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下卑田与太郎
2022年7月12日 23:29
(一)「はあ……」ぼくは今、海に向かう電車に乗っている。下り方面の電車ではあるが、しっかりと電車は混んでいて、休みの日は旅客が語らうためのだろうボックス席には、朝から疲れたサラリーマンが死んだように眠っている。ぼくの会社は海まで到達することも無い駅にあって、毎朝ぼくはいつだって自由に海に行く権利を持っているのに、一度だって自由になろうとしたこと、出来たことはないのだった。せっかく海に向か
2022年5月4日 08:21
(一)「あのさあ」同居人はリビングのソファの上にどかりと座って、クルクルと回るオシャレぶったファンを目で追いながら、そう口を開いた。「それってぼくに言ってる?」「あんた以外誰がいるのさ」「それもそうか」冷凍庫から買い溜めていた冬季限定のアイスを取り出す。6月末の昼下がり。梅雨も終わり、ムシムシとした暑さが身体にべっとりと張り付くようだ。「お、アイス食べんの?しっかしさー、あ