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同じ町で助け合っていくことの大切さを教えてくれたおばちゃんとの出会い

東京の大学を卒業し、25歳で結婚した私。
翌年には子宝にも恵まれ、結婚生活と子育ての新生活が始まった。

出産ギリギリまで働いていた私は、プレママ期にママ友を作ることもその時間もチャンスもなかった。育児書を読めば大丈夫だろうと母親学級すらすっぽかしたと記憶している。

さらに初産で里帰り出産。おまけに長女は肺気胸で生まれてきたためNICUに入院。
私の入院生活は産科ではなく、帝王切開待ちの妊婦さんが一時待機する病室(一晩中うめき声を聞く部屋)や婦人科の病室(産後の傷でのろのろと歩く私を労ってくれる中高年女性たちがいる部屋)で過ごすこととなった。

そういった経緯から自宅周辺にもふるさとにもママ友はおらず、私はほぼワンオペで育児をすることとなった。

初めての子育ては楽しかった。1人でも何の問題もなかったし、長女との時間は幸せでいっぱい。何よりも1年で復職することが決まっていたし、特にママ友の必要性も感じていなかった。

ただ、話し相手のいない子育ては少し孤独だった。
公園で会うママさんとそれぞれの成長具合を軽く話す程度の会話はあったが、一期一会である。

そんな時、向こう12年お付き合いすることになる女性と知り合う。
それは、隣の家の奥さんだった。

年は私の母と同じくらいか。60手前位のやさしい雰囲気の可愛いらしいおばちゃん。我が家はアパート暮らしだったが、おばちゃんは結婚してからずっとここに住んでいるのだそう。
お姑さんの面倒を見ながら、縁側と緑でいっぱいの庭がある一軒家で、丁寧な暮らしを楽しんでいるような素敵な人だった。

私たちの家は小さな公園の真横にあったので、私は毎日その公園で長女を遊ばせていた。おばちゃんは気付くといつも出てきてくれて、娘と遊んだり、お互いの話をしたり…おばちゃんにはお子さんがいなかったので、孫のように可愛がってくれたし、動物園に一緒に行ったりもしていた。

そうして知り合って3年目、東日本大震災が起きた。

その時私はすでに復職し、まもなく次女の臨月を迎える頃だった。
震災時は会社にいて、自宅までは電車で45分。すぐに次女を迎えに行ける状態ではなかった。

幸い、夫がなんとか長女を保育園に迎えに行ったが、夫の実家には症状の重い透析患者の義母と義姉がいたため、夫はそちらの状況も気になっているようだった。

しかし、携帯電話は混雑でどこも繋がらない状況。義実家とも私とも連絡が取れず、困っていたところ自宅に固定電話のあるおばちゃんの家が助けてくれたそうだ。

自宅に上がらせてもらい、電話を貸してもらい、夫が齷齪している間は娘の面倒を見てくれていた。

そのおかげで、連絡が無事取れ私もなんとか帰宅することができた。
身重の体では、徒歩で帰ることも会社に残るのも不安でしかなかったので本当に助かった瞬間だった。
何より、非常事態時に信頼のおける人達と寄り添うその心強さ。

こうして思わぬ事態で、他人を頼り力を貸してもらうことのありがたみを知ることとなった。
もし知り合いがいなかったとしても、誰かは助けてくれただろうが、状況が状況なだけにどうなるかはわからない。私や義実家との連絡も時間も膨大にかかっただろう。

そんな中、迷わず声をかけ合える人がいること。と
特に子供が小さい場合、確実に信頼して助けてもらえる人がいること。

これがいかに我が身や我が子を守る大きな力となるか。

私は1年後には復職するからと地域の人間関係を疎かにしていたことを反省した。
割と若くして親になったこともあってか、あらゆる情報や知識は自ら得ていかなければ知らないことも多かったのだと思う。
(結婚も妊娠も出産も子育ても、遅いほどまわりに経験者がいて自然と情報が入ってきたりするものだが、私にはそれが一切なかった。)

その後、私たちは2駅離れたところに家を買い、おばちゃん家もお姑さんが亡くなったのをきっかけに少し離れた街に引っ越すことになった。

それでも、私たちの関係はおばちゃんがガンで亡くなるまで10年以上続き、気付けば一番近い親戚のおばちゃんのような存在になっていたと思う。

その経験から、私は新しい土地で積極的に地域の人と交流している。
次女の時はママ友や知り合いも積極的に作ったし、5歳でも10歳でも20歳でも、年上の人の話はたくさん聞いて勉強させてもらうようにしている。

そして、おばちゃんが私にしてくれたように、この街で困っている人がいればいつでも助けてあげられる人になりたいし、そうした地域に根差した暮らしを大切にするようになった。

おばちゃんとの出会いは今も何度でも振り返るし、おばちゃんから教えてもらった他人でも助け合って同じ町で生きていく大切さは一生忘れずにいると思う。

筆者:ミイ

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