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ライオン 25年目のただいま(2016)

日本にいてはわからない世界の現実に驚愕
グーグルアースが生みだした奇跡の実話

2012年、25年もの間、迷子だった男性が、グーグルアースで故郷を見つけ、家族に再会します。

これは今や日常生活に不可欠となった便利なツール、グーグルアースが起こした奇跡として、大きな話題を呼んだ実話ですが、この感動の実話が生まれるまでの過程に心底驚かされます。

そして、数奇な人生をたどったインド人男性サルーの幸せを願わずにはいられません。

【ストーリー】
1986年、インドのとある町で、母と4人の兄妹と暮らしていた5歳のサルーは、列車で夜の仕事へ向かう兄に着いていきます。ところが、兄のいない間に乗り込んだ回送列車が走り出してしまいます。
数晩走り続けた列車から降りた駅は、インドならではの混雑ぶりで、幼いサルーを気に留める人もいません。サルーは自分の住所はおろか、母の名前、自分の苗字さえもわからず、家に帰る術がまったくありませんでした。
ホームレスの子どもに混ざったり、子どもの売買をする大人たちに狙われたり、インドの過酷な現実が5歳の子どもに容赦なく襲いかかります。
しかし、警察に保護され、送られた施設で、オーストラリアに住む夫婦から「サルーを養子にしたい」という申し出があります。
オーストラリアへ渡ったサルーは、理解ある養父母に愛情いっぱいに育てられ、大学にも通い、何不自由ない生活を送っていました。
ところが、インドでの出来事を話した友人から、「グーグルアースで故郷を探せるかもしれない」と提案されます。そして、サルーの人生をたどる、“仮想”の旅が始まります。

グーグルアースが人助けをした、ということでドラマチックに思えますが、サルーの25年間を思うと、丁寧に触れなくてはいけないデリケートな問題が数多く含まれ、映画化するのは難しい題材だったと思います。

5歳の子どもがオーストラリアへ行かざるを得なかったインドの現実、インドの孤児を育てる養父母の存在など、遠く離れた世界の現実に驚くと同時に胸のつぶれる思いがします。

グーグルアースでの捜索は、サルーに新たな苦悩や葛藤を生み出しますが、それらを乗り越えた先にある再会シーンは、涙なしには見られなません!

『英国王のスピーチ』の製作陣による、堅実な作りに好感が持てます。サルーを支える養父母の心情、そして、タイトルの『ライオン』という意味など、さりげなく明かされる真実の数々にも心を打たれます。

大人になったサルーを演じるのは、米アカデミー賞作品賞受賞作『スラムドッグ・ミリオネア』の主人公の青年ジャマールを演じたデーブ・パテール。オーストラリアに住む養母をニコール・キッドマンが演じています。
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