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華氏119(2018)

トランプ大統領誕生がアメリカをどう変えるか?
稀代のドキュメンタリー映画監督、マイケル・ムーア渾身の一作

2024年秋、日本で新しいリーダーが誕生する中、アメリカのリーダーを決める大統領選が勝負の1ヶ月を迎えます。

今から4年前、2020年のアメリカ大統領選は、アメリカ国内外を問わず待ち望んでいた人が多かったのではないでしょうか?

2020年のアメリカ大統領選は当時の大統領ドナルド・トランプがアメリカ国民からの審判を迎える日でもありました。大胆な変革を掲げたトランプ大統領は、大方の予想どおり、就任直後から数々の独断的な行動により、アメリカはもとより、世界に混乱をまき散らしていたからです。

本作は2018年、多くの人々が“ありえない”と思っていたはずのトランプ大統領の誕生から2年の時を経て公開されたドキュメンタリー映画。製作は『ボーリング・フォー・コロンバイン』『シッコ』など、病めるアメリカの原因をつくった当事者たちにアポなし突撃取材を敢行し、アメリカの社会問題に深く切り込んできたマイケル・ムーア監督です。彼は、投票日前からトランプの当選を予想し、来たる暗黒時代を危惧していましたが、その声は届きませんでした。

【ストーリー】
公職未経験のビジネスマン、しかも破天荒な言動で知られた、“要注意人物”トランプがなぜ大統領になれたのでしょうか。アメリカ人の士気を低めた民主党予備選の顛末や、得意の舌戦で富裕層の共和党議員を攻撃し、労働者層の支持を集めたトランプの巧妙な選挙戦など、トランプ大統領を生んだ政治的背景が、ムーア独自のブラックユーモアを交えたシニカルな語り口で明かされます。

本作でムーア監督はトランプ大統領を生んだ原因として、アメリカ市民を悩ますさまざまな地域の問題を取り上げます。ミシガン州では、トランプの旧友である実業家リック・スナイダーが州知事に当選し、権力を乱用していました。とくにムーアの故郷でもあるフリントでは、スナイダーが金儲けで支援した公共事業の民営化により、人災的な水質汚染が発生し、子どもたちに深刻な被害が出たようです。

激しくなる一方の市民からの抗議に追い詰められた知事は、当時の大統領オバマに助けを求めます。市民は“弱者のヒーロー”オバマに期待しますが、市民との対話集会でオバマはフリントの水を飲むパフォーマンスを見せます。これには市民ならずとも、民主党への失望を抱かざるを得ません。

そんな政治家たちの性根や、奇行満載のトランプの言動を紹介した後に見せるのは、腐敗した権力と闘うために立ち上がった市民たちの姿。「誰もやらないなら私がやろう」と議員に立候補する労働者、低賃金への抗議ストライキを決行する教師や学校関係者、学校内での銃乱射事件に怒り、銃規制を強く訴えるフロリダ州の高校生たち……。

批判をしているだけでは、問題は解決しません。より良い未来を築くために、一致団結して行動するアメリカの人々の姿に素直に感動します。明るい希望を抱かせるラストが清々しい!

それにしても、実業家時代のトランプとテレビ共演していたり、彼の元側近スティーブン・バノンから支援を受けていたりと、ムーア監督の意外なつながりが本作に絶妙な “味”をもたらしています。

ムーアが注目された『ロジャー&ミー』で描かれた、ゼネラル・モーターズの大量解雇問題に続き、彼の故郷フリントに悲惨な出来事が起こったのは、残念なつながりでしたが、何といっても痛快なつながりは、『華氏119』というタイトルです。そのネタ元は、9.11からイラク戦争へと進んだブッシュ政権の闇を暴いた自身の代表作『華氏911』。どちらもアメリカ大統領が主人公という点にもニヤリとさせられます。

「アメリカを良くしたい」という思いが、この偶然の産物をもたらしたのでしょうか? 運や縁を“持ってる”ムーア監督は、まさに稀代のドキュメンタリー映画監督といえるでしょう。

トランプと対峙する荒療治を乗り越えて、アメリカがより良くなることを切に願いたい、と公開時は思ったのですが……。その後、トランプ政権はアメリカを分断したと言われています。

前回の敗北から4年間、相も変わらず強気の姿勢を貫くトランプが再び大統領候補に名乗りをあげています。今も水面下では、政治家たちの淀んだ駆け引きが行われているのでしょうか。

本作以降、沈黙を貫くマイケル・ムーア監督に再び登場を願い、さまざまな問題を追及し、今度こそはクリーンな社会が実現されることを望みます。
これは日本にも言えることですね。

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【大統領の失策により、分断されたアメリカを描く問題作が2024年10月4日より公開】

衝撃的だが決して絵空事には思えない!


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