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スタイリスト目線で見た『華麗なるギャツビー』ファッションスタイル分析

はじめに
今回は、映画『華麗なるギャツビー』をアメリカのファッション史と関連づけてスタイルとその背景に迫ります
この映画は、1920年代のアメリカの社会と文化を反映した、ファッションの宝庫であり、ファッションの魅力を放っている映画の一つです
時代背景によってのファッションの変化や、キャラクターのファッション設定、またその表し方など、スタイリスト目線でまとめてみました
ご覧いただけましたら幸いです





1. アメリカントラッドの歴史
まず、アメリカントラッドについて簡単に触れておきます
19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリスのクラシックなスタイルを基にしながら、アメリカ独自のカジュアルさと実用性を取り入れたスタイルがアメリカントラッドです

代表的なアイテムは
スーツ、オックスフォードシャツ、チノパン、ネクタイなどがあり、これらはアメリカのエリート層や大学生に広まり、やがてアメリカを象徴するファッションとなりました

また、1920年代のアメリカは、経済的な繁栄と文化的な革命の時代でファッションも多様化した時代です
メンズウェア
・スリーピーススーツ
・ボーターハット
・オックスフォードシューズ など

レディースウェア
・ショートヘア
・フラッパードレス
・ロングパールネックレス などが流行しました
この時代のスタイルは自由と革新の象徴がファッションを通して伺えます


2. 『華麗なるギャツビー』のファッション分析

ジェイ・ギャツビーのスーツとタキシード

ギャツビーのファッションは、アメリカントラッドの真髄を体現しています
彼のスーツはすべて上質な素材と洗練されたカッティングが特徴のスーツで
特に印象的なのは、彼が重要なシーンで着用するスーツは白やクリーム色やピンクなど、現代のビジネスシーンではありえない色合いを多用し着用することで、彼のステータスや貴族としての振る舞い方やヒロインに対しての想いを体現させています
つまりこの着こなし方によって、彼の純粋な夢と理想を象徴させる表れのように感じさせます
一方、フォーマルウェアのブラックタイ(タキシード)は、彼の社会的地位と成功を表し、装いのからなる格式を強調させるものになっているもので
ポケットチーフやカフリンクス、ネクタイピンなど細部にわたるこだわりはギャッツビーの完璧主義な性格を表し、また社会に対する反骨精神を感じるものとして表現しています


デイジー・ブキャナンのドレス

デイジーのフラッパースタイルのドレスは、1920年代のモダンで自由奔放な女性像を象徴しています
ビーズやスパンコールで装飾されたドレスは、彼女の華やかさと同時に内面的な脆さを暗示しているもので、長いパールネックレスやダイヤモンドのティアラ、豪華なヘッドバンドは、デイジーの上流階級としての地位と贅沢なライフスタイルを示し、これらのアクセサリーは、彼女の繊細さと儚さをも象徴しています

ヘアスタイルとメイクにおいては
ボブカットのヘアスタイルと淡い色合いのメイクを施すことで、彼女の現代的な女性像を強調しています
これにより、彼女の自由さと同時に、時代の変革期に生きる女性の一面を表現するものとなっている時代背景が読み取れます


トム・ブキャナンのファッション

トム・ブキャナンのファッションは、彼の力強さと支配的な性格を強調するファッションが中心です
スポーティウェアを着用したシーンでも、ポロシャツや乗馬ブーツ、ラルフ・ローレン風のジャケットは、彼の粗野で力強いイメージを形成するものとして表されています

またトムのスーツは、ギャツビーの洗練されたスタイルとは対照的に
ベーシックカラーのスーツやレギュラーカラーのワイシャツなど多用し
保守的で伝統的なデザインで彼の古い価値観と階級意識が強調されています


ニック・キャラウェイのファッション

ニック・キャラウェイは、より控えめでカジュアルなファッションを選んでいます
オックスフォードシャツやカーディガン、チノパンといったアメリカントラッドのカジュアルな要素が時代背景を忠実に再現するものであり、彼の主要なスタイルです
これにより、彼の主人公とヒロインとの関係性や立場、中立性が表現されています

またスタイリスト目線でとても興味深く感じたことは
とても落ち着いた色味のスーツやシンプルなネクタイやラウンドカラーのワイシャツ、控えめながらも上品でデザインに凝ったものを着用することで
ニックの誠実さと控えめな性格が表されていることです
これにより、ストーリーテイラーとして物語を邪魔しない距離感が垣間見えます


3. ファッションとキャラクターの関係
キャラクターたちのファッションは、彼らの個性や社会的地位を明確に視覚化したものです
ギャツビーの完璧なスーツは、彼の自己創造と成功を象徴し、デイジーの華やかなドレスは彼女の優雅さと脆さを反映しています
トムは彼の力強さや威厳を、ニックのスタイルは彼の中立性をそれぞれ強調させています


4. 社会的背景とファッション
1920年代は「ジャズ・エイジ」として知られ、経済的繁栄と文化的革新の時代でした
しかし、その裏には禁酒法、社会的不平等、そして人種差別といった問題が存在し、『華麗なるギャツビー』は、その時代の矛盾を浮き彫りにし、アメリカンドリームの光と影を描き出しています
ギャツビーの成功と悲劇は、アメリカ社会の複雑な一面を象徴しています


5.考察
映画『華麗なるギャツビー』は、1920年代のアメリカ社会とファッションに対する深い洞察を提案したものです
それは現代のも通ずる社会的価値としてや普遍的な価値として、メッセージ性を感じさせるものでした

また、1920年代のアメリカは経済的繁栄と文化的革新の時代でしたが
その裏には禁酒法、社会的不平等、人種差別といった問題がありました
これらの社会的矛盾を浮き彫りにし、アメリカンドリームの光と影を描き出しています
ギャツビーの追い求める夢は、美しいが脆弱であり、最終的には崩壊してしまうものであることを示しています

以上、1920年代のアメリカ社会と映画『華麗なるギャツビー』を通じて
そのファッションに対する理解が深まるものでした
キャラクターの内面や物語の背景をより深く感じ取ることができ、この作品を通じて、ファッションはキャラクターを表すうえで強力な語り手になり
時代や人物を表現するための重要なツールであるかを再認識させてくれるものでした
みなさんにとってもファッションを通しての自己表現のきっかけになり
ファッションが楽しいものになりましたら幸いです


記事の執筆者
武藤 和也 Kazuya Muto
パーソナルスタイリスト

アパレルショップにて個人売上全国トップののちに、パーソナルスタイリストの資格を持ったプロ集団「ファッションレスキュー」に所属。男女問わず、総数2500人を超えるスタイリングを行い、これまでに新宿高島屋常駐や数々の映像企画のスタイリング経験を持つ。
現在は現場に立ちながら、服飾大学や美容専門学校の教壇に立ち、未来のスタイリストの育成も行い、20代~50代の今の時世や流行をふまえた、その世代その人となりの品格を活かすスタイリングの提案に努めている。

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パーソナルスタイリスト匠 武藤和也
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