Draw in the sea(「彼等をめぐるすべて」より)
心地よい浮遊空間に波の音が響いた。きらきらと光る水面に照らされる姿。恋人の名前を呼ぼうとした矢先、慣れたシーツの感触と共に全身に重力を取り戻した司は、目覚めと共に何度か瞬きを繰り返した。レースカーテンの向こうでは雨が降り続けている。夕方のそれは暗く、いつの間にか眠ってしまったらしい。
ベッド横にある気配にほっと息をつく。さらりとした黒髪の隙間から見えるうなじに、眠る前の情事を思い出した。
「計くん、さ」
思いのまま声を出すと、こちらに背を向けていた恋人がびくりと肩を震わ