宮内ぱむの日記のようなもの
慌ただしかった2024年もわずか数日を残したある日、帰省途中の電車でふと、小学六年生だった頃の年末年始を思い出した。 当時の私は中学受験をすべく、進学塾に通っていた。 通常であれば日曜日や年末年始は休みだったのだが、受験間近となったその年だけは母の作ったお弁当と重たい参考書を背負って塾に通い詰め、その非日常感に私はウキウキしていた。 特別勉強が好きだったわけでもないし、勉強熱心な家庭に生まれ育ったわけでもない。 ただ、小学校に入学した当初から(もしかしたら保育園に通
うまく文章が出てこない。現在進行形の話である。 そういえば三月にも同じような症状に苦しんだ。三月といえば、BB小説家コミュニティ7期が終わり、気が抜けたのか謎の発熱を発症しながら年度末の忙しさに振り回されているうちに文章の書き方を見失った、地獄のような一か月間だった。 BBコミュ7期が素晴らしかったので、三月早々に8期のスタンダードプラン入会を申し込んでいた私は、三月のその状態を引きずったまま非常に悩んでいた。何せ、文章を書けないのである。しかし迎えた四月、私の焦燥をよ
実家のトイレの壁には年間カレンダーが貼られていて、子供の頃の私はそれを見るのが好きだった。そしていつも疑問に思っていた。 なぜ2月には28日しかないのだろう…。その疑問は未だに解消されていない。 2023年2月の終わりは、私の拠り所となっていた場所の終焉を示す。私は明日からどうやって生きていけばいいというのか。 というわけで。 #BB小説家コミュニティ 第7期感想レポート第2弾、はっじまっるよー!!! (前回までのあらすじ) 小説を書く上で自信喪失していた私は
自慢ではないが、私の小説書き歴は短くない。 中学生の頃に大学ノートに書き始めたのをきっかけに、大学時代も勉強を疎かにしながら個人ホームページ(そういう時代である)を作成して自作の小説を公開し、就職してから数年間は執筆から離れて仕事に没頭したものの、数年前に二次小説という形で簡単に小説を書く方法を取り戻してしまった。 そして忘れもしない2020年の春、コロナ禍に沈んだ日々のなかで、私は再びオリジナルの小説を書きたいと思い、筆をとった(正確にはパソコンに向かい、ワードプレス
note特集に沿った月1回更新のエッセイ
早いもので、年の瀬である。 note公式にて企画された #note特集 もついに12回目! 今回は、#買ってよかったもの 特集に沿って、記事を書こう。 コードレス掃除機数年間欲しいと言い続けていたコードレス掃除機、ついにゲットだぜ! というわけで、悩みに悩んで日立のパワーブーストサイクロンシリーズを購入。 日立のコードレス掃除機には「軽さ」を重視した商品と「パワー」を重視した商品があるのだが、私はパワーを選んだ。…結果、重さ1.9Kgとあまり軽くはない。掃除し続けてい
高校生の頃、漠然と「強くなりたい」と考えていた。それと同時に「弱さは優しさの証だ」とも思っていた。 誰かのために優しくあれば、弱くたっていい。それは弱かった自分に対する言い訳だったのだろうか。今でも分からない。 「光のとこにいてね」(一穂ミチ)読書感想 タイトルから惹かれた。口語体のようなそれは、ある登場人物のセリフだった。 これは、境遇の似通わない二人の女の子の物語だ。 全く別の人生を歩むはずだった二人の道が交差するのは、単なる偶然ではない。成長するにつれて関
気付けば秋である。 年齢を重ねるごとに寒さに弱くなっているのは気のせいだろうか。仕事後の時間のほとんどを入浴に費やしている気がする。お風呂が好きです。 私が一人暮らしをしている理由に人間を含めた生き物と過ごすのが苦手というどうしようもない理由があるのだが、それでもときどき生命のエネルギーに触れたくなる時がある。 以前から観葉植物には興味があり、色々と調べていたのだが、なかなか踏ん切りがつかなかった。なにせ相手は生き物である。気分屋で怠惰な私が飽きてしまったら、彼らの
へいヨー! note特集ダヨ! 9月号ダヨ! 今日は9月34日です(嘘です記事が遅くなりました) そんなわけで、note特集の #秋を愉しむレシピ に沿って、料理苦手な私が記事を書いていこう。 (ちなみにツイッターでフォローさせて頂いている方のなかには、料理人の方や主婦の方がいらっしゃるのだが、本当に目をつむっていただきたく…) 舞茸ご飯を作った深夜 9月某日、仕事でへとへとに疲れて帰宅した22時、「明日も仕事だテンションあげなきゃ!」と思い至って、冷蔵庫にあった舞茸の
宮内ぱむの小説(短編)
俺は途方に暮れていた。十二月の乾いた空気が疲れ目をちくちくと刺してくる。 「すみませーん!」 先ほどから古い民家に向かって声をあげているが、応答はない。 ずいぶんと久しぶりにやって来たこの町は時間が止まっているみたいだ。さびれた駅から徒歩三十分にある、片田舎の景色。車が通るのもやっとなほどの細い道に、密集する古い家。昔から変わっていない。 冬風が小道を吹き抜ける。晴天の下に侘しさが積もっていくのを散らすように、俺はわざと声を張り上げた。 「誰かいませんかー!」 俺の
海に住む者にとって、特に盛り上がる行事がある。それが陸海婚活パーティーだ。 「選ばれた女は、陸の男のお嫁さんになれるのよ」 それは、海の女達にとって楽園の出来事のようだった。なぜなら、陸の上を自由に歩行する足を得られる。そして寿命もぐんと延びて、陸の男の傍で幸せに暮らせるというのだ。 繊細な鱗の尾ひれを持つジュリエットが、うっとりと目を輝かせた。 「今年選ばれるのは、私よ」 確かに彼女は美しい。海を泳ぐ姿は美しく、その歌声は魚達を優雅にさせた。 そしてパーティー当日
商店街を歩いていると、見覚えのない店を見つけた。小さな看板には「旅できる香水」と書かれている。誘われるように私は引き戸を開けた。 「いらっしゃい」 出迎えた店主は、想像とは違って渋い顎髭を持ったおじいさんだった。 「旅できる香水屋にようこそ」 店主は私に、目の前にあるソファーに座るように促した。 店内はずいぶんと殺風景だった。無機質な空間に不釣り合いなほど柔らかなソファーが私を包む。ほどなくして、店主が棚から小瓶を取り出し、私にそれを渡してきた。 コルクを開けると、
十二月を彩る赤や緑に混じって、カラフルな光が乾いた空気に溶け込んでいく。 地下街の広場に飾られたツリーは、毎年のようにデザインが変わる。ホワイトベースで統一した年もあれば、カラフルさを演出する年もある。今年は、様々な形を施したオーナメントが緑色のツリーに点在していて、懐かしさが喉元に込み上がる。子供の頃にはあんなにもクリスマスツリーにときめいたのはなぜだったのだろう。 クリスマスまであと十日。仕事の疲れを引きずったまま呆然とツリーを見上げる私の傍を、手を繋いだカップルが
別名義の作品の一部
考察、 世界は矛盾でできている。不条理で残酷で、優しさのかけらもない。かつていた少年は、大人になっていた三年前、真実を追う事には理不尽さがつきまとうと言った。そしてそれを、他人には負わせたくないとも言った。それは優しさによるものではなくて、理不尽そのものの大人のエゴだと僕は考えた。 物事は常にまっすぐに成り立っているとは限らない。昨日晴れていた空が今日には雨を降らしているように、世界は僕達をあざ笑うように変化を繰り返している。 観察期間中に遭遇した事件にて、彼は現場に
アインシュタインの相対性理論に関する考察本が、ベッド横のチェストの上に置かれている。理論上、人類が未来に行く事は可能だという。 「タイムトリップなんて、現代を生きる人間の傲慢さがそのまま表れた欲望だわ」 思う節があるのか、自嘲しながら彼女は言う。 「そもそも古代では、時間という概念は普遍かつ絶対だった」 布団を口元まで被った彼女はそう言うけれど、時間が絶対的なものではないという事を、俺は肌で感じているのだ。この部屋で過ごす彼女との時間は、外の世界とは遮断されているかのよ