古都

「たとえ外見に現れることがなかろうとも、成功のきらめきではなく、誠実な努力と義務への献…

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「たとえ外見に現れることがなかろうとも、成功のきらめきではなく、誠実な努力と義務への献身が人生の価値を決定する」ヘルムート・フォン・モルトケ

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  • 孫子の兵法

  • 現代語訳 四手井剛正『戦争史概論』

  • 抜粋集

    色々な本の中で特に気になったものを抜粋しています。

  • 本の紹介です。

  • 人物史

最近の記事

7 『孫子』における君主と将軍

1 はじめに 『孫子』において君主や将軍に何が求められているのかを考察する。 2 君主2.1 戦争の重要性を理解し、慎重に扱う70  夫れ戦勝攻取して其の功を修めざる者は凶なり。命[なづ]けて費留と曰う。故に明主はこれを慮り、良将はこれを修め、利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず。主は怒りを以て師を興こすべからず。将は慍[いきどお]りを以て戦いを致すべからず。利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる。怒りは復た喜ぶべく、慍りは復た悦ぶべきも、

    • 6 『孫子』における軍隊の在り方

      1 はじめに 『孫子』において軍隊はどのように捉えられ、どうあるべきと考えられたのかについて考察する。 2 軍隊は簡単に崩壊する48 故に、兵には、走る者あり、弛む者あり、陥る者あり、崩るる者あり、乱るる者あり、北ぐる者あり。凡そ此の六者は天の災に非ず、将の過ちなり。  夫れ勢い均しきとき、一を以て十を撃つは曰ち走るなり。  卒の強くして吏の弱気は曰ち弛むなり。  吏の強くして卒の弱きは曰ち陥るなり。  大吏怒りて服せず、敵に遭えばうら[對心]みて自ら戦い、将は其の

      • 0 『孫子』を分解・再構成する

        1 はじめに孫子の13篇は各章によってその特性が異なり、通常は章ごと読むことが推奨される。 しかし、現代においてそのままで理解するにはわかりづらいのではないか。 現代の軍事学的視点から分解してみるとどうなるのか。 そのような視点から再構築を試みたい。 2 孫子を分解すると孫子を軍事学的視点から分解すると以下のようになるだろうか。 1 戦争観 2 戦争の分析・計画 3 戦争の遂行ー戦略次元 4 戦争の遂行ー作戦次元 5 戦争の遂行ー戦術次元 6 軍隊の在り方 7 君主と将軍

        • 5 『孫子』における戦争の遂行ー戦術次元

          1 はじめに『孫子』における戦術次元について考察する。 2 カオスとしての戦場の様相 孫子は彼我が相乱れて戦い運や偶然に左右されるカオスな存在として捉えた。 21 紛々紜々として闘い乱れて、見出すべからず。渾々沌々として形円くして、敗るべからず。 3 「地形」の重視ー徹底的な戦場分析 戦闘においても必勝の態勢を構築するため、孫子は地形を徹底的に分析し活用しようとする。 39 孫子曰わく、  凡そ軍を処き敵を相ること。  山を絶つには谷に依り、生を視て高きに処り、隆

        7 『孫子』における君主と将軍

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        • 孫子の兵法
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        • 現代語訳 四手井剛正『戦争史概論』
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        記事

          4 『孫子』における戦争の遂行ー作戦次元

          1 はじめに 『孫子』における作戦次元を考察する。 2 戦争の短期終結 戦争の経済的影響が大であることから、孫子は戦争の短期終結を追求するとともに、兵隊や糧食を遠征先の敵から取ることを求めた。 5 孫子曰わく、  凡そ用兵の法は、馳車千駟・革車千乗・帯甲十万、千里にして糧を饋るときは、則ち内外の費・賓客の用・膠漆の材・車甲の奉、日に千金を費やして、然る後に十万の師挙がる。  其の戦いを用なうや久しければ則ち兵を鈍らせ鋭を挫く。城を攻むれば則ち力屈き、久しく師を暴さば則ち

          4 『孫子』における戦争の遂行ー作戦次元

          3 『孫子』における戦争の遂行ー戦略次元

          1 はじめに『孫子』における戦略次元を明らかにする。 2 戦争のエンドステイト 戦争のエンドステイトは戦って勝つことではなく、戦闘におけるこちらの被害を最小限にしつつ、戦争目的を達成することである。  9 孫子曰わく、  凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るはこれに次ぐ。  軍を全うするを上となし、軍を破るはこれに次ぐ。  旅を全うするを上となし、旅を破るはこれに次ぐ。  卒を全うするを上となし、卒を破るはこれに次ぐ。  伍を全うするを上となし、伍を

          3 『孫子』における戦争の遂行ー戦略次元

          2 『孫子』における戦争の分析と計画

          1 はじめに 『孫子』の中で戦争をどのように分析・計画しようとしていたのかを考察する。 2 戦争における事前の見積・計画の重視4 夫れ未だ戦わずして廟算して勝つ者は、算を得ること多ければなり。未だ戦わずして廟算して勝たざる者は、算を得ること少なければなり。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況や算なきに於いてをや。吾れ此れを以てこれを観るに、勝負見わる。 2 分析方法としての「道、天、地、将、法」1  孫子曰わく、  兵とは国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべ

          2 『孫子』における戦争の分析と計画

          1 『孫子』の戦争観

          1 はじめに『孫子』における戦争観を考察する。 2 戦争の重要性 国家戦略において戦争は極めて重要であり、実施の可否とその方法については明察が必要である。 1 孫子曰わく、 兵とは国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。 2 戦争の経済的影響 戦争は準備から遂行に及んで経済的影響が非常に大きい。 5 孫子曰わく、  凡そ用兵の法は、馳車千駟・革車千乗・帯甲十万、千里にして糧を饋るときは、則ち内外の費・賓客の用・膠漆の材・車甲の奉、日に千金を費

          1 『孫子』の戦争観

          デレク・ユアン『真説 孫子』メモ

          1 西洋において孫子の理解を妨げる2つの要因1 孫子の研究が翻訳レベルの段階にしかないこと 2 翻訳そのものの稚拙さ 2 西洋の孫子研究に変革をもたらすための条件1 『孫子』を孫子の思想の体系や目的を正確に反映した戦略的な観点から見る 2 孫子の思想の源泉を辿るような詳細な歴史分析 3 『孫子』のタオイズムの土台とその関連性 4 西洋式の言葉でわかりやすく伝える 3 本書がもたらす『孫子』研究の発展1 中国の戦略思想を理解するための全般的思考の理論的枠組み   水平・垂直

          デレク・ユアン『真説 孫子』メモ

          日本の戦略を考える上で参考となる歴史はあるか

          1 はじめに 日本周辺の戦略環境が悪化する中で、日本が取るべき戦略を考える上で、参考となる歴史や戦史はあるのだろうか。それを考察するためには、まず日本の現在のステータスを明らかにする必要がある。 2 日本のステータス1 軍事力的には中堅国家~大国であること。 2 戦略次元においても作戦次元においても防勢であること 3 海洋国家であること 4 複数の優勢な大国が周辺におり、かつ関係が悪化しつつあること 5 短期的な解決が困難であり、長期的な対応が求められること 3 参考にな

          日本の戦略を考える上で参考となる歴史はあるか

          『孫子』とはどのような本か。

          1 はじめに 現代において孫子はリーダーシップや戦略、組織運営といった視点から読まれる傾向が多いように思えるが、そもそも『孫子』はどのような前提条件の元で書かれた何の本なのだろうか。 2 国家対国家の正規戦を想定 まず『孫子』には戦争に関する深い含蓄が幾所にもかかれているが、本質的には戦争に勝つための方法を描いたハウツー本だといえる。そうであるならば、孫子が想定した戦争とはいかなるものか。  まず、孫子では基本的に国家対国家の正規戦が想定され、相手は領土や城があり、また軍

          『孫子』とはどのような本か。

          世界戦争史西洋古代篇Ⅰ 目 次

          総 論第1篇 エジプト第1章 地形と民族 第2章 古王国時代の戦争  第1節 メネス王の建国  第2節 各王朝の盛衰  第3節 当時代の戦争観 第3章 中王国時代の戦争  第1節 ヒクソス以前  第2節 ヒクソス戦争  第3節 当時代の戦争観 第4章 新王国時代の戦争  第1節 第18王朝時代  第2節 第19王朝の時代  第3節 第20王朝-第24王朝時代  第4節 第25王朝時代  第5節 第26王朝時代  第6節 エジプトの滅亡 第5章 滅亡後のエジプト  第1節 ペル

          世界戦争史西洋古代篇Ⅰ 目 次

          四手井剛正『戦争史概論』 緒言

          緒 言 戦争の絶滅、永久の平和は世界人類が等しく仰望する美しい理想である。しかしながら歴史が物語る過去の事実には、有史以来いまだ真の平和はない。世界の歴史は戦争に次ぐ戦争であり、その間にある一見平和に見える時代においてすら列国の抗争は依然として休止することなく、その実情はむしろ次におこる戦争の準備とみるのが至当であると思われ、そのようにしてまた戦争は世界深化の動力であり、根幹である実作用を呈している。近代に至って、戦争の発生がますます減少している印象を与えるけれども、これは戦

          四手井剛正『戦争史概論』 緒言

          現代語訳 四手井剛正『戦争史概観』序、公刊にあたって、目次他

          序 戦争の様相は古来より幾多の変遷を経ているが、その本質上、平和的手段によって目的を達成することができないと思われる場合に、武力をもってその目的を達成しようとする行為であることに変わりはなく、また人間が共存共栄の理想に到達しない限り、永久に戦争は絶滅しないだろう。  戦争の惨禍は絶大であり、とくに総力戦的傾向を帯びつつある近代戦にあっては、その勝敗が国家の興亡をもたらすことに考えが及ぶならば、みだりに兵を動かすことができず、また万が一開戦を決意することがやむを得ない場合は、平

          現代語訳 四手井剛正『戦争史概観』序、公刊にあたって、目次他

          【メモ】 高坂正堯著「国際政治」

          高坂正堯著『国際政治』に関するメモ 高坂正堯(1934~1996)  「現実主義」という視座「国際状況における混乱状況に直面した場合、人びとの態度は二つにわかれる。  その一つは、こうした混乱状況を直接になおそうとするものである。   …しかし、国際社会の分権的性格がそういう解決法を不可能にしているのである。  …したがって、可能であるのはこの混乱状態を間接に直すことだけである。  …それは対立の原因そのものを除去しようとすることを断念することから始まる。  …現在の国家

          【メモ】 高坂正堯著「国際政治」

          【本】前原透監修、片岡徹也編集『戦略思想家事典』

          前原透監修、片岡徹也編集『戦略思想家事典』の紹介です。 1 本書について前原透監修、片岡徹也編集『戦略思想家事典』(2003)芙蓉書房出版 監修:前原透(1925~2014) 鹿児島県出身、陸上自衛隊勤務、陸軍航空士官学校(58期)卒、陸上自衛隊指揮幕僚課程(5期)、幹部学校戦史教官、防衛研究所戦史部所員等を経て1978年退職(陸将補)。退官後も防衛庁教官、防衛研究所所員、調査員として戦史・軍事史研究、1993年退職。著書「第二次世界大戦通史」、「日本の戦争」。部内研究資

          【本】前原透監修、片岡徹也編集『戦略思想家事典』