見出し画像

整形外科医療人の叫び

整形外科医療人の叫び
~患者さんに知っておいてもらいたい10のこと~

はじめに

この文章を書き始めるにあたって言おうかどうかだいぶ迷って書くことに決めました。本当だったら言わないほうがいいのかもしれませんがやっぱり医療施設で患者さんと触れ合う立場としてはこれくらいの事を知っておいてくれるとありがたいなぁと思うと同時に知らずに通院を続けている人が多くいるのも事実なのです。 伝えられる人にはうまく言葉を選んで伝えるのですがこちらも商売になっている以上客足(この場合客と書かせていただきました、すみません)を遠ざけるような事は出来ない、けど病院という施設に依存させてしまうのも良くないと思っているが故、どこまで話そうかとても迷います。 これを読んでくださった方が病院に行こうかなと考えた時にここに書いてあったことを思い出して、少しでも良い心構えが出来たらと思い執筆させて頂きました(決してただ愚痴を吐き出したかっただけじゃないですよ) しばしお付き合い頂けたらと思います。


その1「治してもらえると思わない」

 さて、いきなりとんでもない事が書いてあるなって思いました?僕は書いていてとんでもない事を書いてるなって思いました。笑 だって治してほしいから病院に行くのに治してもらえると思うなって書いてるんですよ?普通ありえないですよね。でもね、本当なんです。
 さて、どんな意味なのかを説明していきたいと思います。整形外科に通おうと思う人はどこかしらが痛かったりなどの不調があるから病院に行きますよね?そんな中でも治してもらえるものは「身体の構造の異常」なんです。骨折したら手術して骨を繋いだりというようなイメージですね。つまり「身体の機能の異常」は他人には治せないんです。腰が痛くて来ましたという患者さんがいたとします。レントゲンを撮っても骨に異常はありませんでした。痛み止めを処方したり注射をしたら痛みが収まるかもしれませんがそれは「症状の改善」であって根本的な原因の治療にはなっていません。もしかしたら腰痛の原因普段の仕事での姿勢や骨格の歪み、椅子の座り方などから来ているかもしれません。病院のリハビリなどでもその症状の原因になってそうなもの、生活へのアドバイスや体操などは指導出来るかもしれませんが最終的に気を付けて治すのは自分なのです。揉んでもらって治らないという話をよく聞きますが医療人からすれば当然で揉んでもらって気持ちよくなりたいならマッサージ屋さんに行ってもらうべきなのです。たまに筋トレをするときついことをされたとクレームになる事もありますがそこはしっかりと患者さんに説明をして施術に入ることが必要になるのでしょう。
今回は腰痛を例に出してお話させてもらいましたが肩の痛みでも足首の痛みでもはたまた骨折の後の痛みなどでも同じことが言えるパターンは結構多くあります。病院に行くときは客観的に見たアドバイスを貰い、自分で実践するつもりで通うと良いと思います。


その2
 「すぐに治る奇跡の技はない」

 2つめはよく患者さんから聞く「やった後はいいけど1日たったらまた元にもどってしまった」という話に関係しています。結論から言うとその通り!人の身体には恒常性といって「変わらないように保つ機能」と「環境に適応しようとする機能」があります。熱を出したときなどは平熱に戻るように身体が働いて数日後にはほとんどの場合が戻りますよね?また、椅子などに座って何時間か抗議を聞いていて、その時に猫背になっていても立ったり寝たりしたら一応まっすぐになれますよね?このように人の体は単発の刺激が入ってもその後には元に戻るように働く機能があるのです。逆に考えれば椅子に座っていてその後に立ったら背筋がずっと伸びなくなったら困ってしまいますよね。一回施術を受けて治ると思ってる人は人間の身体の機能を無視した願望が先に来てしまっているのです。というよりも普通の人は人間の恒常性なんて普通考えないですよね。
そしてもう一つの機能、「適応しようとする機能」ですがこれは繰り返し入ってくる刺激に対しては耐えらえるように適応しなくては!となる機能です。わかりやすいのはストレッチをすると1日だけではそれこそすぐに戻って次の日にはまた硬くなってしまいますが毎日毎日続けているとだんだんと柔らかくなってきます。これは身体が「あ、この刺激はいつも入ってくる刺激だから耐えられるようにならないとダメだ!」と感じて反応するのです。筋トレなんかもこの類ですね。
そういった人間の機能を考えると「すぐに治る奇跡の技はない」というのもある程度納得して頂けるのではないかと思います。


その3
「万人に共通の体操はない」

 この項目も前の項目と少しかぶる部分がありますが痛くなる原因は十人十色千差万別。また、一つの症状でもたくさんの原因が絡み合っていることも少なくありません。そんな中腰痛の体操のように曲げる運動、反らせる運動など色々な種類の運動が紹介されていても「どれもいい感じがする!」なんて事はなかなかありえないのです。もしあるとすればその状態はだいぶ「正常」に近い状態かもしれません。
 じゃあどうしたらいいのかな?と思った時にはまずちょっとやってみて「疲れるけどきもちいい」「そのあと少し楽になった感じがする」などがあれば継続。「痛み」や「不快感」これ以上やったらまずいな。という感じがしたらやらない。これが一番無難な方法だと思います。最近はテレビでも色々な健康法や体操の紹介をしていますがそれも同じで一般的に考えれば身体にいいとされている方法を紹介し、どのくらいの強度でやったらほうがいいかなどは細かく伝えてくれません(または安全だと思われる回数の紹介しかしてくれません)そんな時もまずやってみていい感じがするかどうかをチェックしてみるのがいいと思います。
 理想的にはその人に合った原因を見つけ、その人に合った運動などの提案をしてくれるのが病院や医療機関のベストなあり方だと思いますが、そのような人に巡り合うのも半分運のようなものがあるのも現在の医療の問題点かもしれません。医者やセラピストの能力を数値化したりランク付けしたりがなかなか出来ないですからね。


その4
「1日5分で効果は出ない」

これは運動でも、ストレッチでもそうなのですがよく「1日5分でお腹まわりすっきり」みたいな宣伝あるじゃないですか。医療機関から指導された運動でも、テレビでやってる体操でも同じですが正直なところ1日5分で効果が出るのは厳しいと思います。これがほぼ寝たきりだったりやっとこさ動いているようなギリギリの筋力レベルの人であれば効果は期待出来るとも思えますがある程度普通の日常生活を送っている人が1日5分で効果を出すのはかなり厳しいのではないでしょうか。
 先にお話しさせて頂いた恒常性の話を思い出してください、人の身体は変わらないように頑張るので5分間の良い刺激(ストレッチとしましょう)を与えても残りの23時間55分で良くない姿勢だったりをしていればやっぱり悪いほうが勝ってしまいます。もちろんその5分でも長く続けていけば効果は出るかもしれませんが10分やった人より長くかかる可能性があるのはなんとなく想像できると思います。

※ここで注意
 人の身体の難しいのは必ずしも2倍の時間をかければ2倍のスピードになるとも限らないし増やしすぎ、減らしすぎはそもそも効果が出ない、悪化するなどの可能性を秘めている事、遺伝的に効果の出やすいものがあるという事を踏まえた上で「いい塩梅」というのを探して行っていかないといけないのです。

これが一番厄介で「いや、自分は5分で効果が出たよ」って人もいれば「1時間やってもダメだったよ」とゆう人が出てきてしまうのです。一般論としてみんながある程度納得できそうな答えを準備するならば
「1日5分間、必死で行い(筋トレならば次の日に筋肉痛になったりするくらい)、それを継続(人の身体が環境に適応したり筋トレで筋肉がついたりするには早くて2ヶ月~3ヶ月くらいかかってもおかしくありません)出来たら効果は出るかもしれません」
そうで無いならば「もう少し多くの時間」「達成感があるくらいの時間か量」をかけてあげることが大切です。なので「病院に行った時だけリハビリで運動すればいい」なんて間違っても思わないでください。日常生活でも色々と心掛けないといけないことがあるんだなーと思っておきましょう。

その5
「治るものと治らないものがある」

ここから先は

4,796字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?