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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2022年1月の記事一覧

トルコ大統領のユニークなインフレ対策

トルコのエルドアン大統領が統計局のトップを解任した。インフレ率の公表値が高過ぎると不満らしい。 Erdogan meanwhile reportedly criticised the statistics agency in private for publishing data that he felt overstated the scale of Turkey's economic malaise. これまでに中央銀行にも介入を繰り返している。 エルドアン大統領が

MMTは財政金融政策ではなく雇用政策の理論

現代貨幣理論(MMT)がわかりにくい/紛らわしいのは、その本質が労使の勢力均衡と「インフレなき完全雇用」を実現する雇用政策の理論であるにもかかわらず、財政金融政策の理論のように見せかけていることが一因ではないかと思われる。 MMTでは、企業は労働者を安く雇いたいので、売り手市場にならないように常に失業者のプールが存在する状態を保とうとするとされる(→恒常的なデフレギャップの存在を含意)。 しかし、失業は本人にとっても経済社会にとっても損失なので、公的セクターが社会的に有益

国債の日銀引き受け

岸田総理大臣が日本銀行の国債の直接引き受けを政府の財源調達手段とすることは考えていないと述べた。 ご指摘のような意見は、通貨発行を行う日本銀行が国債を直接買い取るというようなことになるわけでありますから、政府が財源を調達し歳出に充てることであり、これはまさに財政ファイナンスそのものということになってしまうのではないかと理解をいたします。 日本銀行による引き受けを前提とし、野放図に国債を発行するような財政運営を行えば、中長期的な財政の持続可能性、この信認が失われます。国の信頼

信用創造と言うより「信用貨幣の創造」

「マネタリーベース(現金)を裏打ちとしない信用創造」とは何のことなのか意味不明である。講師の片方も素人に毛の生えた程度であり、与党議員がこのような低レベルな議論をしていることには呆れてしまう。 ひとことで言うと、両講師が「伝統的な経済学はいまだ、信用創造の意味が分かっていない」という指摘をされ、全体の議論が、マネタリーベース(現金)を裏打ちとしない信用創造を続けるべきだいう基調で進み、そこに、参加議員のうち大蔵省の理財局長を経験された元閣僚が「実際に、国債が市場でさばけなか

クルーグマンは又貸し説?

クルーグマンが現行の通貨制度の仕組みを理解していないことがわかるコラムを書いていた(本題は通貨発行益だが、それについてはさておく)。 Since the 2008 financial crisis, however, banks have been voluntarily holding vast excess reserves, apparently because they don’t see enough good lending opportunities — an

反緊縮漫画家の誤解

反緊縮の信者ビジネスは儲かるのかも知らないが、この漫画家はいい加減過ぎる。 金融緩和の説明の部分を取り上げる。 国が月サン銀行の利子を下げたい場合 金利は自由化されているので、国(政府)は銀行の貸出金利には直接的に関与しない。金利操作は中央銀行の役割である。 まず日本政府が大量に国債を発行する 国債の売買を用いてインターバンク市場の金利を引き下げるなら、中央銀行が流通市場で既発の国債を買えばよく、政府が事前に国債を大量発行する必要はない。国債増発(財政赤字)拡大は需

市中銀行の通貨発行

40年前から政経倫社の教科書に書いていたのかどうかは知らないが、反緊縮派やMMT信者が「当り前の事をさも大発見の様に喧伝」するのは事実である。なので、単なる言葉遊び(あるいは明明白白な嘘)であることがわかる金融関係者には全く相手にされていない。反緊縮派やMMT信者の大半は「定説は間違っていた→自分は真実を知った」と優越感を持ちたがる意識が高い素人である。 ただし、市中銀行の通貨発行は「又貸し」ではない。米山議員よりも信頼できそうなDeutsche Bundesbankの解説

MMT信者の典型的反応

MMT信者の思考パターンがよくわかるので取り上げる。まずは二つの記事を読み比べてもらいたい。 (追加👇) 信者の特徴は、具体的な事例には言及せず、ひたすらMMTの教義を繰り返すことである。当方はMMTの根幹が事実に反する証拠として米日の財務省の行動と国庫金の推移を示したのだから、その解釈は間違いで実はMMTと整合的だと論証すればよいのだが、それができないのが信者である。 これ👇でクリティカルヒットのつもりらしいが的外れで反駁になっていない。 これは「政府の支出は中央銀

MMTの明明白白な嘘

MMTが凄いのは、理論の根幹が明明白白な嘘なのだが、それを「嘘も繰り返せば定説になる」と強行突破している点にある。 その嘘とは、政府の支出は中央銀行の通貨発行(newly-created money)によって賄われるので事前の財源調達は不要、徴税と借入は財源調達ではなく市中から通貨を回収する手段、という常識とは正反対のものである。政府の支出は中央銀行の対政府信用供与(政府の中央銀行からの直接借入)とワンセットで、国庫に入る納税金や国債の代金は自動的に借入の返済に充てられる。

反緊縮派の錯覚「政府支出と名目GDPの相関と因果」を検証

またパクリ屋のシェイブテイルとその仲間たちが元銀行アナリストのD.アトキンソンに絡んでいるので、今回はアメリカの1960~2020年の統計を用いてmythbustingする。 名目GDPと政府支出の1年前、2年前、5年前、10年前と比較した伸び率(年平均)を散布図に示す。 1年前比 (👇世界金融危機の2009年とコロナ禍の2020年を除く) 2年前比(2020/2018, 2018/2016, …) (👇世界金融危機の2009年とコロナ禍の2020年を除く) 5年

ネットde真実の国会議員

現職と元職の衆議院議員がネット論客(その同類を含む)から金融経済を学んでいるのは困ったことである。 「日本経済が成長してこなかった」は事実ではない。にもかかわらず成長が感じられないのは、①人口減少と高齢化(→国内投資の減少)、②大企業のグローバル経営の深化(→投資の国外流出)、③大企業の株主重視経営への転換(→投資の国外流出&賃金抑制)が主な理由である。これらは財政支出を増やしても解決できない。 議員に必要なのが信用できる人を見分ける目利きの能力だが、ネット論客の素人と本

スウェーデン国立銀行賞受賞者17人が署名したオープンレターの解釈

中野剛志とD.アトキンソンの解釈が割れているので読み比べてもらいたい。「積極財政」とは借入(国債発行)を主財源として財政支出を拡大すること。 アトキンソンは中野を夏野と間違えているらしい。 👆MMTの嘘については既に書いたが、後日改めて記事にする予定。 「デタラメな相関」「財政の成長率と経済成長率の相関が極めて強い」については👇 「財務省の矢野さんを揶揄」については👇で検証済み。 矢野次官の財政破綻のロジックも正しくないので念の為。

国債発行は通貨発行ではない

これも反緊縮派が作り出したalternative factであって事実ではない。 国の財源調達手段には①徴税、②借入(主として国債発行)、③通貨発行(中央銀行からの直接借入を含む)の三つがあるが、近現代では①②がメインで③はほとんど行われていない。そのため、②と③を混同させてミスリードしようとする言説が出てくるわけだが、額面が100円の割引国債を発行しても(通常は)100円未満の通貨しか調達できないことからも、借入と通貨発行が別物であることは明白である。 第一次世界大戦時