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10秒で学ぶ!イギリス英単語フレーズvol.19「イギリスのサンタはサンタじゃない」

10月末、ハロウィンが終わるや否や、スーパーなどの小売店にはすぐにクリスマス商品が並び始め、町の飾りつけも寒さが深まるにつれ、どんどんクリスマスモードになっていくのは、日本も同じでしょうか。

毎年この時期のイギリスは、夜10時まで明るかった夏とは一転、日照時間が大幅に減るので、冬時間への移行があり10月の最終日曜日に、1時間時計の針を戻します。11月に入ると外はもう午後3時には薄暗くなり、子供たちの学校のお迎えの帰り道である16時過ぎには、ほぼ夜と変わらない暗闇をトボトボ歩くことになります。

なので、この時期には早くも派手な電飾をつけて、ライトアップしている家もあるくらいです。ツリーもこちらの人は、玄関や窓際に置いて訪問者や通行人に「見せる用」と、リビングで自分たちが愛でるものと2体持っている家が多く、そのどちらも大層立派で大きいことが多いです。

「見せる」用のツリーが置いてある部屋は、明かりを消してツリーのライトだけを点灯させるのでいい感じの雰囲気ができ上がり、クリスマスムード満載です。一方わが家は日本人家庭なので、そんなご立派なツリーをわんさか所有しているわけもなく、クリスマス用品を飾ってある場所は常に誰かしらいます。よって、普段は電気が煌々と灯り、飾りとしてのライトを点灯させる機会がほとんどありません(関連記事)。

なので、お迎えに出るこの午後の時間は、ライトを灯す格好、かつ唯一のチャンス!窓際に電飾つきの飾りを置いて、家を出るときにスイッチを入れておくと、帰ってきたときにほんのり色づいたわが家を見れるという、極めて些細な楽しみ。

その後、ライトはつけっぱなしでもいいんですが、やはり日本人なのでカーテンを閉めたく(こちらの人たちは、気にせず家の中を見せています・・)、閉めてしまうと我々家にいる住人はライトアップ終了・・ということを日々、繰り返しております。

さて、いつもながら前振りが長くなりましたが、ここからがやっと本題。マガジンの趣旨どおり本当に10秒で終わらせたい方は、いつも記事中の写真に答えが書かれているので、それだけをご覧ください♪

読みものとしても楽しんでいただいている方は、お待たせいたしました。さっそく今回のテーマについてお話ししましょう。

ほかのマガジンでも紹介しましたが、イギリスにはサンタさんという人物はもともとおらず(まぁ、それを言ったら日本もそうですが)、代わりにこういうおじいさんがいました。

というより、おじいさんどころか、人間ですらなく?なんと妖精(elf)だったようです。固有名詞的使い方なんで、fatherのfは大文字です。それをちょっと確認しようと思ったら最後、いつものように長〜い歴史が出てきてしまい・・見て見ぬふりもできないので、以下に簡潔に(苦手・・!)まとめます。

酒好きパリピだった?大人向けのキャラクター

サンタクロースとは、昔からクリスマスを象徴するものではあったのですが、つまるところ戯曲や小説といった架空の登場人物であり、少なくともイギリスにおいては

Father Christmas→St Nicholas→Santa Claus

という途中さまざまな祝いごとが、そのときどきの政権により禁止されるなど、紆余曲折を得ながら現在の形にたどりついたものです。はじめはファーザーすらついておらず、地域やお話によって「サー・クリスマス」だったり「キャプテン・クリスマス」「クリスマス卿」「クリスマス王子」だったりして、年齢職業不詳な感じになっています(出典: “The History Of Father Christmas” The English Heritage 2021.)。

こういった、キャラクターとしてはじめて擬人化されたのが15世紀で、19世紀の頃にはファーザーがついているのですが、いまのようにホッホッホ!と朗らかに笑いながらプレゼントを配る心優しき白ヒゲのおじいさん、というイメージは完全にアメリカで作り上げられたもので、まだ少し先の話。

なぜかと言うと、いまと昔ではクリスマスの祝い方が違ったから。19世紀のファーザー・クリスマスと言えば、宴の主役、幹事といった役割で、その歴史についてまとめてあるこちらの出典元サイトを見ると、酒瓶片手にクダを巻いていたり、ほかのどの絵を見ても野卑な印象の挿絵ばかりで驚きます。子供たちよりもむしろ、大人が呑んでドンちゃん騒ぎ、楽しむといった日だったよう。

「ファーザー」になるまで

服装面や見かけ上、「ファーザー」を彷彿させるようになった発端が、1616年に宮廷でお披露目された脚本家、ベン・ジョンソン(Ben Johnson)による戯曲。作中でまだ「オールド・クリスマス」とか名乗らせていたキャラクターが、その名のとおり古臭い格好に薄いヒゲを長く垂らしていて、「てかこのキャラクターってさ、明らかにオッサンだよね、それも子連れの。うん、絶対そう」ってことで、それ以降ほかの戯曲でも、ファーザーとつくようになった模様。

1658年にはタイトルに'The Examination and Tryall of Old Father Christmas'とついたパンフレットが登場し、まだオールドがついてるけれど「ファーザー」の名が正式に世に出回りました。「オールド・ファッション(古風)」な服装は相変わらずでしたが、この頃には羽織りものもふさふさとしたファーがついたガウンにグレードアップし、ヒゲももっと豊かな、こちらでよく使われる

as white as the snow

というほどの真っ白な顎ヒゲに変貌を遂げました。

より真面目になっていくファーザー


時代とともになにごともスマートになっていく世の中、ファーザーの役目とクリスマスの定義もどんどん変わっていき、ビクトリア時代(1837年〜1901年)の19世紀に入ると、大人だけではなく子供とその家族を中心とした、よりファミリー感の強い行事として位置づけたい(お上の??)意向が働きはじめました。

ようは、もちょっとお行儀よい雰囲気にしようや、ということで、これまでの呑んだくれた、ときに貧相な?感じではない・・

む!もっとふくよかで明るいキャラクター!幸運もたらして!

みたいな需要が高まってきて、そこに現れたのが外来の人物、セント・ニコラス(St Nicholas)。

現在の形へ、サンタクロースの誕生

あぁ、やっぱり全然簡潔じゃない!私の記事・・。気を取り直して、名前もちょっと似てるとおり、こちらがサンタクロースの語源とも言えますニコラスさん。生まれは現在のトルコで、当時はギリシャの領土だったところ。

なのに、このニコラス司教と深く関わりがあって、命日の12月6日聖ニコラスの日として祝っているのはドイツやベルギー、オランダといった国々で、特にオランダではSinterklaasと呼び、毎年盛大なイベントが催されます。

イギリスでもこの習慣がドイツから入ってき、赤いマントプレゼントを配るいまのサンタクロースの原型はこの頃にできたようですが、この頃常について回っていた宗教関連の問題で、早々になくなってしまいました。

そのため、私が4年以上前にこちらに来た当初より、イギリスにそんな行事は存在せず、長らく知らないままだったのですが、ある年クリスマスに里帰りしてきたオランダ人の友人から、みやげ話と写真を見せてもらい、初めてそんな習慣があることを知りました。

まだまだたどり着かない、イギリスとサンタクロースの繋がり・・。これまた初めて知りましたが、19世紀初頭のニューヨークというのはオランダの植民地であり、ニュー・アムステルダムと言ったんですね!当然オランダ人の移民も多く、そのときにこの聖ニコラスの伝統と習慣も一緒にアメリカに持ち込まれ、それが英語のSanta Clausに、日にちも12月6日ではなくクリスマスの時期、25日になりました。

この言わば、サンタクロースの最終型完成版とも言えるバージョンが、その後の文学やコカコーラといった民間企業の宣伝にたびたび使われた結果、世界中に広まり、現在にいたるというわけです。

言ってみれば、イギリスにも一時あった習慣が、オランダ人によってアメリカまで海を渡り、それがイギリスにまた戻ってきた、逆輸入のような状態ですね。

さらに端的に言うと、特にご年配の方などはサンタクロースはアメリカのもので、「いまどきの若いモン」はそうとも言うね、っていう位置づけかと思います。

はぁ、全然これ、違うマガジン向けの長さでしたね。書き始めた当初はまさかこんなにも広がってしまうとは思ってもみず・・。いつも長々とおつき合いいただいてる皆さん、はじめての方、本日もお読みくださってありがとうございます!

こちらはなんと、「ひぐち @ デンマークで仕事中🇩🇰」さんが立ち上げられたアドベントカレンダー企画の「Let's シェア! 外国のクリスマス🎄」にも登録していただけました。

さまざまな国でのクリスマスの過ごし方、様子などがクリスマス当日まで毎日投稿されているので、おウチにいながら世界のクリスマス気分を味わえます✨

それでは皆さん、よいクリスマスをお迎えください🛷🎅

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