その126
 日本で公開される韓流映画、ドラマは当然韓国の公開の時期より遅れます。制作された年が保守派政権の年で、日本で公開されたのが進歩派政権の年となるとズレが生じます。いつ作られた映画なのか。その時の韓国の政権は保守派、進歩派どちらかを見極める必要があります。それでストーリーは大きく変わります。

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